ハウスDr.園子

MIKAN🍊

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16.不安

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朝礼が終わり班ごとのミーティングをしていると珍しく美佐夫がやって来た。
「11時か?」
「そうです」
「あとで迎えに来い」
「了解です」

「それじゃ解散。タマが出たら留守電入れておいて。すぐ行くから」
園子は班員を見回して言った。
「あざっす」
「行こうか」
「はい」翔太は笑顔で頷いた。 


雲ひとつない大空の下。園子と翔太を乗せた社有車がゆく。
「良い天気でよかったわ」
ラジオから流れるJ-POPが心地よい。
ハミングしていた翔太が窓の外を指す。
「あ、あそこ!桜が咲いてるっす」
園子はライトバンのウィンカーを出しながら舌打ちした。
「何処?ああ間違えちゃった」
「あそこっす。歯医者のとこ」
「早咲きの桜ね。見たかったなあ。残念!」


「早くしろ」
「わかってるってば。こっちも忙しいの」
早苗はパンティーを下ろして洗面台に手をついた。
「ダメだ。吸ってくれ」
「貸して」
「ン…」
「あぁ… いいぞ」
二人以外は無人の事務所。くぐもった喘ぎ声がトイレのドアの隙間から漏れてくる。

「ねえ、美佐夫」
「どうした?」
早苗が怪訝な顔をした。
「気のせいかな。ウンチの匂いがする…」
「風呂入ってねえからだろ」
「なんだそっかあ。今日は一緒に寝れる?」
「寝れるぜ。だからもっと真剣にやれ」


「うまくいくっと良いっすね」
「いくわ。きっと大丈夫よ」
園子はステアリングを軽やかに操って菊池邸へ向かった。
工事が始まっても毎日お客の所へ顔を出す。
そうしたキメの細かい配慮がやがて大きな身を結ぶ事もある。口コミに勝る情報伝達はない。
それだけではない。喜びを与えてくれた相手に対する敬意と感謝だった。
そんな当たり前の事を感じさせてくれる日々が、得体の知れない不安をかき消してくれるのだった。

「足場点検したらいったん支社に戻るから」
「ラジャーっす!」

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