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47 恋の奴隷 再び

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「では以上で本日の入札を終わります。落札された会社のかたは、施設課で設計図書を受け取ってお帰り下さい。お疲れさまでした」

 入札の監視係が宣言し、参加者が三々五々に入札会場を去って行ってもなお、わたしは席から立ちあがれずにぼーっとして座っていました。

「あの、終わりましたよ」

 最後の一人になって係の方から声を掛けられてやっと我に返りました。

 大会議室から施設課に行く廊下を歩きながら、改めて今日の結果を反芻して、今さらながらに膝がガクガク震えて来るのを感じました。工事三件、総額七億八千万円の仕事を落札したのです。

 ヨドガワ主任が仕事を嗅ぎつけ役所と作り上げ、恐らくは一緒に指名業者を選び、その業者たちと話をつけてくれて、入札書のチェックもしてくれて、わたしがしたことと言えば金額の確認と入れ札の金額を配達し、最後の入札をしただけで、誰でもできるようなお使いレベルの仕事ではありましたが、いざ終わってみると震えが止まらないほど、緊張していたのでした。

「カナリホームズです」

 カウンターで名乗り、たくさんの設計図書や図面を受け取り、用意した紙袋にそれらを仕舞っていると奥のデスクにいる課長に気づきました。

 黙礼すると彼も片手をあげて応じてくれました。

 それでやっと「終わった」と実感しました。

 会社に帰って主任に復命しました。

「ご苦労さん。その設計図書工務部に置いてきて。ついでに担当のスケジュール聞いてこい。それを施設課のサカイさんに電話してすり合わせて引き合わせて、最後に総務に報告する。それで営業の仕事は終わりだ。

 今日、会社終わったら、ラーメン行くぞ」

 そう言ってヨドガワ主任はニンマリとしました。残念な顔などと失礼なことを言ってしまいましたが、彼の笑顔は会う人みんなを幸せにしてくれるような、そんな屈託ないものでした。

 自分のデスクに戻ると緊張が解けドッと疲れが押し寄せました。

 目尻に部長の視線を感じましたが、気にもしませんでした。支社長がオフィスに降りて来たのも知りませんでしたし。支社長と連れ立って部長が営業のシマから出て行ったのもまったく気にしてませんでした。

 只々、終業時刻が来るまでの間、机でボーっと意識を飛ばしていました。


 

 そこは屋台のラーメン屋でした。

 ヨドガワ主任に促されて赤い小汚い暖簾をめくると裸電球の下で大きな鍋がグツグツ煮えていました。

「オレ、しょうゆとギョーザとおでん。お前何する?」

「じゃあ、チャーシューと、おでんも」

「それとビールね」

 注文を済ませ、屋台の傍のやはり裸電球の灯るテーブルに移りました。主任がビール瓶とグラスを二つ持ってきてくれ、わたしがビンを取ろうとすると「いいから」と言われました。

「ハイ、グラス持って」

 男性社員にお酌をしてもらうなんて、社会人になってから初めてでした。

「ありがとうございます」

「じゃ、無事落札を祝して乾杯といくか」

 ゴクゴクと、一気にグラスを空けました。久しぶりに美味いビールを飲みました。

「おお、いい飲みっぷりだなあ、もういっちょ行くか」

 街の灯り。通りを行く人々の靴音。時折通り過ぎる車の起こす風。それに誘われるように吹いて来る夜風。遠いクラクション。屋台にぶら下がったラジオから流れて来るお菓子のコマーシャル。

 そして目の前にはほのかな思いを寄せる年上の男・・・。

 そう言えば就職してからじっくり季節を感じることもなかったなあとあらためて思いました。しつこい残暑はいつの間にか通り過ぎていて、街は少しづつ秋の装いを纏い始めていました。

 軽い酔いはすぐに回って来て、またあのヨドガワ主任と結婚、という妄想がムラムラ起きてきて困りました。

 はっと気づくと目の前で主任がほっこりと笑っていました。

「あ・・・、すいません」

「何が? なんか、浸ってるようだったから黙って見てた。おもしろいヤツだな、お前って・・・」

 どのくらいボーっとしていたかわかりませんが、その無防備な状態をずっと見られていたかと思うと、急にカァーッと恥ずかしさが込み上げてきてまたまた困りました。

「もう酔ったのか。顔、真っ赤だぞ」

「え、そんな、・・・やあん・・・」

「・・・なんかお前、女の子みたいだな・・・」

 ハイ! しょうゆとチャーシューお待ち・・・。

 オヤジさんがいいタイミングでラーメンの丼を持ってきてくれたので助かりました。ハフハフ言いながら顔を伏せて麺を啜っている間は喋らずに済みましたし、顔を見られずに済みましたから。

 どうしよう・・・。

 もう完全にヨドガワ主任に本気になっている自分がいたのです。胸が熱くて鼓動が激しく身体を揺さぶっていました。口を開けばとんでもないことを口走ってしまいそうでした。


 

 ヨドガワ主任、あなたが好きです。・・・と。


 

 わたしは完全に自分に自信を失っていたのです。思いが届くことはないと。そう思っていました。受け入れられることはないだろうと、信じ込んでいたのです。だから、それ以上その場にいることが苦しかったのです。苦しすぎました・・・。

「おかしいな、なんかちょっと、調子が悪いんで・・・」

「なんだ、マズかったのか、ラーメン・・・」

 屋台からオヤジさんが怪訝な顔で首を出して睨んでいました。

「そうじゃないんです。入札が終わって、ホッとして、・・・たぶん疲れたんだと思います」

 バッグを取って立ち上がりました。

「ここはいいよ。オレが誘ったんだから」

「・・・すみません。せっかく誘ってくれたのに。ごちそうさまでした。美味しかったです。帰って休みます」

 そういって立ち去りかけた時、ハヤカワ! と呼び止められました。

「どうしても、これだけ、言いたかった。おれ・・・」

 振り返って見つめた彼の瞳がキラキラしすぎていました。その言葉の続きを待っていたのですが、それは何故か、語られませんでした。

「・・・今日は、ごくろーさん。これからも頼りにしてるからな」

 わたしは一礼し、小走りに車に駆け込み、エンジンをかけました。

 運転しながら、涙がボロボロ溢れてきてどうしようもありませんでした。

 安全運転したつもりでしたが、やはりどこかおかしかったです。信号無視はありませんでしたが、何度も込み上げてきてその度にボーっとしてしまい、信号が青になってもそのままだったので二三度後ろからクラクションを浴びてしまいました。お巡りさんに見つからずに済んでたすかりました。

 アパートの駐車場に無事に駐め、今日はこのほっこりした思いを抱いて寝ようと階段を登ろうとしたら後ろから呼び止められました。

「ヨドガワとのデートは楽しかったかよ?」


 

 部長の車に乗る前に、スカートを捲られ、ショーツの中に10センチぐらいの細長い棒を入れられました。ブルブル震える、オモチャです。それが剥き出しにされたおまめさんを直に刺激してたまりませんでした。

「あんああっ! ・・・んああん、こ、これなにああん・・・」

「ヨドガワとはヤッタのか」

 オモチャで刺激されながら運転している部長が尋問してくるのです。

 わたしは首を振り続けました。

「ヤッタのかヤッてないのか!」

「やってないああん、あ、あ、はあん・・・」

「嘘つけ、ヤッタんだろ。今夜は寝かさねえからな、朝まで責め続けてやる」

「そん、なあああん・・・」

 でも、ちょっと違和感が拭えませんでした。嫉妬なんかするタイプには見えなかったのです。待ち伏せしていたのか尾行していたのか知りませんが、気味が悪くなりました。同時に、ヨドガワ主任との甘い時間を穢されて傷ついてもいました。それなのに、短波放送が懐かしい曲を流しはじめ、あまりの皮肉さにまた、泣けてきてしまいました。


 

 悪い時は どうぞぶってね

 あなた好みの あなた好みの

 女になりたい


 

「いい歌だ。お前のための歌だな、ミオ」

 何を言っているんだ、と言いたかったです。身の程を知れよ、と。今でいうストーカーみたいなことをしてまで会いに来るなんて、ビョーキかと思いましたが、股間からの痛いほどの快感にどうしても勝てなくて、それどころではありませんでした。

 おまめさんを揺さぶる刺激が足腰の神経を麻痺させるのか、モーテル(そういう呼び方の郊外型のラブホテルがあったのです)の駐車場に着いても、部長に支えられないと歩けないほどでした。

 部屋に入るとすぐ全裸にされむしゃぶりつかれましたが、そこでオモチャも外されたので、腹をくくりました。

「いいよ。好きにさせてあげる。でもお風呂に入ってからにして。じゃなければ帰る。・・・きゃ!」

 その時、初めて部長から頬を張られました。

「生意気だぞお前。小娘のくせに。じゃあ、お前が洗え。タオルなんか使うなよ。全部手で洗え」

 いつになく強気の部長にちょっとびっくりしました。

 きっとわたしは健さん、じゃなくて主任のために、敵対する悪どい暴力団の幹部に取り入って油断させ、主任が幹部の命(タマ)を取りに来るのを援ける情婦なのです。そういう、ナリキリ、いまでいう「コスプレ」に酔い始めていました。アパートの前で部長の顔を見た途端に潜んでいた諦めの気持ちがさーっとよみがえり、例の、どうでもいいやという自暴自棄に陥っていたのです。

 ブヨブヨの裸にシャワーをかけ、湯舟の縁に座らせるとヤンベ先生を洗ってあげたのを思い出しました。ただひたすら目の前のブヨブヨは無視して、あの優秀な頭脳とお持物を持っていたヤンベ先生に思いを馳せ、身体を洗ってあげました。

 それで、いいことを思いつきました。

 そのお粗末なものを出来るだけ時間をかけて丁寧に洗い、あわよくば二三発出してやればもう満足して解放してくれるんじゃないか、と。

 さっそく実行に移しました。

 キスだけは絶対にイヤでしたが、ヤンベ先生にしてあげたように、自分に石鹸を塗りたくって身体で洗ってあげるとバカみたいに喜んだので笑えました。

「うおっ、トルコみてえだなおい・・・」

 ちなみに「トルコ」というのは今のソープランドのことです。ああいう、男性向けの女性のサービス付き特殊浴場のことを当時「トルコ風呂」といい、嬢のことを「トルコ嬢」と言いましたが、トルコから来た留学生の運動によって呼称をあらためるよう特殊浴場業界に対して日本政府が指導した結果、呼称が変えられました。1984年のことでした。

 へえ、トルコってこういうことするんだ・・・。

 ブヨブヨの身体も気持ち悪かったですが、もっと気持ち悪かったのが、油断するとキスしようとしてくることでした。それだけは拒否しつつ、さっそく彼のお持物に手を添えてシゴキ始めました。

「出すときは出すって言ってよ」

 すでに芯は通っていましたが、ヌルヌルのわたしの手の刺激が堪らなかったらしく、それはムさらにクムクと大きくなってゆきました。でも、それまでに経験したむすこさんたちに比べると、最大に背伸びしても中学生くらいの印象ではありましたが。

「おお、ああ、・・・のおああ、」

 ブタが悶えてる・・・。キモ・・・。

 ゲテモノ好きのような興味でさらに扱いてゆくと、それはあっけなく空しく一発目を迸らせました。

「・・・ああ。で、出るぅっ・・・」

 身体をサッと躱してむすこさんの方向を逸らせ、浴びることは免れました。しかし、わたしにも油断がありました。

 彼はガックリと身体を折り、バスルームの床に膝付いているわたしの上に被さってくると、わたしの頭を掴んでそこを舐めさせようとしました。

「ちょ、なにす、・・・ちょっとっ! ふざけ、・・・んんぐあうっ!」

「洗ったからいいだろ。舐めろよ。舐めてキレイにしろ」

 歯を食いしばっていると鼻を摘ままれ、だしぬけだったので息が続ませんでした。こんなカスのブタみたいな男にいいようにされて、悲しかったです。やっぱり自分はこういうのがお似合いなのだな。結婚とかそういうのは、無理なんだな・・・と。

「お前は最近ちょっと生意気になって来たよな。そもそもオレが庇ってやったおかげでここに居られるの忘れてもらっちゃ困るぞ。お前だってこういうの、キライじゃないんだろ?イジめてやると悦ぶもんなあ。自分の立場が分かったかよ。・・・わかったのか!」

 びしょびしょの身体のままベッドに連れていかれ、仰向けにされてお尻の下に枕や掛布団を詰め込まれると、股間が全開にされ天井を向いた、とても恥ずかしい姿にされてしまいました。

「いい格好だな。これから何されるかわかるか」

 わたしは黙っていました。

「『感じるだけ感じさせられてイカせてもらえない刑』ってのをやってやる。うれしいか」

 さっきショーツの中に入れられた白くて細長いものが皮を剥いたおまめさんの上にテープで張られ、乳首にも張られました。そのスイッチがひとつずつ入れられてゆくと、堪らない刺激が全身を走りました。

「んああっ、ああーんん、なに、これえーああああん・・・」

 その上で目隠しされました。

 初めてでした。視覚を奪われると、イヤでも聞こえるもの触られることへの感覚が研ぎ澄まされて、何をされるんだろうという想像力が増してゆきます。それだけで昂奮して息が荒くなってゆきました。

「はああううんっ・・・ダメっ、ダメこれええっ」

「それで、これがトドメな」

 この前使われた黒い張り子でしょう。そのモーターの音が響き、振動する部分が全開の内股をゆっくりと這いました。

「たまらんだろ。挿入れて欲しけりゃ、言えよ」

 股間に向かってじわじわ近づくと、引き返したりそこを素通りして反対側の内股に飛んだりして、焦らしにジラされました。

「ほーら。お前の観音さん、ジュクジュクになって来たぞおーっ。うぃひっひっひ・・・」

「はああっ、ああっ! あ、もう、もうっ! っあああっ・・・イヤ、いやあっ!」

 あまりに感じ過ぎて、イヤらし過ぎて・・・。もう口マネして揶揄う余裕さえなくなっていました。

「おおーっ、タレてる。タレてるぞっ。ケツの穴にタレてきましたっ。

 欲しいだろ、ここ。んん? 素直になれよ、ミオ・・・」

 部長の太い指がワレメを広げるようにしてそこをイジりました。おまめさんを刺激しているオモチャをグイグイ押すとおまめさんがひしゃげ、刺激が変わって別の快感が襲ってきました。

「はああーんっ! ・・・もう、もう、欲しい、挿入れてっ、も、我慢できないああーんん・・・」

「挿入れて、じゃねえだろ、挿入れてください、だろ?」

「挿入れて、下さいっ、お願い、お願いーっ!」

 そこにアレが当てられ、ワレメの間を前後にヌルヌル滑っていました。それがおまめさんのスティックに当たるたびにゴリゴリという音がして振動が大きくなりました。

「はああーん、早く、早く挿入れてお願いしますああああああんっ!」

 ぐにゅるん・・・。

 それがメリメリ這入ってくると、期待感が高まり、さらに萌えました。根元まで来ると震える部分がおまめさんを刺激して一気に高まってゆきました。

「ああっ! 気持ちいい、きもちいいいいっ! ああん、気持ちいいよおおんんんんっ!」

 と・・・。

 ずるん、とそれがなくなり、大きな空虚感に襲われ、飢えました。

「はああーん、なんでェ、ズルいーんんっ!」

「そんな簡単にイカせるかよ。イカせてもらえない刑っつっただろうが。でも、オレの言うこと聞くならイカせてやらないでもないぞ」

「こんな、やああーんっ・・・」

「聞くか? 言うこと」

「なにぃ?、・・・ああんっ!」

 また張り子が挿入れられました。

「オレ、今度転勤になるんだとよ。さらに南の、西の方だ。単身だ。去年オヤジが死んだからな。もう遠慮しなくてよくなったんだろうな。エンコ入社だから、いつかは来るかと思ってたが、早かったな・・・。オレのあと、ヨドガワが営業部長になるんだとよ。仕事できないヤツは要らねえってさ・・・」

「・・・あああっ!」

 ディルドのうねりのスイッチが入れられ、それはうねりながら抜き差しされました。ヤンベ先生にハゲシくあちこち突かれたときのような快感に襲われ、全身が電気に犯され、昂奮が最高潮に達し、高みに登ってゆこうとすると、抜かれました。

「それでな、お前も異動になる。支社長も了解済みだ。俺と一緒に来い。いいだろ? これからは、毎日でもこうやってイカせてやる・・・どうだ。うれしいだろう」


 

 なんだ・・・。

 そういうことか・・・。


 

 激しい快楽の地獄の渦中でしたが、あっという間に快感が半分になり、頭がスーッとシラけていきました。一瞬で自分でも驚くほど冷静になっていました。

 もう、いいや・・・。

 このとき、会社を辞めようと決心しました。

 どんなに困っても、こんな最低のヤツと一緒になんか・・・、ありえませんでした。

 こんな最低のヤツと一緒にまたトバされる義理はもう、わたしにはありませんでした。

 苦労して入ったはずの会社でしたし、ヨドガワ主任との甘い未来も描くことができましたが、もう、限界でした。
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