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22.アフリカ
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「あなた恋人はいないの?」
「え、あ、俺すか?」
フレンチフライでケチャップをもてあそびながら園子はただ漠然と訊いた。別に翔太の返事に何かを期待したわけじゃなかった。
酔っているのかも知れなかった。
キャッスルに入店する前に産科に電話をして予約を取った。妊娠検査薬の反応は陽性だった。あまり先延ばしにも出来ない。
「傷つけ合わずに愛し合う方法ってないのかな?」
「どうしたんすか?」
「うん。ちょっとね」
「らしくないっすね」
「そう?あら、切ってるじゃない?手を貸してごらん」
「あ、いいすいいす!脚立積んでる時切ったす」
「ダメよ。ほら」
園子はウエストポーチから絆創膏を出して翔太の指に巻いた。
「あざっす」
「もう一杯おかわり!」
「俺なら係長を傷つける事はしないっす」
「へっ?今何か言った?」
「いや、いーす」
「気持ちを伝えるって難しいよね」
「そうすね」
「毎日顔を合わせていても本当に言いたい事、ちっとも言えやしない」
「そうなんすか?」
「そうよ」
「なんでっすか?」
「うーん。そうね。自分が傷つきたくないからかしら?傷つけるのもイヤだわ」
「好きだって事をすか?」翔太は思い切って訊いた。
「まあそんなところかしら。複雑なの。大人の世界は」
「それはおかしいす」
「どうして?」
「大人とか子どもとか関係なくねーですか?」
「何でも言えれば良いというものじゃないわ。仕事だってそうでしょ?思った事をそのまま言葉にしていたら… どうしたの藤間君。目が座ってるわよ?」
「大丈夫す」
「心が決まらなくていつも泣きたくなっちゃうわ」
翔太はスーッと息を吸い込んでいったん溜め込んで、それから言った。
「好きな人には好きって言わなきゃダメっす!絶対に!でないと、でないと…いつか必ず後悔するっす!」
園子はびっくりしてビールにむせた。
「藤間君…」
TOTOの『アフリカ』が流れていた。
キーボード奏者のデヴィッド・ペイチが『僕を君から引き離すのは無駄なこと』と歌っていた。
「え、あ、俺すか?」
フレンチフライでケチャップをもてあそびながら園子はただ漠然と訊いた。別に翔太の返事に何かを期待したわけじゃなかった。
酔っているのかも知れなかった。
キャッスルに入店する前に産科に電話をして予約を取った。妊娠検査薬の反応は陽性だった。あまり先延ばしにも出来ない。
「傷つけ合わずに愛し合う方法ってないのかな?」
「どうしたんすか?」
「うん。ちょっとね」
「らしくないっすね」
「そう?あら、切ってるじゃない?手を貸してごらん」
「あ、いいすいいす!脚立積んでる時切ったす」
「ダメよ。ほら」
園子はウエストポーチから絆創膏を出して翔太の指に巻いた。
「あざっす」
「もう一杯おかわり!」
「俺なら係長を傷つける事はしないっす」
「へっ?今何か言った?」
「いや、いーす」
「気持ちを伝えるって難しいよね」
「そうすね」
「毎日顔を合わせていても本当に言いたい事、ちっとも言えやしない」
「そうなんすか?」
「そうよ」
「なんでっすか?」
「うーん。そうね。自分が傷つきたくないからかしら?傷つけるのもイヤだわ」
「好きだって事をすか?」翔太は思い切って訊いた。
「まあそんなところかしら。複雑なの。大人の世界は」
「それはおかしいす」
「どうして?」
「大人とか子どもとか関係なくねーですか?」
「何でも言えれば良いというものじゃないわ。仕事だってそうでしょ?思った事をそのまま言葉にしていたら… どうしたの藤間君。目が座ってるわよ?」
「大丈夫す」
「心が決まらなくていつも泣きたくなっちゃうわ」
翔太はスーッと息を吸い込んでいったん溜め込んで、それから言った。
「好きな人には好きって言わなきゃダメっす!絶対に!でないと、でないと…いつか必ず後悔するっす!」
園子はびっくりしてビールにむせた。
「藤間君…」
TOTOの『アフリカ』が流れていた。
キーボード奏者のデヴィッド・ペイチが『僕を君から引き離すのは無駄なこと』と歌っていた。
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