NTRするなら、お姉ちゃんより私の方がいいですよ、先輩?

和泉鷹央

文字の大きさ
上 下
16 / 66
第一章 出会い

12

しおりを挟む


「抱いたよねえ? まだ入ってるし。元気」
「……どうしろと?」
「ね、気持ちよくなかった? わたしは良かったよ?」

 季美の目が細くなる。
 半分ほどに細められる。
 飢えた獣が獲物を捕まえて食べることを決めた時のような、そんな冷たい目だった。
 ぞわり、と抱介の背筋を恐怖心が走り抜ける。

 ‥‥‥ヤバイ。
 恐怖心はなにも肉体的な物だけではなくて、精神的な、社会的な楔となってしまい、永遠に季美という名前の港から出してもらえないような。
 抱介という名前のボートはずっとその波止場に係留されたまま、放置されてしまいそうな。

 船の上には抱介だけが孤独にいて季美を待っている。
 でも季美は彼を抱擁して抱き締めたまま、どこにも行かせてくれない。
 彼女はどこにでもすきなだけ外出して、どんなやつだって遠慮なしに引き連れてさっさと手放すのに。
 自分だけはそうさせてもらえない。

「俺も‥‥‥」
「俺もー? なにかなー? 女の子がっかりさせたりしないよねー?」

 答えはもう決まってるでしょ?
 季美は目でそう告げていた。
 それ以外の答えは認めないとそんな目だった。

「分からないよ。初めてだ」

 抱介はそう言い、目を逸らした。
 同時に思い出す。
 始めにあった頃、とはいってもあれから数週間しか経過してないけれど。

 季美、お前。
 中古品になったのか?
 そう問いかけようとして、それは言葉にならない。

 抱介の喉の奥に詰まってしまったようになり、出てこなかった。

「へえ……そっか」
「お前だって」
「私? まあ……うん。良かったからいいじゃない、ね?」

 うまくごまかされたような気がする。

「大好きだよ、抱介」

 抱き締められた。
 季美の豊満な胸が迫ってきて、その片方に抱介は引き寄せられる。
 突起のさきに吸い付くようにして歯を軽く立てたら、くぐもった声がした。

「離れないでね」
「……」

 もう一度、強く吸いそれから歯噛みしてやる。

「ッ‥‥‥!」

 季美が切なさうな声を上げた。
 見ると目を閉じてその感触を味わっていた。

 もう駄目なんだろうな。
 俺はまともじゃなくなったんだな。 
 と、抱介は恨みを込めて大きく口を開くと、牙を突き立てる。

 それは血がにじみでるようなものではなかったけれど―ー季美が痛みを耐えようとする顔をしたから見上げたら、少しだけ心が癒される気がした。

 ある意味、特別で。
 ある意味、どうでもいい。

 そんな存在に堕とされてしまった気がして、少年はいま最高の快楽と心の中で彼女を勝ち取ったという余韻にひたるべきはずなのに、それができないでいた。
 ‥‥‥ここに来たのは人生で最高の失敗になるかもしれない。

 最大じゃなく、最低でもなく、最高の失敗。

 ここから先は、どんなに足掻いても――季美が自分の心から消えることはない。
 そう心のどこかで実感できた。
 
しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

昔義妹だった女の子が通い妻になって矯正してくる件

マサタカ
青春
 俺には昔、義妹がいた。仲が良くて、目に入れても痛くないくらいのかわいい女の子だった。 あれから数年経って大学生になった俺は友人・先輩と楽しく過ごし、それなりに充実した日々を送ってる。   そんなある日、偶然元義妹と再会してしまう。 「久しぶりですね、兄さん」 義妹は見た目や性格、何より俺への態度。全てが変わってしまっていた。そして、俺の生活が爛れてるって言って押しかけて来るようになってしまい・・・・・・。  ただでさえ再会したことと変わってしまったこと、そして過去にあったことで接し方に困っているのに成長した元義妹にドギマギさせられてるのに。 「矯正します」 「それがなにか関係あります? 今のあなたと」  冷たい視線は俺の過去を思い出させて、罪悪感を募らせていく。それでも、義妹とまた会えて嬉しくて。    今の俺たちの関係って義兄弟? それとも元家族? 赤の他人? ノベルアッププラスでも公開。

覚えたての催眠術で幼馴染(悔しいが美少女)の弱味を握ろうとしたら俺のことを好きだとカミングアウトされたのだが、この後どうしたらいい?

みずがめ
恋愛
覚えたての催眠術を幼馴染で試してみた。結果は大成功。催眠術にかかった幼馴染は俺の言うことをなんでも聞くようになった。 普段からわがままな幼馴染の従順な姿に、ある考えが思いつく。 「そうだ、弱味を聞き出そう」 弱点を知れば俺の前で好き勝手なことをされずに済む。催眠術の力で口を割らせようとしたのだが。 「あたしの好きな人は、マーくん……」 幼馴染がカミングアウトしたのは俺の名前だった。 よく見れば美少女となっていた幼馴染からの告白。俺は一体どうすればいいんだ?

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

幼馴染が家出したので、僕と同居生活することになったのだが。

四乃森ゆいな
青春
とある事情で一人暮らしをしている僕──和泉湊はある日、幼馴染でクラスメイト、更には『女神様』と崇められている美少女、真城美桜を拾うことに……? どうやら何か事情があるらしく、頑なに喋ろうとしない美桜。普段は無愛想で、人との距離感が異常に遠い彼女だが、何故か僕にだけは世話焼きになり……挙句には、 「私と同棲してください!」 「要求が増えてますよ!」 意味のわからない同棲宣言をされてしまう。 とりあえず同居するという形で、居候することになった美桜は、家事から僕の宿題を見たりと、高校生らしい生活をしていくこととなる。 中学生の頃から疎遠気味だったために、空いていた互いの時間が徐々に埋まっていき、お互いに知らない自分を曝け出していく中──女神様は何でもない『日常』を、僕の隣で歩んでいく。 無愛想だけど僕にだけ本性をみせる女神様 × ワケあり陰キャぼっちの幼馴染が送る、半同棲な同居生活ラブコメ。

女豹の恩讐『死闘!兄と妹。禁断のシュートマッチ』

コバひろ
大衆娯楽
前作 “雌蛇の罠『異性異種格闘技戦』男と女、宿命のシュートマッチ” (全20話)の続編。 https://www.alphapolis.co.jp/novel/329235482/129667563/episode/6150211 男子キックボクサーを倒したNOZOMIのその後は? そんな女子格闘家NOZOMIに敗れ命まで落とした父の仇を討つべく、兄と娘の青春、家族愛。 格闘技を通して、ジェンダーフリー、ジェンダーレスとは?を描きたいと思います。

鷹鷲高校執事科

三石成
青春
経済社会が崩壊した後に、貴族制度が生まれた近未来。 東京都内に広大な敷地を持つ全寮制の鷹鷲高校には、貴族の子息が所属する帝王科と、そんな貴族に仕える、優秀な執事を育成するための執事科が設立されている。 物語の中心となるのは、鷹鷲高校男子部の三年生。 各々に悩みや望みを抱えた彼らは、高校三年生という貴重な一年間で、学校の行事や事件を通して、生涯の主人と執事を見つけていく。 表紙イラスト:燈実 黙(@off_the_lamp)

処理中です...