ハウスDr.園子

MIKAN🍊

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31.薄汚い女

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「つくづくお人好しなのね」
園子は翔太の天然ぶりに苛立ちを隠せない。
園子はこれまで幾たびか恋愛をした。その度に酷い仕打ちを受けた。それが私の恋なのか…
今回もそう。美佐夫の事もまだ終わってない。いや、終わったかも知れないけれど傷はまだパックリ開いたままだ。それなのに…
遣る瀬無い思いで園子の胸は一杯になった。

「今このタイミングでまたあなたまで私を苦しめる気?」
言わなくて良い事がつい棘のある言葉になって踊り出る。違う。翔太のせいじゃないと判っているのに。
「そんなつもりないっす」
…それは翔太の視線に耐えられないから。

「いいわ。じゃ解るように教えてあげる。私は28、あなたは?18?19?一回りも年の差がある。これは問題。女の私にとっては大問題よ。それに私のお腹には赤ちゃんがいるの。これも大大問題。この子の父親はあなたも知ってる人。しかもその人は警察に捕まってるわ。これがどういう意味かわかるでしょう?お先真っ暗よ」
「わかるす。でも…」
「でもじゃない。私は仕事も恋人も無くした。もう何もないわ。お金もね。あの男が持って行ってしまった。あなたもそうでしょう?あなたは今無職で文無し。どう?こんな状況で結婚なんて思いつくあなたはどうかしてるとしか思えない」
「それは違うす…」
私はなんて…ずるい。

「違わない。私は薄汚い女。あなたみたいな純粋な子には不向きなの。わかる?冗談じゃないわ。それって同情?あなたは良くても私は惨めだわ。年下の子に馬鹿にされて。こんなのってないわ…」
言ってるそばから本当に自分が情けなくなってきた。けれど涙は見せたくない。翔太にだけは…
「もういい。出て行って」 

園子はごめんなさいと心の中で呟いた。
「わかったす… 気持ちは伝えたっす。係長には生き抜いて欲しいっす。それだけす」
「言われなくても生き抜くわ」
どうして憎まれ口を叩いてしまうのか。
私はひょっとして甘えているのか?この少年に…
翔太は脚を引きずるようにして出て行った。

翔太が部屋を去った後、園子は何とは無しにスズメ達が帰ってくるのを心待ちにしたが、スズメ達が戻ってくる気配はなかった。
「八つ当たりなんて最低ね。最低の私…」
味気ない病室の窓から綺麗な丸い月が寂しげに輝いていた。

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