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54、恋人はレディー・ボーイ

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目を瞑り、両手に力を込める。
__念じるんだ。強く意識する事によってシーケンスをコントロール出来る…
僕は天馬(テンマ)さんの言葉を反すうした。

すると__ 僕たちは小さな街角に佇んでいた。
小さな、というのはすべてのサイズがほんの少しずつ縮んでいるように思えたからだ。
その違和感はすぐ側にあったオレンジ色の扉のレバーハンドルを開けた時にハッキリした。
普通に通り抜けようとして、僕はドア枠の上に頭を思いきりぶつけたからだ。

「イッテ~!」
「大丈夫?」
志風音(シフォン)が心配そうに覗き込む。
「だ、だいじょーぶ、大丈夫」
フカフカの絨毯の上を歩いていき、ある扉の前で立ち止まった。
__1002。
部屋番号なのかな?
右手を見るとカードキーが一枚。
志風音が繋いだ左手をギュッと握ってくる。

「入る?」
「うん」
志風音の表情からは何も読み取れない。
僕はカードキーを差し込んだ。
__カチャ。

そこは小綺麗な部屋だった。標準的なサイズの。

アロマが漂い、見た事もない観葉植物があちこちに置いてあった。
ニッチには印象派のリトグラフが飾ってあり、センスの良い間接照明に照らされていた。

志風音の手をとって歩みを進めるとシーリングライトが勝手に明るくなった。
__今は昼間なんだろうか、夜なんだろうか?

志風音が指差した先に窓があった。

カーテンを開けると美しい山間の景色が目に飛び込んできた。
明け方なのか、山の樹々の間から白い煙りのようにモヤが立ち昇っては静かに流れていく。

志風音もそんな幻想的な光景に見惚れている風だった。

止まりそうな時間が怖くなった。

僕は振り返り、志風音をハグした。
ちょっぴり汗をかいているのか、志風音のシトラスの匂いの中にムスクの香りが混じっている気がした。
志風音の髪の匂いを肺いっぱいに吸い込み、細い首筋を甘噛みする。

__大好きだ。大好きだよ!

「あン… 斗夢…」

志風音が僕をギュッとする。
僕は志風音に口づけした。甘くとろけるようなキスだ。
互いに唇を、舌を吸い合い、抱きしめ合いながら身体中まさぐり合った。
互いの存在を、精神を確かめ合うかのように。
やがて愛撫はそれぞれの性感帯を探し当てた。

霧のように湧き起こる陶酔のさざ波が次第に大きなうねりに変わっていく。

僕たちは隣りの部屋に行き、クィーンサイズのフロアベッドに志風音をいざなった。
抜け感のあるヘッドボードには優雅な加熱式のアロマデュフューザーが鎮座していた。

「やっと二人きりになれた」
「うん」

「無口だね」
「今は言葉はいらないよ」

僕たちは横になり肘を傾けて向かい合った。

志風音の顔は直近にあって、彼女は、てゆーか彼は穴が開くほど僕を見つめていた。
小さくて、可愛い彼女。てゆーか、彼。

僕はそっと志風音のウエストに手をやった。
クロシェのニットボトムの肌触りを楽しみながら、時折いつの間にか置いてあったカクテルを舐めるように飲んだ。

「ボクにもひと口」
志風音が甘えた声を出す。

差し出されたぷっくらした唇にキスしながら、口の中のモヒートをちょっとずつ送り込む。

「美味しいね」
そう言って微笑む志風音の唇に再びキスする。
ホワイトラムとミントの芳香が二人の唾液と混じり合う。


__天国だ!!

__夢ならこのまま醒めないでくれ!!


クロシェ編みのショートパンツがとてもエロく感じ始めた。

「丸くて可愛いお尻だね」

「あーっ、エッチが始まった!」

「違うって」

「違わないでしょ。前がヘンになってるゾ」

男は正直だ。

「だってこんなの履いてるから」

「履いてるから?なに?」

「欲情しちゃう」

「ほらー!やっぱりィ!」

志風音はキャッキャと喜んだ。


僕は志風音ににじり寄り、静かに仰向けにした。
志風音はじっとしたまま目をトロンとさせている。
その胸に手を添えて鼓動を確かめるように手の位置を変えた。
志風音は男なのに胸が少し膨らんでいる。
子どもの頃から触っていたら人より大きくなったという。
フレンチスリーブから露出したお腹を撫でながら、形の良いおヘソに軽く触れる。

「やだ。くすぐったい!」

感じやすくなってるみたいだ。
僕はゆっくりと志風音に覆い被さった。


「ドキドキする」

「初めて会った時みたい」


「新鮮てコトだね!」

「志風音はいつも僕にとって鮮やかな存在だよ」

「うわー。オンナ慣れしてるぅ!」

「オトコ慣れ?」

「あー!傷ついたー!」

「うそ、嘘」

「ウソじゃないやん。男だもん。斗夢はやっぱりオンナが好きなんだ」


「志風音が好きなんだよ」

「知らない。オトコだけどねー」

僕は黙って短パンを脱ぎ、再び志風音に重なって身体をずらした。


「何してるの?」

「うん?いいコト」


志風音の股間と僕の股間が密着するように体勢を整えた。

「あン…」

「オトコ同士だとこんなコトも出来るからね」

僕は欲情したレギンスの前を志風音の股間に当ててこすり付けた。

「ヤーン!」
志風音は女の子っぽく顔を覆った。


「志風音はどうしてモッコリしてないの?」

「下に隠してるから」

「どーやって?」

「言わない」

たぶんテーピングしてるのだろう。まさか出たり引っ込んだりはしないはず。


「モッコリした方がいい?」

「どっちでもイイよ」僕は笑った。

「ちょっと待って」

パンツの紐をほどき、ガサゴソと手を入れて志風音は僕を見た。

「オトコになったw」


僕はもう一度、二人の股間と股間を合わせた。

大きくなった志風音がパンツ越しにわかった。
僕はそこにレギンスの下で硬くなったモノを押し当てた。

「ぁあ… なんかスゴぃ…」

「スゴいのが当たってる?」

「やだ。ハズイこと言わないで」

グリグリしているだけでとても気持ちイイ。
志風音もだんだん変わってきた。
僕の下で大きくなり、硬くなっていった。

男でも女でもいい。
いや、本当にそうだろうか。
女っぽい男の志風音が好きなのか、それとも今のようにアソコを膨らませた男らしい志風音が好きなのか。
女が好きとゆーのとはやっぱりちょっと違う気がする。


「なんかヘンタイみたい」

「そんなコトないよ。皆んなやってるよ」

「皆んなって?」

「恋人同士は皆んな」

「ボクは何者?たまに分からなくなる」

僕は自分が悩んじゃうと志風音も不安に駆られるのだと気付いた。


「志風音は、志風音だよ。僕の大切な恋人だよ」

「胸が膨らんでる男でも?」


「僕の恋人はレディー・ボーイなんだ」

「うふ」

志風音は照れ臭そうに笑った。とても嬉しそうに。

僕たちは硬くなったアソコをくっつけ合って、ディープ・キスを繰り返した。

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