19 / 41
19.菓子折り
しおりを挟む
パーキングブロックに座って缶コーヒーを飲んでいると、物凄いスピードで社のライトバンが突っ込んで来た。
「乗れ」
「あざっす!」
「菓子折りは?」
「これす」翔太は釣りとレシートを美佐夫に渡した。
「なんだ?」
「なんか鰻パイみたいなやつす」
「はっはっは!そりゃあいい」
「忘れられたかと思ったす」
「これから客んとこ行くがお前は余計な事は言うなよ」
「了解す」
「ただし笑顔は忘れるな。俺が振ったら適当に相づちを打て。わかったな」
「了解す」
ルームミラー越しに園子を見やったが、園子は運転に夢中だ。
銀行強盗で車の運転だけを任された無口なドライバーみたいに。
「係長どうかしたんすか?」
「生理なんだってよ。タンポン買いに行ってたんだ」美佐夫が代わりに答えた。
「翔太。突っ込んでやれ。わははは」
園子のポニーテールでむき出しになった耳が真っ赤に紅潮していた。
現場近くの空き地に車を停めた。
「こっちです」園子が先に行く。
ピンポーン!
玄関が開いて丸顔で心配性の婦人と長距離トラックの運転手をしているというその夫が三人を出迎えた。
「今日はうちの監督連れて来ましたので」
園子がいんぎんに挨拶をした。
「あらまあ監督さん?それはどうもどうも。お忙しい中。まあ上がって下さい。どうぞどうぞ。ほらあなた。こちらが椎名さんよ」
「あ、どうも。大貫です。家内から伺ってます。あ、監督さんも。そちらの若い方もどうぞ。さあ」
大貫は小太りで五分刈りの人の良さそうな男だった。何処かテディベアーを思わせる風貌。
翔太が美佐夫に聞いた。
「監督、俺脚立下ろして来ます!」
「馬鹿野郎この野郎!大貫さんが上がって下さいつってんだろう!失礼じゃねえか!」
「す、すいません!」
慌てて婦人がとりなす。
「あ、良いんですよ。いいのよいいのよ。ほら監督さん。さあ先にお茶でもね?」
「椎名さん。ほら、どうぞ」
「ではお邪魔します。監督、藤間君、上がらせてもらいましょう」
短気で竹を割ったような昔堅気の職人と、トンマな新米。
これが今日のシナリオか。そのまんまじゃない。園子は笑いたくなるのをこらえた。
「あ、奥さんこれ。良かったら召し上がって下さい」園子は紙袋から菓子折りを差し出して言った。
「まあまあ、そんな気を遣ってもらってすみませんねえ」
喉の奥に美佐夫の体液が絡み付いてくる。
早くお茶でも何でも飲みたいわ…
「乗れ」
「あざっす!」
「菓子折りは?」
「これす」翔太は釣りとレシートを美佐夫に渡した。
「なんだ?」
「なんか鰻パイみたいなやつす」
「はっはっは!そりゃあいい」
「忘れられたかと思ったす」
「これから客んとこ行くがお前は余計な事は言うなよ」
「了解す」
「ただし笑顔は忘れるな。俺が振ったら適当に相づちを打て。わかったな」
「了解す」
ルームミラー越しに園子を見やったが、園子は運転に夢中だ。
銀行強盗で車の運転だけを任された無口なドライバーみたいに。
「係長どうかしたんすか?」
「生理なんだってよ。タンポン買いに行ってたんだ」美佐夫が代わりに答えた。
「翔太。突っ込んでやれ。わははは」
園子のポニーテールでむき出しになった耳が真っ赤に紅潮していた。
現場近くの空き地に車を停めた。
「こっちです」園子が先に行く。
ピンポーン!
玄関が開いて丸顔で心配性の婦人と長距離トラックの運転手をしているというその夫が三人を出迎えた。
「今日はうちの監督連れて来ましたので」
園子がいんぎんに挨拶をした。
「あらまあ監督さん?それはどうもどうも。お忙しい中。まあ上がって下さい。どうぞどうぞ。ほらあなた。こちらが椎名さんよ」
「あ、どうも。大貫です。家内から伺ってます。あ、監督さんも。そちらの若い方もどうぞ。さあ」
大貫は小太りで五分刈りの人の良さそうな男だった。何処かテディベアーを思わせる風貌。
翔太が美佐夫に聞いた。
「監督、俺脚立下ろして来ます!」
「馬鹿野郎この野郎!大貫さんが上がって下さいつってんだろう!失礼じゃねえか!」
「す、すいません!」
慌てて婦人がとりなす。
「あ、良いんですよ。いいのよいいのよ。ほら監督さん。さあ先にお茶でもね?」
「椎名さん。ほら、どうぞ」
「ではお邪魔します。監督、藤間君、上がらせてもらいましょう」
短気で竹を割ったような昔堅気の職人と、トンマな新米。
これが今日のシナリオか。そのまんまじゃない。園子は笑いたくなるのをこらえた。
「あ、奥さんこれ。良かったら召し上がって下さい」園子は紙袋から菓子折りを差し出して言った。
「まあまあ、そんな気を遣ってもらってすみませんねえ」
喉の奥に美佐夫の体液が絡み付いてくる。
早くお茶でも何でも飲みたいわ…
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説

ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。


思い出さなければ良かったのに
田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。
大事なことを忘れたまま。
*本編完結済。不定期で番外編を更新中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる