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プロローグ
失った真実の愛 3
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「追いかけないのですか?」
「……? え?? いや、しかし。出て行った者を追いかけるなど。王族にあるまじき行為だ」
「あら、そう……? あの子、わたしの前に座る王太子妃補だったのに。あなた、一番大事な理解者を無くしたのね」
「一番大事? いや、そんなことはない。いかにあれが、アンナローズが首席の王太子妃補だったとしても、次席のあなたがいるのだ僕の人生にさほど影響はないさ」
「呆れた人、クレイグ。そんなあなたについていく臣民が可哀想だわ。わたし、王太子妃補の教育を受けに王宮に伺うのは夜でしょう? この学院の授業が終わったあとに伺うのってとてもつらかったの。それをあの子が一緒にあなたを支えましょう。って、そう言ってくれたから頑張ってきたのよ。 でも、もう辞退しようかしら……お父様は許さないだろうけど」
「君まで出ていくつもりか!?」
バカ言わないでよとばかりに、ソフィアは王太子が立ち上がったのを見届けてから、忌々しそうにその手を払いのけてしまう。
(女を軽く扱いすぎだわ、このバカ王太子様……ここで殿下に媚びを売ればそりゃ、お父様も喜ばれるし、わたしだって将来の王妃。国母になって一族も安泰だけど。こんな、真実の愛、なんて言い出す軽薄な男だけは嫌!!)
アンナローズの怒りがよく理解できると、ソフィアはそっぽを向いてしまった。
そんな彼女を見て、やれやれ、クレイグは女性の扱いを本当に知らないとオーウェルが間に入ってくる。
「おやおや、従兄弟殿。御夫人二人。それも、王太子妃補の第一、第二候補それぞれから愛想をつかされては……だめではないですか」
そう嫌味を言いながら、立ち上がったら自分よりも頭一つ背が高くなるクレイグ王太子の耳元にオーウェルはそっとささやいてやる。
「兄さん!もっと空気を読んでよ!」
「あ、ああ……済まない。だが、どうしろと??」
「だからさあ……ここでソフィアまで失ったら国王陛下のお叱りは同席した俺にまでくるだろ!? すまなかった、僕には君しかいないとかなんとかさ。うまくやりなよっ」
「そうか、わかった。父上に叱りを受けるのは、今はいろいろとまずいからな」
そうささやかれ、年下に言われるがままに行動する王太子ほど、情けないものはない。
二人の会話はひそやかだが、この距離なら聞こえないこともないのだ。それに、ソフィアは……
「ソフィア。いや、ソフィア嬢。済まないが君の手助けが必要だ。あ、いや……僕には君が必要だ。側にいてほしい」
「……それは本気?」
「もちろん――本気だ」
ソフィアはその頭上にピンっと立った二つの耳を前後させる。
小麦の穂のように黄色く、小麦粉のような純白の白さを持つ猫耳。同じく金色の長髪が緩くウェーブを描きながら背中へと消えていく。その向こうでは赤毛の混じった長い豹のような尾が嬉しそうに揺らめいていた。
「……? え?? いや、しかし。出て行った者を追いかけるなど。王族にあるまじき行為だ」
「あら、そう……? あの子、わたしの前に座る王太子妃補だったのに。あなた、一番大事な理解者を無くしたのね」
「一番大事? いや、そんなことはない。いかにあれが、アンナローズが首席の王太子妃補だったとしても、次席のあなたがいるのだ僕の人生にさほど影響はないさ」
「呆れた人、クレイグ。そんなあなたについていく臣民が可哀想だわ。わたし、王太子妃補の教育を受けに王宮に伺うのは夜でしょう? この学院の授業が終わったあとに伺うのってとてもつらかったの。それをあの子が一緒にあなたを支えましょう。って、そう言ってくれたから頑張ってきたのよ。 でも、もう辞退しようかしら……お父様は許さないだろうけど」
「君まで出ていくつもりか!?」
バカ言わないでよとばかりに、ソフィアは王太子が立ち上がったのを見届けてから、忌々しそうにその手を払いのけてしまう。
(女を軽く扱いすぎだわ、このバカ王太子様……ここで殿下に媚びを売ればそりゃ、お父様も喜ばれるし、わたしだって将来の王妃。国母になって一族も安泰だけど。こんな、真実の愛、なんて言い出す軽薄な男だけは嫌!!)
アンナローズの怒りがよく理解できると、ソフィアはそっぽを向いてしまった。
そんな彼女を見て、やれやれ、クレイグは女性の扱いを本当に知らないとオーウェルが間に入ってくる。
「おやおや、従兄弟殿。御夫人二人。それも、王太子妃補の第一、第二候補それぞれから愛想をつかされては……だめではないですか」
そう嫌味を言いながら、立ち上がったら自分よりも頭一つ背が高くなるクレイグ王太子の耳元にオーウェルはそっとささやいてやる。
「兄さん!もっと空気を読んでよ!」
「あ、ああ……済まない。だが、どうしろと??」
「だからさあ……ここでソフィアまで失ったら国王陛下のお叱りは同席した俺にまでくるだろ!? すまなかった、僕には君しかいないとかなんとかさ。うまくやりなよっ」
「そうか、わかった。父上に叱りを受けるのは、今はいろいろとまずいからな」
そうささやかれ、年下に言われるがままに行動する王太子ほど、情けないものはない。
二人の会話はひそやかだが、この距離なら聞こえないこともないのだ。それに、ソフィアは……
「ソフィア。いや、ソフィア嬢。済まないが君の手助けが必要だ。あ、いや……僕には君が必要だ。側にいてほしい」
「……それは本気?」
「もちろん――本気だ」
ソフィアはその頭上にピンっと立った二つの耳を前後させる。
小麦の穂のように黄色く、小麦粉のような純白の白さを持つ猫耳。同じく金色の長髪が緩くウェーブを描きながら背中へと消えていく。その向こうでは赤毛の混じった長い豹のような尾が嬉しそうに揺らめいていた。
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