道連れは可愛くて逞しい ~ミクとナツキの物語~

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11 Love Affair

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 すぐに夏樹の手が胸元に滑り込んできた。胸を揉みくちゃにしてくる。

「そんなにしたら痛いよ。もっと、優しくしなくちゃ」

 若すぎるから経験の無さはいかんともしがたい。必死になって自分を悦ばせようとしてくる若いオスの児戯を高みで見物するような、そんな余裕な態度になってしまう。夏樹のその気持ちだけで、その若い欲望丸出しの気持ちの方が、愛撫より萌えた。

 夏樹の手が美玖の浴衣と脚を割ってそこに伸びた。グイグイ、ガツガツ。そこを探り、穴を探している。濡れていないからどこが穴なのかわからないみたいだ。敢えて教えもしないし、導きもしない。きっとエロビデオか、マンガか、雑誌か小説か、よくわからないけれどもそういうので得た知識を総動員しているのだろう。

 もう、言葉は発しなかった。若いオスのするがままに任せた。

 きっとガマンしきれなくなって、まだ濡れてもいないそこにあてがって動かしてこすれて自滅するだろうと思っていたが、その通りになった。

「終わり? 満足できた?」

 暗がりで夏樹の顔を見上げたら、悔し涙を流していた。

 悔し涙の数だけ男は強くなる。誰かが言ってたのを思い出す。この子はいい男になる。絶対だ。そう、思った。

 でも、これで終わりではいくらなんでも可哀そうすぎるとも思った。


 

「今度はあたしの番だよ。文句、ないよね」

 身体の下で、今思いきり犯したはずの美玖がそんなことを言ったから我に帰った。

 ちゃんとできたのかどうか、美玖がまったく満足できていないらしいのはなんとなくわかっていた。しかし、その言葉でダメを押された気分になった。完敗どころではなく、犯したのではなくて犯されるはめになった。それは、奈美にイカされるのとは全く異次元の快感を纏っていた。

 まず、上になっていたのに、いつの間にか仰向けにされ、身動きが出来なくなっていた。美玖の舌が耳を捉えて離さず、そこからくるゾワゾワが身体中を痺れさせているせいだ。

「あ、ああ、・・・く、はあ・・」

 情けない声まで出る。そのくらい、気持ちいい・・・。

 美玖の舌が首筋を這いまわるとビクッと身体が跳ねた。

「うふふ。弱いんだね、ここ・・・」

 夏樹の弱点を発見した彼女はそこを執拗に責めて来る。チクショウ! なんでこんなに気持ちがいいんだ! すると今しがた出したばかりだというのにもう夏樹の分身が復活してきた。そこも気づかれた。

「元気いいね。さすがティーンエイジャー・・・。それに、立派だよ。すごく・・・」

 分身があの小さくて柔らかな手に捕らわれゆっくりとシゴかれる。さらに美玖の舌が首筋から乳首に移りそこをレロレロ、ちゅーっと吸われたらまた声が出た。

「はあああっ!・・・」

「うふふ、可愛い。女の子みたい・・・」

 美玖の手は絶妙過ぎた。奈美に鍛えられたから、夏樹のは多少の刺激には耐性がある。が、彼女の触り方は勢いに任せるのじゃなくて、ふんわりと緩急つけた、極上のものだった。裏を爪でさわさわコリコリしたり、亀頭の周りを指だけでなぞったり、亀頭全体を掌でぐりぐりされたりして、出したばかりだというのにすぐに臨界がきた。

「あっ、もう、出る、出るよ」

「いいよ。出しなよ」

 すると美玖は射精を促すように幹を掴んで上下する。ギュッと掴んでシゴくような勢いじゃなくて、根元から先へ促すような、ピアノの鍵盤をスケールするみたいに、滑らかにソフトに。その間も弱い首筋を舐められながらで、夏樹はあっというまに陥落した。

 奈美の手とは全く違う、極上の射精感。

 気づけばティッシュで処理されてた。

「満足した? あたしもう一回お風呂入って来る。夏樹も来る?」

 そんなことを言われて行かない男なんていない。

 すでにかけ湯をしてタオルで石鹸を泡立てようとしている美玖が椅子に座っていた。

「ここに座って」

 さっき背中を洗ってもらったのと同じに彼女に背中を向ける。温かい湯がかけられ、石鹸で直に身体を洗われる。適度にヌルヌルになったら、こんどは手が直接肌を滑った。その手は当然のように夏樹の前に、胸や腹を滑る。するとこれも当然だが背中に裸の美玖の胸が、あの豊満な胸が押し付けられた。

 たまらない・・・。

 さっき直に触れた美玖のおっぱい、その乳首が背中をころころ転がるのがわかる。抱きしめられると豊かな感触が背中から心の中に浸み込んでくる。包み込まれるような快感に溺れた。

 そしてやっぱり手はそこに、夏樹の分身を愛撫してくる。あまり泡立たないが、それだけに卑猥な印象がある。そこはたちまちに勃起し、熱を帯びた。

「気持ちいい?」

「・・・ズルいよ、ミクさん。こんなのされたら、オレ、また・・・」

「何度でも、好きなだけ出していいよ」

 そんなことを言ってまた首筋を舐めて来る。舐めるだけじゃなくて、強く吸われたりされると、また声が出てしまう。耳も。耳の穴の中にまで舌が入ってきてゾワゾワが最高潮になる。

「うっ、はあっ、・・・んあ・・・」

 背中を胸に、首筋を舌に、胸を指に、手のひらで亀頭を丸め込むように。こんな攻撃をされたら、もう二度も出していたけれど関係なかった。

「出る、また出るよ、ああっ、ミクさん、ミクさん!」

 熱い電気が再び身体を駆け巡り、もう量は少なかったが、何もない空間に勢いよく精液が飛び出した。

 夏樹と自分にかけ湯をして彼の手を引いた。そして湯に浸かった。

 彼はたまらずに抱きついて来た。そして当然のようにキスを求めて来た。それを美玖は人差し指で制した。

「この旅が終わったら、にしよう」

「どうして?」

「どうしても」

「オレ、ミクさんの中に入りたいよ。ヤリたい!」

「無理だと思う」

「だから、どうしてだよ」

「濡れないもの」

 と美玖は言った。

「あんたは可愛いの。とてもそんな気は起きない。可愛いから可愛がっちゃう。だけど、まだ、ね」

「そんなの、ないよ! あっ、」

 湯のなかでまた美玖の手が夏樹の分身を捉えた。


 

 いつしか夏樹のイビキが聞こえてきた。

 美玖自身欲情はなかったし、仮にあっても抑え込んだだろう。どうしようもないから彼の衝動は発散させた。でも、それ以上に進むことはどうしてもできなかった。夏樹を面倒見ているうちに、どうしようもなく大樹に会いたくなった。思いがつのりすぎてどうしようもなくなっていた。大樹への思いが強すぎて、その煩悶で深く眠れなかった。


 

 翌朝。

 前夜のことがあったせいか、おたがいにあまり言葉も交わさないまま宿を立ってまず不動産屋に行った。

 看板に名前のあった担当はいたが、なんとあの山荘は銀行の持ち物になっていた。

「抵当に入っていたようですね」とその中年の担当者の男は言った。

「興味おありですか。なら銀行の方へお話しておきますが」

「このまま買い手がつかない場合はどうなるでしょう」

 美玖の質問に、その担当は律儀に応えてくれた。

「銀行さんとしては現状のまま売れる方がいいでしょうけど、もし買い手がつかない場合は上物を取り壊して更地にすることもあるでしょうねえ。でも、あそこは便利がいい所じゃないし、他の土地と抱き合わせで開発することもないだろうし、どうなるかなあ・・・」

 町役場にも行った。

 そのころはまだ多くの自治体で第三者に住民票の閲覧を許していた。その町役場でも簡単に閲覧ができた。それに本来夏樹は第三者ではない。伯父の実の甥であり、母の実の息子だ。だが身分を証明するものが無いし、仮にあっても提示できないので、第三者に甘んじるしかない。窓口の女の人には怪訝な顔をされたが、写しを貰ってそそくさと役場を後にした。

「見せて」

 駐車場でCB750に凭れて待っていた美玖に写しを見せた。

「転出先は広島かあ・・・。遠いね。でもこれで二人一緒にそこに移ったのはわかったね。

 例えば、まず番号を調べて電話してみればどうかな。それなら中学生にも出来る。まず電話でコンタクトを取って、それからその後のことを考えなさい。いいね?」

 憮然としている夏樹を乗せて駅まで送った。

 バイクを降りた彼がヘルメットを取った。顔を見るのが辛かったが、敢えて真っすぐに、眼(まなこ)を見つめた。

「ここで一度ブレイクしよう。あんたはまだ中学生。このままお母さんを追うのは、無理がある。これをお父さんに見せるか、ナイショにするかは自分で考えなさい。冷たいようだけど、あたしがこれ以上関わるのはよくないと思う」

 この子は何と応えるだろうか。

 大人の男なら、「そうか、じゃあな。会えてよかった」

 そんな感じだろうか。

 まだ小学生なら、「えー、ヤダよー。どうして行っちゃうの」

 高校生なら、「・・・しょうがねえよな、アンタだっていろいろあるんだろうしさ。でもまた会おうよ。やっぱミクさんとエッチしたい。えへへ・・・」かな・・・。

 中学生の夏樹は何て言うだろうか。並の中学生よりはマセてて、ナイーヴで、ちょっとオレ様が入ってる。ような気がする。そして、芯が強そうだ。この子は絶対いい男になる。彼の瞳を見て、美玖は思った。

 そんな夏樹は、何と言うだろうか。

 夏樹に一枚のメモを示した。

「これ、あたしのケータイの番号。辛くてどうしようもなくなったら、かけておいで」

「・・・やだよ。・・・オレのこと置いてくのかよ。これで・・・、こんなんで終わりかよ」

「あたしはいいの。一人旅だし、自由気ままだから。でも、これ以上は、夏樹のためによくない」

「ウソだ。面倒臭くなったんだろう。法律に触れるからって、怖くなったんだ!」

 あまりに激高するので思わず他人の目を、周りを見回した。

「そう思いたいなら、それでもいい。もちろん、それもある」

「ほらみろ!」

 メモを強引に鼻息の荒い夏樹のシャツのポケットに捻じ込んだ。

「いつでも電話してきていい。でも、いったんここでお終い。よければあんたの家に送ってもいいよ。どうする?」

 彼はしばらくジャンパーのポケットに手を突っ込んで俯いていた。

 それからシャツのポケットを探ってメモを取り出し、広げてしげしげと眺めた。

 彼の指がその紙片を千切って風に飛ばすのを美玖は見つめていた。

「ごめんね・・・。オレ、我儘だった。ミクさんにだっていろいろあるよね。むしろ、お礼言わなきゃ。ありがとう、ミクさん・・・」

「ナツキ・・・」

 どうしてこんなに胸が締め付けられるのだろう。

「ここでいい。むしろ、ここがいい・・・」

「・・・そう。じゃあね。元気で。お母さんに会えるのを、祈ってるよ」

 そう言って何かを断ち切るようにCB750に跨ろうとすると、

「ミクさん・・・」

 夏樹が呼び止めた。

「約束、忘れてるよ」

 別れ際に夏樹は少しハニカミながらも笑ってくれた。それで少し救われた。

「約束?」

 ああ、あれか。

「・・・こっちおいで」

 オートバイに跨ったまま夏樹を呼んだ。

 夏樹は美玖に近づいた。

「もっと。もっと、近くに」

 美玖の腿に夏樹の手が触れた。彼のまだ優しい腰を抱きしめ、指先で瞳の涙を拭ってやった。

 少年の唇は柔らくて弾力があって、酸っぱくて濡れていた。

「強い男になるのよ。じゃ、元気で・・・」

 ヘルメットを被り、エンジンをかけた。グラブをした手で夏樹の身体を少し、押した。

 サイドのスタンドを払い、ギアをカコンと入れた。大排気量のオートバイはアクセルを入れなくてもゆっくりクラッチを繋いでいくだけで動き出す。美玖はサッと手を挙げた。そして、前を見た。バックミラーの中で手を振っている夏樹の姿が小さくなっていった。

 全部だったな。あの夏樹の中には、子供も大人も、全部入っていた。

 どんな男になってゆくのか・・・。とても興味がある。だが、もう会うこともないだろう。願わくば、彼が母と再会し、母のもとで幸せに暮らしてゆけますように。

 ミラーの中の夏樹の姿はいつしか小さくなり、そして消えた。
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