VRハケン社員斗夢 1st.season〜バーチャル男子のエロスな日常〜

MIKAN🍊

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18、どっちのボクとKissしたい?

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その日の午後。
僕はいつも通り出荷エリアで汗を流す。
志風音シフォンが来るのを今か今かと待ちわびながら。
「斗夢さん!お疲れ様です!遅くなってすみません」
志風音は髪の生え際と額にびっしょり汗をかいていた。
「大丈夫だよ。こっちもやっと一区切り付いたとこだから」
僕はホッとした。ポーチから冷感スプレーを出して志風音の肩や背中にシュッとひと吹きしてやる。
それから自分にもシュッとひと吹き。
「汗拭いて。じきに涼しくなるからさ」
「ありがとうございます」
志風音は僕よりひと回り小さくて本当に華奢な身体つきをしてる。
それにイイ匂いがする。甘くて優しい。
「何か付けてる?」
「資生堂のリバージュていう香水です。わかりますか?」
「うん。イイ匂い。そんなのあったっけ?」
「もう廃盤なんです。初恋の匂いみたいでしょ。たまたまネトオクで見つけて。メモアールてのも柑橘系のイイ香りですよ。今度持って来ます。良かったら使ってみて下さい」
「え、いーよいーよ!」
「あ、じゃあこれ…」
ホットパンツのお尻のポケットから小瓶を取り出して自分の手首の内側に振りかける。
僕の手を取り手首の内側の筋と筋とを擦り合わせる。何かの儀式のように。
僕は静かに見守る。
「ほら!匂いが移ったでしょう?」
僕は自分の手首の匂いを嗅ぐ。
「うん。本当だ」
「ヒジやヒザの裏ならさりげなく。手首や耳の後ろとか脈打つ箇所に付けると強く香ります。体温や湿度によっても香り方が違うんです」
志風音の言葉の心地好さ。僕は仕事場に居る事をつい忘れてしまった。

小休止が終わり皆がドヤドヤと持ち場に戻ってきた。
「さあ、やろか」
「はい!」
手袋をはめ僕達はローラーコンベアの前に立つ。
フォークリフトが次々に荷物を運んでくる。
先頭者はパレットに山積みの荷物をローラーコンベアに流す。通称「流し」。
荷物には商品番号の他に配送コードが表示されていて、それを見て流れてきた荷物を手元に引き取り、作業台の上に仮置きする。通称「引き」。
台の上に乗っけられた荷物の配送コードを読み取り、配送地域ごとに並べたカゴ車にどんどん積んでいく。ここまでが通称「仕分け」の作業。
「仕分け」はカゴ車が一杯になったら空のカゴ車と交換する。
その繰り返し。
出荷予定の荷物が片付くまで仕分け作業は続く。
その後は撒き、検品、集約、荷揃えと続く。
決して楽な作業ではない。
僕達はよく働き、沢山お喋りをした。本来は必要最低限の会話で黙々とやるのが物流倉庫の流儀なんだけど。
僕は志風音と付かず離れずの距離を保ちつつ、彼の仕事ぶりを見ては様々なアドバイスを与えた。
こうすれば仕事がもっと早いとか、もっと楽に出来るとか。
こうすると手を挟んで危ないとか、腰に負担がかかるとか。
志風音は飲み込みが良く、やるべき事をすぐ理解してテキパキと作業をこなした。

ローラーコンベアの荷物が一旦落ち着いた。
志風音は汗を拭ってニコニコしている。
「年は幾つなの?大学生?」僕は手袋を脱いで訊いた。
「18です。斗夢さんは?」
「わー若いね!僕はハタチになったばっかし。一応学生だよ。ほとんど行ってないけど」
「ボクは小6から不登校で。それからずっと学校には…」
「じゃ同じだね」
「人前に出るのがダメで。本業は自分のサイトでゲームの攻略法とかやってるんです。多少は稼げるんですけど、もう少し必要なんでスポットで来てるんです」
「ふーん。そうなんだ。僕はブログやってるけどただの趣味だからナ。もっとサイトで儲かると良いのにね」
「家に籠もっててもたまには人との出会いが恋しくなるし。我儘ですよね。でも他人に迷惑かけずに生きたいんです。生活費が苦しい時はどんな事でも嫌がらずやろうと決めてます」
「エライねー。カノジョとか…いるの?」
「カノジョはいません。カレシは欲しいけど…」
「何処まで冗談?」僕は笑った。
「冗談じゃないですよ。ボクは斗夢さんみたいな人がカレシならイイなって思います」
僕は何て答えたら良いかわからない。
他人に聞かれてないか辺りを見回す。
困ったな。僕はイヤな奴かも知れない。

「斗夢さんはフードコートでどうしてボクを見てたんですか?興味本位?」
「えっとー」
「ボクみたいなのが物珍しいから?」
「いや、そんなんじゃないよ。そんな事ない」
「ううん。そうですよ。皆んな最初はそう。ボクが男か女か賭けてたんじゃないです?」
「そ、そんな事しないよ」
「斗夢さん。まだ疑ってるでしょ、ボクの事」
「何をさ。何を疑うの」
「ボクがどっちだったら斗夢さんは喜ぶんでしょうか」
「どっちだったらって…それは」
「正直に言って下さい。斗夢さんがKissしたいとしたら男のボク?女のボク?」
「ちょっと待ってよ!」
「Kissしたいんでしょうボクと。始めからずっとKissしたいって目が言ってる」
「そんな…」
「ごめんなさい。でも知りたいんです。Kissしたいのは男のボク?女のボク?どっちですか?」
「わからない。本当にわからないよ…」
志風音は表情を緩めた。
「Hエリアに行けばハッキリしますよ」
何処でも行っちゃう。君はとても可愛い過ぎる。
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