ハウスDr.園子

MIKAN🍊

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19.菓子折り

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パーキングブロックに座って缶コーヒーを飲んでいると、物凄いスピードで社のライトバンが突っ込んで来た。
「乗れ」
「あざっす!」
「菓子折りは?」
「これす」翔太は釣りとレシートを美佐夫に渡した。
「なんだ?」
「なんか鰻パイみたいなやつす」
「はっはっは!そりゃあいい」

「忘れられたかと思ったす」
「これから客んとこ行くがお前は余計な事は言うなよ」
「了解す」
「ただし笑顔は忘れるな。俺が振ったら適当に相づちを打て。わかったな」
「了解す」
ルームミラー越しに園子を見やったが、園子は運転に夢中だ。
銀行強盗で車の運転だけを任された無口なドライバーみたいに。
「係長どうかしたんすか?」
「生理なんだってよ。タンポン買いに行ってたんだ」美佐夫が代わりに答えた。
「翔太。突っ込んでやれ。わははは」
園子のポニーテールでむき出しになった耳が真っ赤に紅潮していた。


現場近くの空き地に車を停めた。
「こっちです」園子が先に行く。
ピンポーン!
玄関が開いて丸顔で心配性の婦人と長距離トラックの運転手をしているというその夫が三人を出迎えた。
「今日はうちの監督連れて来ましたので」
園子がいんぎんに挨拶をした。
「あらまあ監督さん?それはどうもどうも。お忙しい中。まあ上がって下さい。どうぞどうぞ。ほらあなた。こちらが椎名さんよ」
「あ、どうも。大貫です。家内から伺ってます。あ、監督さんも。そちらの若い方もどうぞ。さあ」
大貫は小太りで五分刈りの人の良さそうな男だった。何処かテディベアーを思わせる風貌。

翔太が美佐夫に聞いた。
「監督、俺脚立下ろして来ます!」
「馬鹿野郎この野郎!大貫さんが上がって下さいつってんだろう!失礼じゃねえか!」
「す、すいません!」
慌てて婦人がとりなす。
「あ、良いんですよ。いいのよいいのよ。ほら監督さん。さあ先にお茶でもね?」
「椎名さん。ほら、どうぞ」
「ではお邪魔します。監督、藤間君、上がらせてもらいましょう」
短気で竹を割ったような昔堅気の職人と、トンマな新米。
これが今日のシナリオか。そのまんまじゃない。園子は笑いたくなるのをこらえた。

「あ、奥さんこれ。良かったら召し上がって下さい」園子は紙袋から菓子折りを差し出して言った。
「まあまあ、そんな気を遣ってもらってすみませんねえ」
喉の奥に美佐夫の体液が絡み付いてくる。
早くお茶でも何でも飲みたいわ…

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