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1.アヴァロン
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島津光彦は久しぶりの連休で部屋の整理をしていた。
クローゼットの奥から普段は開ける事のないカラーボックスを引っ張り出して中身を調べる。
必要のない物を片っ端からゴミ袋に放り込んでいった。
どうしてこんな物を後生大事に取っておいたのか自分でも不思議なくらいだった。
ガラクタを引っ掻き回していると一枚の写真が出てきた。
光彦はふと手を止め写真に見入った。
ブルーのショートパンツに真っ白なロングカーディガンを羽織った女が立って笑っている。こちらを見て。
セミロングの栗色の髪にはソバージュがかかっている。
背景は薄暗く、真っ赤なパンプスだけが3D画像みたいにくっきり浮かんでいた。
光彦はボックスファイルを仕舞い、キッチンへ移動した。
カーテンを開け陽の光を取り込んだ。
冷蔵庫からノンアルコールドリンクを出してプルトップを引き抜いた。
椅子を引き寄せタバコを一本咥えると、また写真を見つめた。
梨香子。知り合ったのは彼女がまだ聖潤宝学院の学生だった頃だ。
前原という悪友の友達のまた友達。前原と遊ぶと時々梨香子がセットでやって来た。
写真は前原の結婚式で光彦が撮ったスナップだ。
こいついつもココナッツオイルの香りがしてたっけ、、
あの頃はバカ丸出しだったな。光彦は苦笑した。
スマホをタップしてプレイリストからロキシーミュージックを選んだ。
光彦のコレクションには古い曲から新しい曲まで何でも揃っていた。
「アヴァロンか。懐かしい」
中世の騎士だろうか。幻想的なジャケットまでもが鮮やかに思い出された。
『ファースト&ブラッド』も良いが、『アヴァロン』はブライアン・フェリーが追求した美の集大成でありそれだけ完成度が高い。
光彦は『アヴァロン』を聴きながらタバコの煙りを追いかけた。
梨香子とは前原 修の結婚式で久しぶりに会った。10年ぶりだった。
シュウは光彦の数少ない親友の一人だった。
その日は台風が近付いていたせいか天気はあまり良くなかった。
学生時代、海が荒れると良い波が来ると言ってシュウはいつも喜んでいた。
当時のシュウの趣味はクルマとサーフィンだった。他にも色々やっていたが、どれも長続きしなかった。
人付き合いは調子が良いと思えるくらい広かった。だから変わり者の光彦とも上手くいったのかも知れない。
気が合うというよりシュウに人の好き嫌いが無いのだろう。シュウに誘われると光彦は何処でも付き合った。クルマでもサーフィンでも。
「光彦、お前は面白い奴だなあ」
会うと決まってシュウはそう言った。
そう言うお前こそ、と光彦は内心思っていた。
結婚式会場は外人墓地の上にある小さな教会だった。
丘の上は生暖かい風が吹いていた。
クローゼットの奥から普段は開ける事のないカラーボックスを引っ張り出して中身を調べる。
必要のない物を片っ端からゴミ袋に放り込んでいった。
どうしてこんな物を後生大事に取っておいたのか自分でも不思議なくらいだった。
ガラクタを引っ掻き回していると一枚の写真が出てきた。
光彦はふと手を止め写真に見入った。
ブルーのショートパンツに真っ白なロングカーディガンを羽織った女が立って笑っている。こちらを見て。
セミロングの栗色の髪にはソバージュがかかっている。
背景は薄暗く、真っ赤なパンプスだけが3D画像みたいにくっきり浮かんでいた。
光彦はボックスファイルを仕舞い、キッチンへ移動した。
カーテンを開け陽の光を取り込んだ。
冷蔵庫からノンアルコールドリンクを出してプルトップを引き抜いた。
椅子を引き寄せタバコを一本咥えると、また写真を見つめた。
梨香子。知り合ったのは彼女がまだ聖潤宝学院の学生だった頃だ。
前原という悪友の友達のまた友達。前原と遊ぶと時々梨香子がセットでやって来た。
写真は前原の結婚式で光彦が撮ったスナップだ。
こいついつもココナッツオイルの香りがしてたっけ、、
あの頃はバカ丸出しだったな。光彦は苦笑した。
スマホをタップしてプレイリストからロキシーミュージックを選んだ。
光彦のコレクションには古い曲から新しい曲まで何でも揃っていた。
「アヴァロンか。懐かしい」
中世の騎士だろうか。幻想的なジャケットまでもが鮮やかに思い出された。
『ファースト&ブラッド』も良いが、『アヴァロン』はブライアン・フェリーが追求した美の集大成でありそれだけ完成度が高い。
光彦は『アヴァロン』を聴きながらタバコの煙りを追いかけた。
梨香子とは前原 修の結婚式で久しぶりに会った。10年ぶりだった。
シュウは光彦の数少ない親友の一人だった。
その日は台風が近付いていたせいか天気はあまり良くなかった。
学生時代、海が荒れると良い波が来ると言ってシュウはいつも喜んでいた。
当時のシュウの趣味はクルマとサーフィンだった。他にも色々やっていたが、どれも長続きしなかった。
人付き合いは調子が良いと思えるくらい広かった。だから変わり者の光彦とも上手くいったのかも知れない。
気が合うというよりシュウに人の好き嫌いが無いのだろう。シュウに誘われると光彦は何処でも付き合った。クルマでもサーフィンでも。
「光彦、お前は面白い奴だなあ」
会うと決まってシュウはそう言った。
そう言うお前こそ、と光彦は内心思っていた。
結婚式会場は外人墓地の上にある小さな教会だった。
丘の上は生暖かい風が吹いていた。
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