恋する彼のアパルトマン

吉田美野

文字の大きさ
上 下
34 / 41
3.(リュカ視点)

13

しおりを挟む
 触れたのは本当に一瞬だったが、その瞬間、リュカは全身に電流が走ったかのような衝撃を覚えた。

 ジェイミーはすぐに離れてしまって、リュカの反応を窺うように顔を覗き込まれる。

 今起きた出来事が信じられないリュカはぽかんとジェイミーの顔を見つめた。反応のないリュカに、ジェイミーも段々と困った顔になってゆく。

「リュカ?」と呼び掛けられた瞬間、ハッとしたリュカは伸びあがってジェイミーの唇を奪っていた。

 不意打ちのキスに、ジェイミーの驚いた気配が伝わってくる。しかしすぐに彼もキスに応えてくれた。

 冷え切った唇をお互いに食み合って、鼻の頭をこすり合わせる。

 リュカの眼鏡がずれてクスクス笑うと、ジェイミーに取り上げられてしまった。唇を割って舌が入ってくる。

 咥内は熱く、とろけてしまいそうだ。
 こんなにも甘美なキスを、リュカは知らない。
 途中から、熱烈なキスを交わすふたりに気付いた周囲がはやし立てるが、リュカの耳には入ってこない。花火は十分ほど続き、その間ふたりは夢中でキスをしていた。

 花火が終わると、周りの人々もパラパラと帰ってゆく。額を合わせて「帰ろうか」とジェイミーが囁いた。





 奥手なリュカではあるが、過去には恋人がいたことはある。
 経験豊富とは言えないけれど、優しくて、どんなつまらない話にも辛抱強く付き合って、親身になってくれるリュカは案外モテた。もちろん、相手は女性だけれども。
 だから今、自分が男性ジェイミーにベッドに押し倒されている状況がちょっと不思議だ。同時に、すごくしっくりくるような気もする。
 ずいぶん前から、リュカはジェイミーとこうなることを望んでいたような気さえするのだ。

 リュカ、とジェイミーが熱っぽい声で囁いた。何度も呼ばれた名前なのに、何だかいつもとはまったくの別物のようだ。ものすごく特別で、大事なものにでもなった気分になる。
 熱心に口付けられ、リュカもそれに応えながらうっとりとしていたが、ふと思い出す。

「あ――……待って、みんなは?」

 彼の友人たちは、どこへ行ったのだろう。カウントダウンに出掛けた先ではぐれたきりだ。自分たちだけさっさと帰ってきてしまって――そもそも、リュカは熱に浮かされたような状態で、どうやってこの部屋に帰ってきたのかさえ曖昧だ――彼らはどうしただろう?

「大丈夫。勝手に帰ったさ」
 リュカの服に手を掛けたジェイミーは彼らの行方にさほど興味がなさそうだった。
 てっきりリーアムはジェイミーの部屋に泊まるのかと思っていたけれど、違うのだろうか。全員遠方から遊びに来ているのだろうし、あらかじめホテルの予約はしてあったのかもしれない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

目が覚めたら囲まれてました

るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。 燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。 そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。 チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。 不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で! 独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

隠れSubは大好きなDomに跪きたい

みー
BL
⚠️Dom/Subユニバース 一部オリジナル表現があります。 ハイランクDom×ハイランクSub

【BL】婚約破棄で『不能男』認定された公爵に憑依したから、やり返すことにした。~計画で元婚約者の相手を狙ったら溺愛された~

楠ノ木雫
BL
 俺が憑依したのは、容姿端麗で由緒正しい公爵家の当主だった。憑依する前日、婚約者に婚約破棄をされ『不能男認定』をされた、クズ公爵に。  これから俺がこの公爵として生きていくことになっしまったが、流石の俺も『不能男』にはキレたため、元婚約者に仕返しをする事を決意する。  計画のために、元婚約者の今の婚約者、第二皇子を狙うが……  ※以前作ったものを改稿しBL版にリメイクしました。  ※他のサイトにも投稿しています。

目が覚めたら、カノジョの兄に迫られていた件

水野七緒
BL
ワケあってクラスメイトの女子と交際中の青野 行春(あおの ゆきはる)。そんな彼が、ある日あわや貞操の危機に。彼を襲ったのは星井夏樹(ほしい なつき)──まさかの、交際中のカノジョの「お兄さん」。だが、どうも様子がおかしくて── ※「目が覚めたら、妹の彼氏とつきあうことになっていた件」の続編(サイドストーリー)です。 ※前作を読まなくてもわかるように執筆するつもりですが、前作も読んでいただけると有り難いです。 ※エンドは1種類の予定ですが、2種類になるかもしれません。

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

俺にとってはあなたが運命でした

ハル
BL
第2次性が浸透し、αを引き付ける発情期があるΩへの差別が医療の発達により緩和され始めた社会 βの少し人付き合いが苦手で友人がいないだけの平凡な大学生、浅野瑞穂 彼は一人暮らしをしていたが、コンビニ生活を母に知られ実家に戻される。 その隣に引っ越してきたαΩ夫夫、嵯峨彰彦と菜桜、αの子供、理人と香菜と出会い、彼らと交流を深める。 それと同時に、彼ら家族が頼りにする彰彦の幼馴染で同僚である遠月晴哉とも親睦を深め、やがて2人は惹かれ合う。

処理中です...