愛のテクニシャン カレン

MIKAN🍊

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27.恋するコール・ハーン

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笑うと白い綺麗な歯が並んだ。日に焼けた顔に白い歯。
洋介は人懐っこい笑みを持っている。
「お昼をご一緒に如何ですか」
ちょっと照れながら洋介は誘った。
「いえ、何か用事がなければの話しですけど」
カレンはすっかりリラックスしていた。
「ええ。是非」快く承諾した。
「よかった。朝から何も食べてないんですよ。美味しいものを食べに行きましょう」

「宜しくお願いします」
カレンは正面の車寄せに停めてあったポルシェのSUVの方を見た。色はブラック。
「先生のセカンドカーですよね」
「え、ああ。よくわかりましたね」
普段洋介は白いBMWに乗っている。
「部屋の窓からたまに…」
「そうでしたか。何だかくすぐったいな、カレンさんが見ていたなんて。今朝、葉山まで行って帰ってきたところなんですよ。知人が急病になってしまいましてね」
「往診もなさるのですか?」
「いや、特別ですよ。サメを置いて行った奴でね。早朝別荘からいきなり電話してきて…」
洋介は先を続けにくそうに言葉を詰まらせた。
「どうかしたんですか」
「いや、その。患者に対するアレです」
「守秘義務ですね」
「そうなんです。でもこれが傑作でしてね。ああ、言いたいなあ。でも言えない」
今度は子どものように「はははっ!」と笑った。
「無理なさらないで下さい」
「ははは、はい。そうします。それじゃあ後で部屋に迎えに行きますよ。水着の用意をしておいて下さい」
「水着、ですか?」
「ひと泳ぎしましょう。良いでしょう、プライベートビーチがあるんです」

エントランスの向こうは燦々と夏の日差しが照りつけている。
「わかりました」カレンは仕方なく微笑み返した。洋介の笑顔にはどうも弱いようだった。
走り去るSUVに向かってカレンは小さく手を振った。


部屋に戻りWindowsを立ち上げた。
パスワードを入力して〈マイ・ページ〉へ飛ぶ。久々にブログを更新したくなった。
ブログ名は『カレンの部屋/偽りのKiss』。
書庫には〈日記〉と〈小説〉があった。
〈日記〉にステキな男性に食事に誘われたと書いた。水着を持ってくるようにと言われた事も。それからどんな水着にするか迷っているとも。
書いているうちに本当に気持ちが舞い上がってきた。
〈小説〉を見るとお初の人からコメントが入っているのを見つけた。以前にも『イイね!』を何度かしてくれた人だった。

「パメラさん。いつも読んでいます。楽しみにしていますのでこれからも頑張って下さい」

〈パメラ〉とはカレンのハンドルネーム、自由過ぎるほど自由なカレンの仮の姿だった。

「ユーマ、か…」
ふふん…とカレンは微笑んだ。
良い事が起こりそうな、そんな予感がした。
ユーマはちょっと気になる人物だった。投稿される記事は小説がほとんど。稀に詩を書いていた。
エッチな内容のものが多かったけれどじっくり読んでみると面白かった。何よりも読みやすいのが良かった。
プロフィールは非公開で本人に関わる情報は一切なかった。だから性別すら判別できない。
おまけにコメント欄もすべて閉じられていた。
たぶん男性だろうとカレンは思っている。ちょっと変わり者の。
いつも綺麗な裸の女の写真を載せていた。

溜まっていたリコメをおおかた終わらせた頃、洋介が迎えにやって来た。

カレンはデニムのショートパンツに白い大人キレイなクルーネックカットソーを選んだ。
洋介のスタイルに合わせたつもりだった。
思った通り洋介はさっきと同じ格好をしていた。
洋介はカレンのショートパンツ姿をみて口笛を吹いた。

足元は衝動買いしたコールハーンのシルバーのミュール。
スゴく可愛いヤツ。
とても気に入っていてずっと履く機会を待っていた。
まさかこんなに早く履けるなんて。

「じゃ行きましょうか」
「はい」
外に出るとギラギラした太陽の光りが二人を包み込んだ。

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