ハウスDr.園子

MIKAN🍊

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24.ブラック

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「あざーっす!」
ボサボサの髪を手で撫でつけて園子は自分の席に着いた。
昨夜美佐夫は帰ってこなかった。結婚しているわけではないが外泊するなら連絡くらいしてもバチは当たらないだろうに。
いつもは先に寝てしまう園子も大貫邸の事が気になって何となく起きて待っていた。お陰で寝坊してしまい出社がギリギリになってしまった。
ふと見ると翔太もまだのようだった。
「トイレ?」園子は他の班員に訊いた。
「まだ来てませんよ」
「珍しいわね。ロープレは?」
「終わりました」
「そう。早いのね」
何だか取り残された気がした。

幹部達がそれぞれの机の前に並んだ。
「あざーっす!!」
「あざっす!!」

型通りの朝礼が終わると園子は所長の美佐夫の所へ急いだ。
「昨日の大貫邸の…」
「あそこは撤収だな」
「え?」
「もう行かなくて良い」
「どうしてですか?もしかしてクレーマー?」
「馬鹿野郎。ブラックだ。あそこはブラックリストなんだよ」
「まさか」
「審査は通らなかった。クレジットも止められてる。家のローンも滞ってる。借金まみれなんだよ。何処を見てたんだ?」
「何処をって。所長もドン丸だって…」
「あのなあ、ドン丸だからむしり取られた後なんだよ。カラスだって寄り付かねえよ」
「そんな…私もう一度行ってきます」
「行ってどうすんだ?それより新しいタマを探せ」
園子は身体中の力が抜けていく気がした。

「おい!紀伊国屋!タマはないのか?あ?」
目の前に立ち尽くす園子を無視して美佐夫は声を荒げた。
宗介はヘラヘラと笑って答えた。
「ありますよ。午後から同行お願いします」
「よっしゃ。わかった。何処だ?」
「桜西5丁目」

園子が宗介を振り向いて抗議した。
「ちょっと待ってよ。5丁目って、そこうちのテリじゃない!」
「わりーな。新人が間違えて叩いちまってさ。勘弁してくれよ」
「なっ…」
「おい園子。もう良いだろう。お前の班は宗介の班とテリを交換しろ」
「何でですか?何でそうなるんですか?」
「そういう事も必要なんだよ。見放されたツキにしがみつくな。菊池邸も今日工事完了だろ。お前は宗介のテリを回れ、いいな」

何なの、いったい…?
「悪いねえ。園子様」
「わかりました」
所長の命令は絶対だ。
「そろそろお払い箱かな?ククク…」
「何ですって?」
園子は宗介をキッと見た。
「おー、こわ」

「おい早苗!コーシーもう一発ッ!失礼、もう一杯!」
美佐夫がふざけた。
「はあ~い。あなた!」
一瞬険悪になりかけた事務所に笑い声が満ちた。

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