NTRするなら、お姉ちゃんより私の方がいいですよ、先輩?

和泉鷹央

文字の大きさ
上 下
42 / 66
第四章 希望のない未来

38

しおりを挟む
 教科書を開いて、という教師の声が室内に響きわたる。
 その教師は四十代の男性教諭で、世界史の授業にふさわしく、落ち着いた高めのよく通る声で授業を始めた。

 季美は右手前に置いてあるタブレットの側面をタップする。
 すると画面が消えて真っ黒な背景へと戻った。
 そこに認めることが出来た恋人の様を目にして、彼女は「……っ」と劣情にもにた声を瞬間的に発した。

 後ろに座る彼氏の前田乃蒼は、何食わぬ顔で当たり前のようにこちらを見ると、くいっとあごを上にやり合図してくる。
 まるで、季美が見ていることを知っているかのような、仕草だった。

「うっ‥‥‥」

 それが指示するところの意味を季美は知っている。
 もちろん、周りのグループの仲間たちも‥‥‥知っている。
 瑠璃覇や輝波出が、「ちょっと、まじ?」「あーあ、カワイそー」「季美、やるしかなくねー? 乃蒼怖えーし」
 などと野次が飛んできた。

 無責任にもほど近い、周囲からの圧力が季美の耳奥に押し込まれてくる。
 やらなくちゃ、このグループには置いては貰えない。
 断れば、無視が待っている。周りの全員がそうするようになるのだ。例え仲良くしたくても、できなくなってしまう。

 それは一重に、グループの中心人物である前田乃蒼が絶対的な権限を握っているのと、彼を怖がってみんな反抗しようとしなかったからだ。
 前田乃蒼は季美たちの住む市内ではなく、市街の別の街から通っている。

 そこは県内でもあまりよくない噂の絶えない地域で、乃蒼もまた同様に中学時代から喧嘩や暴走族の溜まり場にいたり、多くの女と浮名を流したりと、悪事の数々を暴いていけば十指では足りないだろうと噂される少年だった。
 この学校は乃蒼にとって真面目に過ごすための場所ではなく、社会に無事に出るための切符を手に入れる場所に過ぎなかった。

 これまでバレないように多くの悪事を画策して実行してきたワルにとって、そこそこ憂さ晴らしする程度の小さな悪事と、それを実行するための仲間と、自分をなんでも肯定するような暴力に弱い女を手に入れることは、空気を吸うことのように当たり前に成し遂げられるものだと彼に思わせていた。

 仲間は手に入れた。
 小遣いを得るための方法も、一年の時からコツコツと積み上げてきた。
 あとは‥‥‥従順な女だ。
 暴力とそれが持つ圧倒的な何かに魅力を感じ、自分もその側にいるだけで安心感を感じるような、どうしようもないバカ女。
 それが、前田乃蒼にとっての、槍塚季美だった。

「おいっ!」

 教師に聞こえないように身を乗り出して、そっとささやく。
 季美はびくっと背筋をまっすぐにし、両肩を胸元に引き寄せて、跳ねていた。

「や、やる‥‥‥の?」
「そのために、しただろ? さっき」

 うん、とコクンと肯定するように季美はうなずく。
 確かに、食堂のあのときに、乃蒼の指先は季美の股のあいだに侵入していた。 
 まだ慣れないあの感触のざらついた卵型の小さなおもちゃを、するりっと股を開いて受け入れたのは季美自身の身体だった。

 そのことを思い出すと、いまでも顔が上気して赤面してしまう。
 命じられていること? いや、乃蒼からすれば面白いからやろうぜ、という提案を頭の中で繰り返し考えると、即座に顔から血の気が引いていく。

しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

昔義妹だった女の子が通い妻になって矯正してくる件

マサタカ
青春
 俺には昔、義妹がいた。仲が良くて、目に入れても痛くないくらいのかわいい女の子だった。 あれから数年経って大学生になった俺は友人・先輩と楽しく過ごし、それなりに充実した日々を送ってる。   そんなある日、偶然元義妹と再会してしまう。 「久しぶりですね、兄さん」 義妹は見た目や性格、何より俺への態度。全てが変わってしまっていた。そして、俺の生活が爛れてるって言って押しかけて来るようになってしまい・・・・・・。  ただでさえ再会したことと変わってしまったこと、そして過去にあったことで接し方に困っているのに成長した元義妹にドギマギさせられてるのに。 「矯正します」 「それがなにか関係あります? 今のあなたと」  冷たい視線は俺の過去を思い出させて、罪悪感を募らせていく。それでも、義妹とまた会えて嬉しくて。    今の俺たちの関係って義兄弟? それとも元家族? 赤の他人? ノベルアッププラスでも公開。

覚えたての催眠術で幼馴染(悔しいが美少女)の弱味を握ろうとしたら俺のことを好きだとカミングアウトされたのだが、この後どうしたらいい?

みずがめ
恋愛
覚えたての催眠術を幼馴染で試してみた。結果は大成功。催眠術にかかった幼馴染は俺の言うことをなんでも聞くようになった。 普段からわがままな幼馴染の従順な姿に、ある考えが思いつく。 「そうだ、弱味を聞き出そう」 弱点を知れば俺の前で好き勝手なことをされずに済む。催眠術の力で口を割らせようとしたのだが。 「あたしの好きな人は、マーくん……」 幼馴染がカミングアウトしたのは俺の名前だった。 よく見れば美少女となっていた幼馴染からの告白。俺は一体どうすればいいんだ?

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

幼馴染が家出したので、僕と同居生活することになったのだが。

四乃森ゆいな
青春
とある事情で一人暮らしをしている僕──和泉湊はある日、幼馴染でクラスメイト、更には『女神様』と崇められている美少女、真城美桜を拾うことに……? どうやら何か事情があるらしく、頑なに喋ろうとしない美桜。普段は無愛想で、人との距離感が異常に遠い彼女だが、何故か僕にだけは世話焼きになり……挙句には、 「私と同棲してください!」 「要求が増えてますよ!」 意味のわからない同棲宣言をされてしまう。 とりあえず同居するという形で、居候することになった美桜は、家事から僕の宿題を見たりと、高校生らしい生活をしていくこととなる。 中学生の頃から疎遠気味だったために、空いていた互いの時間が徐々に埋まっていき、お互いに知らない自分を曝け出していく中──女神様は何でもない『日常』を、僕の隣で歩んでいく。 無愛想だけど僕にだけ本性をみせる女神様 × ワケあり陰キャぼっちの幼馴染が送る、半同棲な同居生活ラブコメ。

女豹の恩讐『死闘!兄と妹。禁断のシュートマッチ』

コバひろ
大衆娯楽
前作 “雌蛇の罠『異性異種格闘技戦』男と女、宿命のシュートマッチ” (全20話)の続編。 https://www.alphapolis.co.jp/novel/329235482/129667563/episode/6150211 男子キックボクサーを倒したNOZOMIのその後は? そんな女子格闘家NOZOMIに敗れ命まで落とした父の仇を討つべく、兄と娘の青春、家族愛。 格闘技を通して、ジェンダーフリー、ジェンダーレスとは?を描きたいと思います。

鷹鷲高校執事科

三石成
青春
経済社会が崩壊した後に、貴族制度が生まれた近未来。 東京都内に広大な敷地を持つ全寮制の鷹鷲高校には、貴族の子息が所属する帝王科と、そんな貴族に仕える、優秀な執事を育成するための執事科が設立されている。 物語の中心となるのは、鷹鷲高校男子部の三年生。 各々に悩みや望みを抱えた彼らは、高校三年生という貴重な一年間で、学校の行事や事件を通して、生涯の主人と執事を見つけていく。 表紙イラスト:燈実 黙(@off_the_lamp)

処理中です...