認めてくれる人

 ベッキーは認めて欲しかった。
 自分の努力を、頑張りを、出したその結果を――ただ、認めて欲しかった。

 聖紋章術というものがある。
 それはどのようなものであっても、聖なる加護を附与できる附与術の一種であり、使う人間は紋章師と呼ばれた。
 紋章師は国王に仕える優秀な魔導師だ。
 紋章師になれば『伯』という一代限りの爵位が与えられ、貴族になることもできる。
 だからこの国の魔力を持つ人間はみんな、紋章師を目指した。

 ベッキーも若くしてこの紋章師になった才媛の一人だった。
 しかし、自分がいくら頑張って成果を上げても、それはコンビを組んでいる相方の聖女マリーの手柄にされてしまう。
 女神様に選ばれたマリーの魔力は強くて偉大だ。大抵の傷跡を奇跡で癒してしまう。
 だが、マリーの癒しが施されるのは貴族や偉い人ばかりで、平民はみんなベッキーが頑張って癒してきた。
 マリーが一人癒せば、ベッキーは十人を癒した。
 
「……報われない」

 自分の仕事量が聖女より多いのに、世間は彼女を評価してくれない。
 そして、婚約者は自分よりも魅力のある聖女へと、心を移してしまった。

 ベッキーはいつしか、自分だけを見てくれる、認めてくれる誰かを探していた。
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