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27.階段
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美佐夫の回し蹴りが飛んだ。蹴りは園子の肩で炸裂した。
「やめて!蹴らないで!蹴らないで!」
「二度と触るな」
「お願い。ごめんなさい。蹴らないで…」
美佐夫が出てゆく。これからどうしたら良いのか…
園子は下腹をそっと撫でた。
お腹のこの子…
園子はハッとしてドレッサーの収納ボックスを引っ掻き回した。貯金通帳と印鑑がない。
「待ってよ!ちょっと!」
園子は玄関に向かって走った。写真立てを踏み抜いてガラスの破片が刺さった。
「美佐夫!待って!それ返して!!」
うまく靴が履けない。もう裸足だって構わない。
扉を開けた。降り込んだ雨が通路を水浸しにいていた。
ライトバンのエンジンをかける音がした。ゆっくりと砂利道を発進する音と。
「待ってったら!美佐夫っ!!」
あらん限りの大声で叫んだ。
声は自分の耳元で反転した。
園子は濡れた階段を踏み外した。頭の後ろからどんより曇った空が逆さまに見えた。
自分の足のつま先や膝小僧が見えた。
視界の隅でライトバンの中の美佐夫の顔と早苗の驚いた顔も見えた。
何もかもスローモーションで起きた。
何で?とっても惨めだわ… こんなの無様過ぎる…
園子は体勢を立て直そうとしたがかなわなかった。階段の角に全身を打ちながらもんどり打ってエントランスのコンクリートに叩きつけられた。
美佐夫達は車から降りて来なかった。土砂降りの雨が園子の上に降り続いた。
「やめて!蹴らないで!蹴らないで!」
「二度と触るな」
「お願い。ごめんなさい。蹴らないで…」
美佐夫が出てゆく。これからどうしたら良いのか…
園子は下腹をそっと撫でた。
お腹のこの子…
園子はハッとしてドレッサーの収納ボックスを引っ掻き回した。貯金通帳と印鑑がない。
「待ってよ!ちょっと!」
園子は玄関に向かって走った。写真立てを踏み抜いてガラスの破片が刺さった。
「美佐夫!待って!それ返して!!」
うまく靴が履けない。もう裸足だって構わない。
扉を開けた。降り込んだ雨が通路を水浸しにいていた。
ライトバンのエンジンをかける音がした。ゆっくりと砂利道を発進する音と。
「待ってったら!美佐夫っ!!」
あらん限りの大声で叫んだ。
声は自分の耳元で反転した。
園子は濡れた階段を踏み外した。頭の後ろからどんより曇った空が逆さまに見えた。
自分の足のつま先や膝小僧が見えた。
視界の隅でライトバンの中の美佐夫の顔と早苗の驚いた顔も見えた。
何もかもスローモーションで起きた。
何で?とっても惨めだわ… こんなの無様過ぎる…
園子は体勢を立て直そうとしたがかなわなかった。階段の角に全身を打ちながらもんどり打ってエントランスのコンクリートに叩きつけられた。
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