27 / 32
27.恋するコール・ハーン
しおりを挟む
笑うと白い綺麗な歯が並んだ。日に焼けた顔に白い歯。
洋介は人懐っこい笑みを持っている。
「お昼をご一緒に如何ですか」
ちょっと照れながら洋介は誘った。
「いえ、何か用事がなければの話しですけど」
カレンはすっかりリラックスしていた。
「ええ。是非」快く承諾した。
「よかった。朝から何も食べてないんですよ。美味しいものを食べに行きましょう」
「宜しくお願いします」
カレンは正面の車寄せに停めてあったポルシェのSUVの方を見た。色はブラック。
「先生のセカンドカーですよね」
「え、ああ。よくわかりましたね」
普段洋介は白いBMWに乗っている。
「部屋の窓からたまに…」
「そうでしたか。何だかくすぐったいな、カレンさんが見ていたなんて。今朝、葉山まで行って帰ってきたところなんですよ。知人が急病になってしまいましてね」
「往診もなさるのですか?」
「いや、特別ですよ。サメを置いて行った奴でね。早朝別荘からいきなり電話してきて…」
洋介は先を続けにくそうに言葉を詰まらせた。
「どうかしたんですか」
「いや、その。患者に対するアレです」
「守秘義務ですね」
「そうなんです。でもこれが傑作でしてね。ああ、言いたいなあ。でも言えない」
今度は子どものように「はははっ!」と笑った。
「無理なさらないで下さい」
「ははは、はい。そうします。それじゃあ後で部屋に迎えに行きますよ。水着の用意をしておいて下さい」
「水着、ですか?」
「ひと泳ぎしましょう。良いでしょう、プライベートビーチがあるんです」
エントランスの向こうは燦々と夏の日差しが照りつけている。
「わかりました」カレンは仕方なく微笑み返した。洋介の笑顔にはどうも弱いようだった。
走り去るSUVに向かってカレンは小さく手を振った。
部屋に戻りWindowsを立ち上げた。
パスワードを入力して〈マイ・ページ〉へ飛ぶ。久々にブログを更新したくなった。
ブログ名は『カレンの部屋/偽りのKiss』。
書庫には〈日記〉と〈小説〉があった。
〈日記〉にステキな男性に食事に誘われたと書いた。水着を持ってくるようにと言われた事も。それからどんな水着にするか迷っているとも。
書いているうちに本当に気持ちが舞い上がってきた。
〈小説〉を見るとお初の人からコメントが入っているのを見つけた。以前にも『イイね!』を何度かしてくれた人だった。
「パメラさん。いつも読んでいます。楽しみにしていますのでこれからも頑張って下さい」
〈パメラ〉とはカレンのハンドルネーム、自由過ぎるほど自由なカレンの仮の姿だった。
「ユーマ、か…」
ふふん…とカレンは微笑んだ。
良い事が起こりそうな、そんな予感がした。
ユーマはちょっと気になる人物だった。投稿される記事は小説がほとんど。稀に詩を書いていた。
エッチな内容のものが多かったけれどじっくり読んでみると面白かった。何よりも読みやすいのが良かった。
プロフィールは非公開で本人に関わる情報は一切なかった。だから性別すら判別できない。
おまけにコメント欄もすべて閉じられていた。
たぶん男性だろうとカレンは思っている。ちょっと変わり者の。
いつも綺麗な裸の女の写真を載せていた。
溜まっていたリコメをおおかた終わらせた頃、洋介が迎えにやって来た。
カレンはデニムのショートパンツに白い大人キレイなクルーネックカットソーを選んだ。
洋介のスタイルに合わせたつもりだった。
思った通り洋介はさっきと同じ格好をしていた。
洋介はカレンのショートパンツ姿をみて口笛を吹いた。
足元は衝動買いしたコールハーンのシルバーのミュール。
スゴく可愛いヤツ。
とても気に入っていてずっと履く機会を待っていた。
まさかこんなに早く履けるなんて。
「じゃ行きましょうか」
「はい」
外に出るとギラギラした太陽の光りが二人を包み込んだ。
洋介は人懐っこい笑みを持っている。
「お昼をご一緒に如何ですか」
ちょっと照れながら洋介は誘った。
「いえ、何か用事がなければの話しですけど」
カレンはすっかりリラックスしていた。
「ええ。是非」快く承諾した。
「よかった。朝から何も食べてないんですよ。美味しいものを食べに行きましょう」
「宜しくお願いします」
カレンは正面の車寄せに停めてあったポルシェのSUVの方を見た。色はブラック。
「先生のセカンドカーですよね」
「え、ああ。よくわかりましたね」
普段洋介は白いBMWに乗っている。
「部屋の窓からたまに…」
「そうでしたか。何だかくすぐったいな、カレンさんが見ていたなんて。今朝、葉山まで行って帰ってきたところなんですよ。知人が急病になってしまいましてね」
「往診もなさるのですか?」
「いや、特別ですよ。サメを置いて行った奴でね。早朝別荘からいきなり電話してきて…」
洋介は先を続けにくそうに言葉を詰まらせた。
「どうかしたんですか」
「いや、その。患者に対するアレです」
「守秘義務ですね」
「そうなんです。でもこれが傑作でしてね。ああ、言いたいなあ。でも言えない」
今度は子どものように「はははっ!」と笑った。
「無理なさらないで下さい」
「ははは、はい。そうします。それじゃあ後で部屋に迎えに行きますよ。水着の用意をしておいて下さい」
「水着、ですか?」
「ひと泳ぎしましょう。良いでしょう、プライベートビーチがあるんです」
エントランスの向こうは燦々と夏の日差しが照りつけている。
「わかりました」カレンは仕方なく微笑み返した。洋介の笑顔にはどうも弱いようだった。
走り去るSUVに向かってカレンは小さく手を振った。
部屋に戻りWindowsを立ち上げた。
パスワードを入力して〈マイ・ページ〉へ飛ぶ。久々にブログを更新したくなった。
ブログ名は『カレンの部屋/偽りのKiss』。
書庫には〈日記〉と〈小説〉があった。
〈日記〉にステキな男性に食事に誘われたと書いた。水着を持ってくるようにと言われた事も。それからどんな水着にするか迷っているとも。
書いているうちに本当に気持ちが舞い上がってきた。
〈小説〉を見るとお初の人からコメントが入っているのを見つけた。以前にも『イイね!』を何度かしてくれた人だった。
「パメラさん。いつも読んでいます。楽しみにしていますのでこれからも頑張って下さい」
〈パメラ〉とはカレンのハンドルネーム、自由過ぎるほど自由なカレンの仮の姿だった。
「ユーマ、か…」
ふふん…とカレンは微笑んだ。
良い事が起こりそうな、そんな予感がした。
ユーマはちょっと気になる人物だった。投稿される記事は小説がほとんど。稀に詩を書いていた。
エッチな内容のものが多かったけれどじっくり読んでみると面白かった。何よりも読みやすいのが良かった。
プロフィールは非公開で本人に関わる情報は一切なかった。だから性別すら判別できない。
おまけにコメント欄もすべて閉じられていた。
たぶん男性だろうとカレンは思っている。ちょっと変わり者の。
いつも綺麗な裸の女の写真を載せていた。
溜まっていたリコメをおおかた終わらせた頃、洋介が迎えにやって来た。
カレンはデニムのショートパンツに白い大人キレイなクルーネックカットソーを選んだ。
洋介のスタイルに合わせたつもりだった。
思った通り洋介はさっきと同じ格好をしていた。
洋介はカレンのショートパンツ姿をみて口笛を吹いた。
足元は衝動買いしたコールハーンのシルバーのミュール。
スゴく可愛いヤツ。
とても気に入っていてずっと履く機会を待っていた。
まさかこんなに早く履けるなんて。
「じゃ行きましょうか」
「はい」
外に出るとギラギラした太陽の光りが二人を包み込んだ。
0
お気に入りに追加
14
あなたにおすすめの小説
とある高校の淫らで背徳的な日常
神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。
クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。
後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。
ノクターンとかにもある
お気に入りをしてくれると喜ぶ。
感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。
してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。
【完結】【R18百合】会社のゆるふわ後輩女子に抱かれました
千鶴田ルト
恋愛
本編完結済み。細々と特別編を書いていくかもしれません。
レズビアンの月岡美波が起きると、会社の後輩女子の桜庭ハルナと共にベッドで寝ていた。
一体何があったのか? 桜庭ハルナはどういうつもりなのか? 月岡美波はどんな選択をするのか?
おすすめシチュエーション
・後輩に振り回される先輩
・先輩が大好きな後輩
続きは「会社のシゴデキ先輩女子と付き合っています」にて掲載しています。
だいぶ毛色が変わるのでシーズン2として別作品で登録することにしました。
読んでやってくれると幸いです。
「会社のシゴデキ先輩女子と付き合っています」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/759377035/615873195
※タイトル画像はAI生成です
完結【R―18】様々な情事 短編集
秋刀魚妹子
恋愛
本作品は、過度な性的描写が有ります。 というか、性的描写しか有りません。
タイトルのお品書きにて、シチュエーションとジャンルが分かります。
好みで無いシチュエーションやジャンルを踏まないようご注意下さい。
基本的に、短編集なので登場人物やストーリーは繋がっておりません。
同じ名前、同じ容姿でも関係無い場合があります。
※ このキャラの情事が読みたいと要望の感想を頂いた場合は、同じキャラが登場する可能性があります。
※ 更新は不定期です。
それでは、楽しんで頂けたら幸いです。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
ミックスド★バス~湯けむりマッサージは至福のとき
taki
恋愛
【R18】恋人同士となった入浴剤開発者の温子と営業部の水川。
温子の疲れを癒そうと、水川が温泉旅行を提案。温泉地での水川からのマッサージに、温子は身も心も蕩けて……❤︎
ミックスド★バスの第4弾です。
後輩に食べられる大学生の話
神谷 愛
恋愛
部活に入ってきた少し様子のおかしい後輩に吞み込まれた先輩の話。 可愛くて、気が利いて、そして少し愛が重い気のする、そんな後輩との日常の始まりの日々。
ノクターンノベルズにもある
https://www.alphapolis.co.jp/novel/946234166/353680612 前作
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる