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3.(リュカ視点)
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触れたのは本当に一瞬だったが、その瞬間、リュカは全身に電流が走ったかのような衝撃を覚えた。
ジェイミーはすぐに離れてしまって、リュカの反応を窺うように顔を覗き込まれる。
今起きた出来事が信じられないリュカはぽかんとジェイミーの顔を見つめた。反応のないリュカに、ジェイミーも段々と困った顔になってゆく。
「リュカ?」と呼び掛けられた瞬間、ハッとしたリュカは伸びあがってジェイミーの唇を奪っていた。
不意打ちのキスに、ジェイミーの驚いた気配が伝わってくる。しかしすぐに彼もキスに応えてくれた。
冷え切った唇をお互いに食み合って、鼻の頭をこすり合わせる。
リュカの眼鏡がずれてクスクス笑うと、ジェイミーに取り上げられてしまった。唇を割って舌が入ってくる。
咥内は熱く、とろけてしまいそうだ。
こんなにも甘美なキスを、リュカは知らない。
途中から、熱烈なキスを交わすふたりに気付いた周囲がはやし立てるが、リュカの耳には入ってこない。花火は十分ほど続き、その間ふたりは夢中でキスをしていた。
花火が終わると、周りの人々もパラパラと帰ってゆく。額を合わせて「帰ろうか」とジェイミーが囁いた。
奥手なリュカではあるが、過去には恋人がいたことはある。
経験豊富とは言えないけれど、優しくて、どんなつまらない話にも辛抱強く付き合って、親身になってくれるリュカは案外モテた。もちろん、相手は女性だけれども。
だから今、自分が男性にベッドに押し倒されている状況がちょっと不思議だ。同時に、すごくしっくりくるような気もする。
ずいぶん前から、リュカはジェイミーとこうなることを望んでいたような気さえするのだ。
リュカ、とジェイミーが熱っぽい声で囁いた。何度も呼ばれた名前なのに、何だかいつもとはまったくの別物のようだ。ものすごく特別で、大事なものにでもなった気分になる。
熱心に口付けられ、リュカもそれに応えながらうっとりとしていたが、ふと思い出す。
「あ――……待って、みんなは?」
彼の友人たちは、どこへ行ったのだろう。カウントダウンに出掛けた先ではぐれたきりだ。自分たちだけさっさと帰ってきてしまって――そもそも、リュカは熱に浮かされたような状態で、どうやってこの部屋に帰ってきたのかさえ曖昧だ――彼らはどうしただろう?
「大丈夫。勝手に帰ったさ」
リュカの服に手を掛けたジェイミーは彼らの行方にさほど興味がなさそうだった。
てっきりリーアムはジェイミーの部屋に泊まるのかと思っていたけれど、違うのだろうか。全員遠方から遊びに来ているのだろうし、あらかじめホテルの予約はしてあったのかもしれない。
ジェイミーはすぐに離れてしまって、リュカの反応を窺うように顔を覗き込まれる。
今起きた出来事が信じられないリュカはぽかんとジェイミーの顔を見つめた。反応のないリュカに、ジェイミーも段々と困った顔になってゆく。
「リュカ?」と呼び掛けられた瞬間、ハッとしたリュカは伸びあがってジェイミーの唇を奪っていた。
不意打ちのキスに、ジェイミーの驚いた気配が伝わってくる。しかしすぐに彼もキスに応えてくれた。
冷え切った唇をお互いに食み合って、鼻の頭をこすり合わせる。
リュカの眼鏡がずれてクスクス笑うと、ジェイミーに取り上げられてしまった。唇を割って舌が入ってくる。
咥内は熱く、とろけてしまいそうだ。
こんなにも甘美なキスを、リュカは知らない。
途中から、熱烈なキスを交わすふたりに気付いた周囲がはやし立てるが、リュカの耳には入ってこない。花火は十分ほど続き、その間ふたりは夢中でキスをしていた。
花火が終わると、周りの人々もパラパラと帰ってゆく。額を合わせて「帰ろうか」とジェイミーが囁いた。
奥手なリュカではあるが、過去には恋人がいたことはある。
経験豊富とは言えないけれど、優しくて、どんなつまらない話にも辛抱強く付き合って、親身になってくれるリュカは案外モテた。もちろん、相手は女性だけれども。
だから今、自分が男性にベッドに押し倒されている状況がちょっと不思議だ。同時に、すごくしっくりくるような気もする。
ずいぶん前から、リュカはジェイミーとこうなることを望んでいたような気さえするのだ。
リュカ、とジェイミーが熱っぽい声で囁いた。何度も呼ばれた名前なのに、何だかいつもとはまったくの別物のようだ。ものすごく特別で、大事なものにでもなった気分になる。
熱心に口付けられ、リュカもそれに応えながらうっとりとしていたが、ふと思い出す。
「あ――……待って、みんなは?」
彼の友人たちは、どこへ行ったのだろう。カウントダウンに出掛けた先ではぐれたきりだ。自分たちだけさっさと帰ってきてしまって――そもそも、リュカは熱に浮かされたような状態で、どうやってこの部屋に帰ってきたのかさえ曖昧だ――彼らはどうしただろう?
「大丈夫。勝手に帰ったさ」
リュカの服に手を掛けたジェイミーは彼らの行方にさほど興味がなさそうだった。
てっきりリーアムはジェイミーの部屋に泊まるのかと思っていたけれど、違うのだろうか。全員遠方から遊びに来ているのだろうし、あらかじめホテルの予約はしてあったのかもしれない。
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