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おけいこの終わり

67 スレイヴ・スミレの終わり

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 それからひと月以上が過ぎた。

 ここのところ頻繁にスマートフォンを覗いている。サキさんからは一切連絡がない。

 その代わり、レナからはひっきりなしにLINEが来る。

(この件のここがわかりません。教えてください)萌え萌えスタンプ。

(こういう場合、どうしたらいいんですか)萌え萌えスタンプ。

(サキさんから何も連絡が無いんです。スミレさんには、どうですか?)ペンギンがはてな?してる萌え萌えスタンプ・・・。

 あーっ、ウザい!

 いい男、デキる男ほど忙しいものなのだ。忙しいのは男の甲斐性なのだ、ということが、どうもまだ高校生気分の抜けないあの小娘にはわからないらしい。

 本当にコイツにサキさんの秘書が務まるのだろうか。

 そろそろそういう部分を含めて説教しに行ってやるか・・・。

 そうすれば、もしかするとまたサキさんがひょっこり現れる、なんていう嬉しいハプニングが待っているかもしれないし・・・。

 タチバナとヒラガの役員会のスキをついて、スミレは再びあのクソ暑い街へ行った。


 

 かつて秘書だったスミレにも専属の秘書が付いた。マキノのオッサンの仕業だ。そんなものはまだいらないと言ったのに・・・。

「社長からなるべくお側にいるようにと指示されました」と、どこにでもついて来ようとする。

 しかも彼女はスミレより五つも年上だった。スミレよりもいい大学を優秀な成績で卒業した人らしい。こんな人に四六時中傍に居られたら遣りづらいことこの上ないし、第一、息が詰まる。仕事なら仕方がないが、

「ごめんなさい。これはプライベートだから・・・」

 丁重にお断りしたのだがそれでもなんだかんだついて来ようとするので、

「これは社長も父も知っていることなんですが、わたしのプライベートはまだあなたに全て話すわけにはいかないの。だから今回は秘書室で次回のヒラガの役員会のレジュメでも見て要点整理でもしていて下さい」

 今度は生き帰りで十分に睡眠がとれるように新幹線を使った。夫のナメクジにはLINEした。もちろん、出張だとウソをついた。

 あれからナメクジは大人しくなった。あまりスミレを詮索してくることは無くなった。母親というより、父親にいろいろ言われたのだろうと想像する。週に一度は身体を使わせた。新婚なのだから仕方がない。それにいつも数分で終わってくれるからあまり負担にもならない。終わった後はいつも、

「気持ちよかった。ありがとう」

 と、気に染まないキスをしてやり、背中を向けて、寝た。

 もしナメクジが、スミレがこんな捉え方をしていると知ったら、きっと発狂するんじゃないだろうか。

 いずれ折を見てこの不毛な結婚を終わらせようと思っているスミレにとってはどうでもいいが、彼にはこんな生活はあまりいいことではないんじゃないかとも思う。例えばグループの社内刊行物を扱う社員十数人ほどの孫会社の部長辺りが、ナメクジにとってはもっとも居やすい環境なのではないか。そこで日がな一日パソコンの中の二次元のエッチな女の子と戯れているのが彼の幸せなのではないだろうか・・・。それほどしかスキルとポテンシャルが無いのだから、むしろそのほうが彼にとっては幸せなのかもしれない。

 新幹線の改札を抜けるとあの真っ白な奴隷服のレナが立っていた。

「ただいま」とスミレは言った。

「お帰りなさい」とレナも返した。

 心なしか前よりも艶っぽく、つまりエッチな雰囲気を纏っているような気がする。

「運転手のスズキさん」になりきっているミタライさんの車で事務所に行った。

 レナはまだ彼がベンゴシであることを知らない。彼女が完全に秘書としての仕事を全うできるようになったら正体を知らせてやろう。その日が来るのが密かな楽しみになっている。

「これって、本当にお勤めされてたんですか? もしかして、橘すみれって、スミレさんの、本名?」

「バカね、この子は!」

 と、スミレは言った。

「仮にもあなたの学校にに提出した公文書に書いたんだよ。連絡だって来る。フェイクなわけ、ないでしょうが!

 今月から、あなたもこの『御手洗法律事務所』の職員だからね。電話番号ぐらいは暗記しなさい」

 スピリット・オブ・エクスタシーのエンブレムが光る超高級車の後部シートでさっそくレナの仕込みを始める。スミレは今日一日しか時間がとれない。それまでのスミレの人生に比べ、時間がとても貴重なものになってきていた。

「ではまた明日の朝お迎えに上がります」

 事務所に着き、ミタライさん扮する「スズキさん」を見送るや、さっそくパソコンを出しレナの学習程度のチェックを開始する。

 いくつかの法人の入出金。そのパスワードの暗記程度。会社法人の登記と解散の仕方。サキさんの各チームの性格と仕事内容と連絡先の暗記具合。そして、スレイヴのお世話・・・。

「弁護士事務所と役員報酬の分は、この会計事務所が申告やらやってくれるから。それ以外のものは、申告しちゃダメ。名義があなたじゃないから」

「どうしてですか」

 かわいい顔して素で訊かれて面食らった。

「わからない? これ、立派な、脱税でしょうが。追徴金払いたいの? 税務署に献金したいの? あんたは!」

 あー、疲れる。

 この調子で続けると自分が持たない。

「休憩しよう。アホに教えるの、疲れる。ストレスたまる。おいで。イジめさせな」

 サキさんからは一切連絡がない。もちろん、レナにもないのだろう。スミレもそうだったが、サキさんとあまりに激しい時間を過ごしすぎて、その喪失感で臆病になっているのかもしれない。こういう時はアホな女子高生、もといアホな元女子高生をイジめて愉しむに限る。

「脱ぎなよ」

 と、スミレは言った。

「なるべくゆっくり、脱ぐのよ。これはあなたへのオシオキプレイなんだから」

 ノースリーブのサマードレス。腕を回し、背中のファスナーを時間をかけて下ろしてゆく。早くもレナは興奮している。やはり素直な子だ。荒くなってゆく息遣いに肩を小さく上下させながら、両手を前でクロスして肩にかかった衣を落としスミレを頼り目で見上げてくる。こういう眼にスミレの奥深いところにあるS性を刺激されてしまう。

「下着もよ」

 もう、レナもわかっているはずだがあえて言う。それで、レナの被虐と羞恥のスイッチが完全にオンになる。ちょっと前まで高校生だった年齢の娘には贅沢過ぎる、淡いバイオレットを基調にした高価なブラジャー。それを外す。ダイヤのピアスに飾られた乳首が露にされる。

「後ろを向きなさい」

 レナは言われた通り、回れ右をする。

「ショーツも脱ぐのよ。膝を折らずにね」

「はい」

 レナは指をサイドにかける。ショーツを、膝を折らずに脱ぎ去るためには上体を大きく前に倒し、尻を突き出さなければならない。突き出せば、ピアスした股間と尻の穴がスミレに露になる。今レナは恥ずかしさが込み上げているはずだ。ゆっくりとその動作をしているレナの尻をいきなり叩く。

 パチーン!

「ああーっ!」

 それほど痛くないクセに・・・。レナはワザと大袈裟に、官能的に悲鳴を上げる。防音などないから、事務所の周囲に漏れないように、悲鳴も控えめにしているところがニクい。

「ああっ、そ、そこ・・・」

 ヴァギナもアナルも丸見えだ。イヤらしい眺めにゾクゾクしてくる。

 すこしアナルの傷痕に触れる。もうすっかり傷は癒え、スミレの責めをまっているようだ。その指でヴァギナとクリトリスに触れる。ここも早くも溢れさせている。スケベな娘だ。もちろん言葉にして責めてやる。

「もうこんなにしちゃってるのね。イケない子」

「あ、ああ・・・」

「指を2本、ヴァギナに潜り込ませる。

 ぬちゃ。くちょ。

 イヤらしい水音。

「ちゃんと足首持ってなさい。離したら許さないよ!」

 敏感になっている入り口をじっくりとかき回す。股間からさらに卑猥な音が流れる。中途半端にショーツを下ろした、前かがみの、みっともない姿勢のまま、レナは早くも昂まり、頭を下げている窮屈な姿勢も相まって、頬を赤く染めている。

 レナの蜜壺はスミレの指をグイグイ締め付け、奥へ奥へと誘いこもうとする。男はきっと、コレが堪らないんだろうなという気持ちになる。自分の指が感じている。そのボコボコの襞を探るようにゆっくりとねっとりと指を蠢かせる。

「ああっ! あ、あ、いっ、イキ、イク・・・」

 サキさんの調教によって、レナもプレイの中で自分で官能を高めてゆく術を十分に身に着けてきているのだろう。一を聞いただけで、その後に続く十のストーリーとステップがわかるようになっている。

 すると、どうしようもないくらいにメラメラと、負の感情が、嫉妬の感情が燃え上がって来るのを拒めなくなっているのに気づく。

「あなたは、いいわね・・・」

 そんな言葉が、無意識に、ふと口をついて、出てしまう。

「え?」

 お尻を丸出しにしたマヌケな格好のレナが顔を上げた。

「あんたが、レナが、羨ましい・・・」

 本音が迸るのを抑えきれなくなってしまっている。

 ガマンにガマンを重ね、抑えに抑えて来た本心が、曝け出されてゆく。

「あなたは、自由だもの」

 そして、思いっきりお尻を、張る。

 ピシャーンッ!

「ああっ!」

「それに、これからも、サキさんと・・・」

「あっ、そこ、ダメっ・・・」

「だから、余計に、虐めたくなっちゃうのっ!」

 自分は今、さぞイヤらしい妖しい光を湛えた眼でレナを見ているのだろう。レナに対する醜い本心がこれでもか、と露出する。

 憎い。たまらなく憎い。

 これからずっと、何の障害もなくサキさんを独占できるこの小娘が、憎い・・・。

 自然にレナのお尻を張る手に力が籠ってしまう。

「ああーっ! お尻いぃ、ああっ!・・・」

「前戯もなんにもなし。たった三分。出すだけ出して、自分の部屋に籠っちゃう。そのくせ、この前だって・・・。どこへ行くの、何時に帰るの、夕ご飯どうすればいいの・・・。全部、知ってるくせに。探偵雇って、尾行までさせてるくせに・・・。

 あんな奴と、あんなネチネチしたナメクジみたいな奴と、これから一生一緒だなんて、絶対無理! 無理なの。無理なのよ、レナ。無理なのォーーーーーーーーーっ!」

「スミレさん・・・、っは、ああっ!」

 大量の潮が、噴水のように吹きだし、スミレの顔にまで飛沫が飛んだ。それでスミレの中の何かがプツンと切れた。

「お漏らしまでして・・・。もう、絶対、絶対許さないからっ!」

「そんなあ・・・。ああっ! 酷いですよ、スミレさーん! スミレさああああんっ!・・・」

 と。

 キッチンのテーブルに置いたスマートフォンが鳴っている。

 ハッと、我に返った。サキさんの専用呼び出し音だ。

 すぐにスマートフォンを取りに行った。

「サキさん♡・・・」

 自分がハート付きで喋ることが出来ることをスミレは初めて知った。

「スミレか」

 世界で一番愛しい、スミレの一の男の官能的な太い声・・・。

「ハイ!」

「今、事務所か・・・レナと、一緒か・・・」

「はい、事務所です。レナと一緒です」

「そうか・・・。命令を伝える。よく聞け。

 え? 命令?
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