真樹子

好み

男性と接する時、絵美子はいつも身構えてしまう。初対面ならなおさらだ。
夕方我が家まで押し掛けて来られた日は明らさまに警戒してしまった事を絵美子は後悔した。
昼間会ってみると気さくで親切で、何処となく都会の香りがする人だった。
絵美子がもっとも嫌うのは脚の先から頭の先までじろじろと舐め回す様に人を見て、高圧的な態度で上から物を言うタイプの男だ。
汗臭くて気配りの足りない人は苦手。レディーファーストとは言わないまでもいつもそっと見守ってくれる細やかな心配りの出来る人が良い。
もちろん理想であって現実とは程遠い。
絵美子は「はあ…」と溜息を吐いた。

島津とは始めに合った公園で別れた。
「僕は公民館にお金を届けて帰りますので塚田さんはここで結構ですよ。今日はご苦労様でした」
「え、本当に？良いんですか」
絵美子はもう少し付き合っても良いと思っていた。まだ11時にもならない。
「大丈夫ですよ。あとこれフロッピーです。地区理事の資料や桜西B地区の地図、それに緊急連絡網なんかが入ってますから管理に気をつけて下さいね。うるさい人いるもんで」
「うるさい人？」
「個人情報ってやつです。そんな小さな事言ってたら郵便も宅配便も届きゃしない。そう思いません？」
「まあそうですね。わかりました」絵美子は微笑んだ。男の人ってみんな少し批判的な面を持ってるんだなと思った。