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1974

24 Desperado

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 絶頂し過ぎて息を荒げているわたしに、マスターはキスをくれました。わたしは彼の首を捕まえてそれを貪りました。

「・・・満足したか」

 返事の代わりに手を伸ばして彼のに触れました。それは「半勃ち」くらいになっていました。彼を見上げながら、ゆっくりとそれを扱きました。

 欲しかったのです。どうしてもそれなしには、収まりがつかなかったのです。

「ちっ、しょーがねーな・・・」

 さっきまでのおちゃらけ風味は無くなっていました。彼にとって、それは必要なスパイスだったのかもしれませんが、わたしはもっと真面目にエロく抱かれたかったのです。彼とのお付き合いの中では雰囲気的に本気で彼を愛してはいけないような風が漂っていたのですが、ウソでもいいから、好きだよとかあいしてるよとか言われながら抱かれたかったのです。

 ベッドに促されましたが、ここでしてと言いました。甘く抱いて欲しかったのですが、立ってするほうが彼が萌えるかと思ったのです。そうまでしても、抱いて欲しかったのです。付き合い始めてまだ一週間も経っていませんでしたが、すでにもう、わたしは彼の虜(とりこ)になっていました。

 マスターはわたしよりだいぶ背が低かったと思います。脚も短かったです。

 椅子の背につかまり、お尻を突き出しました。マスターのために、少し脚を開いて腰の位置を下げました。ワシオ君としていたときから、心では向かい合ってしたかったのに、身体は後ろからの方が悦ぶのを感じていました。どうせ本気で好きになってはいけないのなら、せめてより気持ちよく、淫らになりたかったのです。

 すぐに腰を抱えられ、彼のが股間を何度も滑り、その度におまめさんがグイっ、グイっ、ぐちゅっ、ぐちゅっ、と刺激されて、たまりませんでした。

「あっ・・・そん、あっ!・・・、はうっ!・・・、はあんっ!・・・」

 それはまるでおまめさんへのムチみたいでした。そのまま挿入れてくれればいいだけなのに、なかなかそうしてくれず、ビンカンなそこばかり延々と責められ、それだけでも何度かぞわぞわが首の後ろに上って来て真っ白が来て膝ガクガクにされました。

「あ、・・・んんんんんうふうっ・・・いい、いいのォ、それいいんんん・・・」

「よ~し。なんとかカタくなってきたぞう。いっちょ、突っ込んでやるか。

 気持ちいか?」

「気持ちいいん・・・ああっ、いいん、いいの、たまんないああっ!」

 彼のが這入ってくるのには馴染みましたが、それが奥や上(後ろからされると下になるわけですが)の壁を突くと火花が散り電気が身体中を走り回り耳の奥がチリチリして何度も真っ白になります。

「はうああああっ! ・・・んんんんんんんんんっ・・・」

 一応その絶頂の間は待っていてくれるのですが、またすぐに入れたり出したりが始まります。

 しかもそれが憎たらしいくらいにゆっくり、なのです。中の壁のひだひだが一枚一枚めくりあげられて、その一枚ごとにジワビリするような感覚なのです。その上で奥や上を突かれるのですから、たまりませんでした。もどかしいのですが、そのもどかしさがまた、わたしを狂わせるのです。

「オレ、勃つのも遅いけど、イクのも遅いんだよな。遅漏ってんだけどさ。悪ぃな」

「もっと、もっと、ズンズンしてああっ!・・・そうでないとあああっ、・・・んぬああっ、く、くるあああ、ん、・・・もっと、・・・んんもっと突いてェああ、・・・んんた、たまんないいんんああっ!・・・たまんないいいいんんんんっ!・・・っく、はあ~ん・・・」

「しっかし、見れば見るほど、いいケツしてんなー、おい」

 パン!

 時々お尻を叩かれます。

「ああっ!・・・」

 そうするとあそこがキュッと締まっていい感じらしいのです。

「おお。いいねえ。ほれ。もひとつ。ほらまた・・・」

 パン! ピシャン!・・・

「ああっ!・・・ひああっ!・・・はあんっ・・・」

 そうやって何度もキュッキュしていると当然ながらより強くヒダひだの捲られる感覚が強くなり、やがて、イッてしまいます。

「あっ!・・・んんんんんっ・・・くああっ・・・はっ、はっ、はっ、はああんっ、・・・」

「おおっ、・・・お前本当に18か? よくもこれだけイキまくれるもんだな。そうとう仕込まれたな。大したもんだ・・・」

「・・・んああっ、また、またあああああああんんんんんんっ・・・っくふううんん・・・」


 

 そうやって結局一時間以上も、長い時は二時間近くも、体位や場所を変えて責められ続けるのです。その間に数えきれないほどイカされ、さすがにクタクタになります。

 終わるとマスターはベッドの上でタバコを燻らします。わたしは緩やかに上下する彼のお腹の上にうつ伏せになったまま、後を引くガクガク、ブルブルを楽しみながら、余韻に浸ります。一番安らかな、至福の時です。

「もういいか。さすがに重いわ。65ぐらいあるだろ」

「・・・ヒドイ!」

「でもだいたい当たってるだろ」

「・・・64だもん・・・」

「たいして違わねーじゃねーか・・・」

「筋肉は脂肪より重いの!」

 わたしは彼の上から降り、彼の肌に添います。

「ねえ、マスター・・・」

「んー・・・」

「マスターって、いくつですか」

「ジョン・レノンと同じ歳だよ」

 ワシオ君を思い出しました。

 彼の乳首を人差し指でクリクリして弄びます。

「ねえ・・・。どうしてヤマダさん、クミコさんと別れちゃったの」

「教えたろ。あいつに男ができたからだって・・・」

「だって彼女まだ愛してるって・・・。そう思ってたら、別れに繋がるようなこと、わざわざ言わないでしょ。ウワキしたとしても、マスターには黙ってるはずだよね。そこが、わかんないの・・・」

「知らなくていい。知らない方がいいことも世の中にはたくさんある」

「知りたいの」

「なんで」

「だって、だんだん・・・。だんだん、好きになってるから」

「誰を」

「ええっ! マスターに決まってるじゃん。他に誰がいるの。そこまで言われると、ひどいよ・・・」

 彼は無言になりヘッドボードに載せた灰皿でタバコをギュッと揉み消すと、紺色の缶を取りました。

「ありゃ・・・」

 向こうサイドに降り、ダイニングの向こうにある棚のストックを取りに行きました。ぷりぷりした裸のお尻がかわいく、萌えを感じました。

 ターンテーブルに乗っていたジェーンのレコードをジャケットに収め、代わりに別のを載せてベッドに戻ってきました。


 

 Desperado,

 Why don't you come to your senses? ・・・。


 

 この曲は当初日本でリリースされた時「ならず者」というタイトルで訳されましたが、詞の意味は、なにか上手く行かないことがあって社会からはみ出しそうになっている友達に訴えかける、元気を出せよと励ますような、そんな詞です。今でいえば引きこもりになってしまった友達に、そんな狭い部屋に閉じこもっていないで外に出て見ろよ、とでもいうような。そんな優しい感じの詞が若者の支持を得たのだと思います。

 その時のマスターは、自分は「Desperado」だと言いたかったのかもしれません。

 ベッドに戻って来た彼の肌は冷たくて気持ちよかったです。彼の手がわたしのお尻をゆっくりと撫でまわしていました。

「つまらん話だぞ。

 結婚してくれ、いやそれは無理だ。そういう押し問答が続いてた。せめて思い出を作りたい、どっか連れてって。オレはどこにも行きたくない。行きたいなら一人で行け。一人がイヤならテキトーに男でも見繕え。その辺にいるだろう物好きな男が。気にしないで行ってこい。そんなこと言ってたらしばらく来なかった。ひと月ぐらいして店に来て男ができたと言った。そうか。じゃあ、約束通り別れるか。それはイヤ。そういう面倒なことを言う。だって最初からの約束だろ? そしたらアホ、バカ、マヌケ、太鼓腹、ヘンタイ、短足、スケベ・・・。ありとあらゆる罵詈雑言を浴びせて来た。まあ、全部当てはまるからあんまり怒る気にもなれなかった。そしたら男とは別れる、ていうかあれはウソ。だからまた抱いてっていう。でも、一度そうなったらもう、オレがダメだった。勃たなくなった。何度かトライしたけど、ダメなものはダメなんだ。そうこうしているうちに、お前を連れて来た。そして今、お前とセックスしてる。そういうことだ。・・・な、つまらんだろ?」

 なんというか、ちょっと呆れました。

    でも、なぜか、なんとなく、ヤマダさんの気持ちがわかるような気もしました。いつもクールでカッコいいヤマダさんの、純な女の子の部分が垣間見れたと言うか・・・。

「・・・どうして。どうしてそうなっちゃうの」

「そんなの、アイツに訊いてくれ」

「でも、そんなの、おかしいよ」

「お前もおかしくないか」

「・・・なんで」

「じゃあ聞くが、お前と付き合うのやめてアイツと縁り戻してもいいのか」

 わたしは慌てて彼の乳首に舌を這わせ、彼のをギュッと握り締めていました。

「今夜は、もうダメだぞ。お前だって、明日学校だろ」


 

 土曜日。

 一応学業優先が建前なので一二年生の午前中の授業を終えてから午後の親善試合に臨みました。

 帝国体育大学の二軍チームのパワーは二軍とはいえケタ外れでした。

 それは当たり前でした。最初から胸を借りる以外の目的はありませんでした。なにしろ相手は二軍とはいえ、男子で、全員180センチ越えの長身ばかり。それに男子リーグのトップ、Aリーグの、毎年優勝争いしているチームの二軍です。それに対してこちらは一軍も二軍もない一枚看板で、女子で、中には160センチに満たない小兵もいて、それに万年女子リーグ最下位のFランクで負け越し続きの超弱小チームなのです。

 ワンサイドゲームになるのは当たりまえで、ゲームとして成立するかどうかも危ぶまれていました。それでもヤマダさんの絶妙なサーブで一点だけ辛うじてもぎ取り、女の意地を見せました。

「お忙しいのにありがとうございました。女子リーグ最弱チームのためにここまで相手してくださって本当に嬉しかったです。とても勉強になりました。今日この後親睦会を設けてます。楽しく飲みましょう」

 代表してヤマダさんが親善試合の締めの挨拶をすると、向こうのキャプテンが返辞をくれました。

「そんな謙遜しないでください。おれらも久々に女子大と親善試合できるってんで、今日はみんな楽しみにしてきました。今夜は一緒に楽しく盛り上がりましょう」

 三年生、180センチ越えの長身の爽やかさんがこれまた爽やかな笑顔で笑いました。

 結論を先に言えば、わたしはその晩、この身長180越えの爽やかさんと寝ました。彼の名前はナガノさんといいました。
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