彼氏が親友と浮気して結婚したいというので、得意の氷魔法で冷徹な復讐をすることにした。

和泉鷹央

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第七章 探知魔導

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「……それじゃあ、これからどうするか考えるか。二級魔導師としてはどうする気なんだ?」
「二級ってつけるところが、なんとなく意地の悪さを感じるわねー」
「気のせいだ、気のせい。俺は元々意地が悪いのさ」
「ドラゴンを目の前にして敢え無く逃亡したんじゃ、威厳も何もあったもんじゃないわよ」
「そうだな。だから、二級、なんて付けてるんだ」
「本当に意地悪……」
「褒め言葉と受け取っておく」

 気心の知れた友人のように、わたしとイデアはそう言い合い、そして笑いあった。
 屈託のない笑顔。
 そんなものを見たのはこの半年の間で何回あっただろう。
 彼氏はいつも自分のことばかり。
 わたしに気を使っているふりをして自分が不利にならないように、賢く立ち回っていたあの人。
 頭の中が一周してある程度、恋愛に対する熱が冷めてくると――あまりいい話ではないけど相手の悪い所も見えてしまう。
 しばらく恋愛はしたくなくて、半年前のように友人達と笑いあえる日々がもう一度帰ってきたらと、望んでいた。
 
「それにしても本当、奇跡よね」
「何が?」
「ドラゴンなんて脅威を目の前にして、あなたはわたしを抱きかかえて、こんな上の階層まで一気に逃げてくれて――重くなかった?」
「……おいおいおいおい、女性にそんなこと言えないだろう」
「そう。紳士なのね」
「普通だよ、普通。あんたの彼氏だってそんなこと言わなかったろ?」
「……」

 一瞬の沈黙。
 言われないどころか、彼はたかが二階の寝室にわたしを運ぶだけで、息切れをしていた。
 あの時は自分の重さが――同年代の女性達よりも頭一つ大きいこの体格が彼を苦しめたのだと……思っていた。

「おいっ」
「――はいっ!?」
「何かあったのか」
「へ?」
「アルフリーダ、探知魔導になにか反応があったのか」
「あ……、ううん。いえ、ないわ……」
「ないのか。黙り込んだからてっきり何か反応があったものかと思ったんだよ」
「残念だけど――探知魔導で分かることは頭数くらいだから。あとはその端末に全部現れる」
「そういうこと、か。なるほど――」

 わたしの沈黙がイデアではわからない魔導によるものではないことを知り、彼はふん? と顔を傾けた。
 四ヶ月ほどまえ。
 ラルクと知り合って間もない頃だ。
 恋人同士となり、互いに甘い時間を過ごすことができた最初の頃。
 その時の記憶を掘り起こしてうなだれていたなんて、恥ずかしくて言えるはずがない。
 わたしのそんな素振りを察したのか、イゼアはさっさと話題を切り替えてくれた。

「とりあえず、あれだな。アルフリーダのおじいさんがこの街の管理をしていた時に、同じようなことがあったかもしれん。その
資料をまず探すべきか。それとも俺はよく知らないが、市役所にでも行けば過去の資料なんかはあるのかね?」
「どうかな……。市役所っていうか、教会がその役割を果たしてるからそっちが先、かな。でもドラゴンの報告なんてしたら……」

 はあ、と大きなため息を一つ。
 わたしの二つ名が泣きますね、とそんな嫌味を言われるような気がした。
 誰にって?
 教会の司祭様に。
 歴史ある青の月の女神フォンティーヌを奉る、フォンティーヌ教会はなんというか。
 こちらも歴史ある魔導師とはいろいろな意味で仲が悪いのだ。

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