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第三章

天敵

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「まあ、そういうところかしら」
「かしら、じゃないですよ! それなら私と殿下の仲をうまくいくように神の力で取り持って、その後に神殿の問題をどうにかしろと言えばよかったじゃないですか!」
「出来ないのよ」
「どうして!?」
「アイリス、言ったでしょ? 建国王との約束があるって。神殿には大神官と聖女を介して最低限の未来を神託で下す。王国の政治には法律があるから女神は関与しない。そういうことになってるの。貴方が結婚したら王国側になるじゃない」
「……あーなるほど。じゃあ、あの聖騎士……アルフォンス卿をさっさと召喚すれば良かったのに」
「神殿騎士に対して聖女と大神官が神殿の範囲以外の命令を下したら、それは可能だったの」
「めんどくさい……。何のための女神ですか」
「だからー。貴方があの場で焼いた後に言ったでしょう? 王太子を説得しなさい、と。翌日の朝まで生きていてくれたら、聖騎士から事実を明らかにできたのよ。でも、貴方はそれを出来なかった」

 いやいや、それは違うでしょう。
 言ってもらっていれば、何かはできたはず。
 例えそれがサティナの思惑にそぐわない結果だったとしても。

「知りませんよ。サティナ様がもっと融通を利かせておけばよかったんです。約束だの法律だの神殿だの、王族だの……囚われ過ぎているんですよ何もかも古臭いし、やり方も硬くて柔軟じゃない。消えたはずの命だって救えたはずなんです」
「貴方こそ、まだ引きずってる……」
「違います!」
「はあ? どう違うと??」
「私は慈愛と知性と炎の女神サティナの司祭なんですよ。救える命は救うのがサティナ教の教えですから。それを女神様が自分の都合で調子よく変えたことをずっと怒ってるんです」
「……」
「自分が布教した教えに対して、一番目が曇っているのはサティナ様ご本人ではないですか? 己の主に対して不敬だとは思いますが言いたいことはそれだけです。それで、これからどうしますか、サティナ様。私は婚約者を失いましたけど、ケイトにはまだいるんですよ? この子の幸せまで邪魔するおつもりですか!?」

 不思議なことにこの問いかけ――ケイトの件に対してサティナはどこまでも渋い顔をしてみせた。
 まるで天敵がそこにいるかのような、そんな表情だった。

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