NTRするなら、お姉ちゃんより私の方がいいですよ、先輩?

和泉鷹央

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第二章 そして一年が過ぎ‥‥‥

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 簡潔に言うと、唇を奪われた。
 無理やり、顔をしっかりと抱え込まれて、視界がぼやけそうになるくらい顔が近づいてきて、そして―ーキスをされた。


 軽く唇を摂食するようなものではなく。
 深く喉奥に相手の舌が侵入してくるような、ディープキス。

 舌の上を這い、左から右へと、右から左へとそれぞれ上下の歯をまんべんなく、舌先で舐めとってから、舌を絡ませてくる。
 吸いだされて‥‥‥かぶり、とやられた。

 姉のときのように血はでなかった。
 でも、やり口はおんなじだ。
 まさしく狂気。

 槍塚姉妹は、名前の通り、ヤリ過ぎなんじゃなのかと思わせる程に、牧那は本日も、強烈に平常稼働していた。


 
 牧那の側を通ったら、何か悪さをされるんじゃないかなと警戒しながら、抱介は昨日と同じ場所に着席した。
 いたずらはしてこなかったけれど、彼女が「探してる本が見つからないんですよ」とぼやいていた。

「あーあ、あの本があったら今日一日もっと楽しく過ごせるのになー」

 なんてうそぶく彼女の口ぶりは、明らかにこっちを探っているようだった。
 静かにするようにと注意を受けていたので、とりあえず無視をする。

「ねー、先輩ー?」

 やっぱり小さく問いかけてきた。
 関わるとやっかいなので、言葉を聞き流して、知らん顔をした。

「構ってくださいよー」

 と、実害のありそうな発言をする。

「めんどくさい奴だな、槍塚さん。頼むから静かにしてくれないか。俺がまたしかられる」
 というと、フフンっと彼女は口角を上げて、にやりとする。

「言うこと聞いてくれたら、静かにしますよ」
「くっ‥‥‥」

 男と女がひとつの場所にいて、男の方が年上で、さらに一度注意を受けていたとしたら。
 次にしかられる際に、最初に槍玉にあがるのは抱介の方だ。

 槍塚ならぬ、槍玉。
 なんて理不尽な世の中なんだろうなーと、ぼやき、観念する。

「探すまで付き合ったら、静かにしてくれるのか」
「その本を読み終えるまでは。約束します」
「……」

 それが薄い本とか、絵本とか、ライトノベルとかで。
 彼女が読み終えるまでに早くて一時間。遅くても午前中で終わりそうな気がする。
 その後、二巻目とか続巻を探しに出てくれたらいいのだけれど。

「どんな本なんだ?」
 ちょっと理解を示してやったら、牧那は遊んでくれるとわかった忠犬のように、嬉しそうな顔をする。

 犬‥‥‥牧那犬。
 一瞬、牧那の頭頂部とお尻から、犬耳としっぽが映えて見えたような気がした。
 忠犬なら言うことはない。
 だけど、こいつは間違いなく駄犬の部類だ。

 それも構って欲しいときにだけやってきて、満足したらどっかに消えていってしまう。
 単独で野良。まさしく、野生の駄犬。

 まあ、どうでもいいか。
 牧那が笑顔で立ち上がったので、抱介もその後に続く。
 行き着いた先はやはり、ライトノベルの棚。

 てっきり女性の読むような恋愛系かな? と思ったら、違った。

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