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3.(リュカ視点)
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しおりを挟むリュカが出迎えると、くすんだ金髪の青年は一瞬目を瞠り、それからすぐに柔和な笑みを浮かべる。
「やあ、きみがリュカだね? ジェイミーの友人のリーアムだよ。お会いできて光栄だ」
「はじめまして、リーアム。僕も、会えるのを楽しみにしていたよ」
ジェイミーの同窓生というからには年下なのだろうけれど、リーアムは柔らかな物腰の落ち着いた青年だ。身長はジェイミーと同じくらい高いけれど、その雰囲気のせいか、威圧感は皆無だ。
「ジェイミーは?」
「今、お茶の用意をしてくれていて……」
お茶は蒸らしが重要だと聞くし、代わりにリュカが出迎えたわけだが、リーアムは何やら「へえ、ふうん? あいつがお茶を?」とぶつぶつ言いながらにやりと笑うので、今抱いたばかりの〝落ち着いた青年〟という印象が早くも揺らいだ。
「寒かったでしょう。どうぞ中に――」
そう言いかけたリュカは、リーアムの後ろにもうひとりいることに気が付いた。
「迷子のお嬢さんを連れてきたんだ」
「え?」
黒のガウンコートに、真っ赤なマフラーを巻いた若い女性は、金に近い明るいブラウンの髪をしているけれど、一目で姉妹とわかるほど、セラとよく似た顔をしていた。つまりとても可愛らしい顔をしているのだけれども、不機嫌を隠しもせず、つんとそっぽを向いている。この場にいることが不服で仕方がない、といった様子だ。
「ええ?」
戸惑うリュカをよそに「お邪魔しまーす。いやあ、ジェイミーの淹れてくれるお茶、楽しみだなあ」と、リーアムは迷いのない足取りで廊下を進んでいく。残された不機嫌な彼女を一体どうしようかと思ったが、彼女はつんとした表情のままリーアムに続いて部屋に入っていく。すれ違いざま「お邪魔してすみません」とぼそりと聞こえた。きっと、悪い子じゃないんだろう。
「リーアム! ……と、ミア? 一体どうしたんだい?」
ジェイミーの戸惑いはリュカ以上だった。戸惑い以上に、困っているように見えた。セラについてもやや迷惑そうなそぶりはあったものの、ミアのそれとはまたすこし違うようだ。
「このあたりで迷子になっていたから保護したんだよ」とリーアムは平然と言った。
「そんなわけないだろう」とジェイミーは声を潜めてリーアムに詰め寄るがリーアムは飄々としている。
「おや? 先客がいるね? 久しぶりだね、セラ」
「リーアムお兄さま! あら、お姉さまもいらっしゃったの?」
やはりふたりは姉妹だったらしい。ミアと呼ばれた新たな客人は、ちらとセラを一瞥しただけで、やはりつんとそっぽを向いてしまった。
この空気、どうしたらいいんだろう?
「ねえジェイミー。きみが僕たちのために紅茶を淹れてくれてるって聞いたんだけど?」
リーアムが取りなすように言った。
「あ、ああ……」
「あ、アップルパイもありますよ! いかがですか?」とリュカはリーアムの助け舟に乗っかることにした。
「わあ、それは是非頂きたいな」
「もちろんです。すぐに用意しますね。……ほらっ、ジェイミー」
「ああ、うん」
リュカはジェイミーを連れて、ひとまずキッチンに引っ込むことにした。
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