ハウスDr.園子

12.クロージング

肛門を洗浄して市販の軟膏を塗り、痛みが和らぐのを待った。
深夜を回っても美佐夫の性欲は収まらず、結局三回求められた。うち一回は肛門を使って。
美佐夫のモノは太いので肛門でされると決まって切れる。
同行の前は気分が高揚するのだと言っていた。それはそうかも知れないが痛い思いをするのはこちらだ。かと言って変に断ってヘソを曲げられるのも園子にとっては厄介だった。

美佐夫のクロージングは定評がある。その腕並は園子も何度も見てきた。
威圧感とも違う。押しの一手ではなく引きながら相手の懐に入り込む。そのタイミングの絶妙さ。
筋肉隆々のこの男の何処にそんな繊細さが潜んでいるのか。
こちらからけしかけるのではなく、嫌というほど相手を待たせる。本当は売りたいのだけれど、売りたいという事を決して相手に悟らせない。
引いて追いかけさせるのだ。追いかけた方は引っこみがつかなくなる。強引にハンコを押させるより確実なやり方だった。
美佐夫はただ住宅に対する家主の愛情を煽るだけなのだ。

園子は何としてでも契約を勝ち取りたかった。タマを出した翔太のためにも。
そして自分のためにも。成約になれば美佐夫も喜ぶだろう。そうすれば妊娠したらしい事も話し易い。
それは今日の美佐夫のクロージング次第という事になる。

「早く出るわ。見積もり書も用意しなくちゃだし」
「ああわかった…」
今朝はやけに素直だ。
園子はそれとなく訊いてみた。
「夜中に何度もメールがあったみたい」
「そうか」
「何かしらね」
「キャバ嬢だろ」
「そう。ならいいけど」
肛門がヒリヒリと痛む。今日は何も食べないでおこうと園子は思った。