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第三章
聖女の恋
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あれ、でも待ってとアイリスは自分のせいかもしれないという思いを打ち消した。
あの時。
そう、サティナを降臨させた時のことだ。
彼女は許可したていたじゃない、と。
王太子に一矢報いることを。
そうなると……?
「あの、サティナ様? まさか……あのアズライルの浮気現場に踏み込んでいいって許可を出したのはサティナ様だし……何より、降臨……させることが狙いだった?」
「げっ……勘がいいじゃない、アイリス」
「ちょっとお!? どういうことですか、サティナ!? この駄女神、あんたのせいで王太子殿下は死んだのよ!?」
「だからそれは違うってば! なんど言わせたら分かるのよ、貴方は!!」
「はあ……まるで姉妹喧嘩を見てるみたい。アイリス、そろそろ落ち着いて。サティナ様、もうぶっちゃけていいのではないでしょうか?」
「ケイト……」
「ぶっちゃけてって言いますけどね、ケイト。あーあ、嫌だわ。ついついアイリスの言葉遣いに引っ張られて汚い発言ばかり。女神が堕ちてしまう」
「いつも堕ちてるでしょ」
「アイリス、もう黙って! サティナ様、お願いします。教えてください。大事なことだと思います」
やっぱりケイトが一番の曲者だわ。
サティナはもううんざりだと思いながら、馬車の椅子に座りなおした。
教える、か。
どこからかしら、と思いながら。
「とりあえず、アイリスを利用したのは事実、かしら。この世に降臨するにはこちらからの呼びかけがなければ、来れないから」
「来れないとは、神々の世界からですか?」
「そうよ。今は昼間だから見えないけど。三連の月の一つ、青い月にそれはあるの。女神フォンテーヌ様が統治していらっしゃるわ」
「フォンテーヌ様って……あの、紋様省が統括するフォンテーヌ教会の神? 実在したんだ……」
「アイリス、実在してるわよ。私は古い神なの。いまは新しい世代の神々が地上を統治しているから、勝手にはこれないのよ。分かる?」
「それで私に降臨の儀式をさせた、と。ただの司祭に」
「嫌味はいいから。来る必要があったのよー……あの聖女。バカなヘザーが帝国から大神官の代わりを呼ぼうとしていたから」
「ヘザー? 聖女ヘザー様? 帝国って……ああ、ヘザー様の恋人はあちらの神殿に勤める神官長でしたね、確か。そうなると帝国からの力が流入して――王国の神殿は乗っ取られる、と?」
そのためだけに私を利用したんですか?
アイリスはあきれ果ててものが言えなくなりそうだった。
あの時。
そう、サティナを降臨させた時のことだ。
彼女は許可したていたじゃない、と。
王太子に一矢報いることを。
そうなると……?
「あの、サティナ様? まさか……あのアズライルの浮気現場に踏み込んでいいって許可を出したのはサティナ様だし……何より、降臨……させることが狙いだった?」
「げっ……勘がいいじゃない、アイリス」
「ちょっとお!? どういうことですか、サティナ!? この駄女神、あんたのせいで王太子殿下は死んだのよ!?」
「だからそれは違うってば! なんど言わせたら分かるのよ、貴方は!!」
「はあ……まるで姉妹喧嘩を見てるみたい。アイリス、そろそろ落ち着いて。サティナ様、もうぶっちゃけていいのではないでしょうか?」
「ケイト……」
「ぶっちゃけてって言いますけどね、ケイト。あーあ、嫌だわ。ついついアイリスの言葉遣いに引っ張られて汚い発言ばかり。女神が堕ちてしまう」
「いつも堕ちてるでしょ」
「アイリス、もう黙って! サティナ様、お願いします。教えてください。大事なことだと思います」
やっぱりケイトが一番の曲者だわ。
サティナはもううんざりだと思いながら、馬車の椅子に座りなおした。
教える、か。
どこからかしら、と思いながら。
「とりあえず、アイリスを利用したのは事実、かしら。この世に降臨するにはこちらからの呼びかけがなければ、来れないから」
「来れないとは、神々の世界からですか?」
「そうよ。今は昼間だから見えないけど。三連の月の一つ、青い月にそれはあるの。女神フォンテーヌ様が統治していらっしゃるわ」
「フォンテーヌ様って……あの、紋様省が統括するフォンテーヌ教会の神? 実在したんだ……」
「アイリス、実在してるわよ。私は古い神なの。いまは新しい世代の神々が地上を統治しているから、勝手にはこれないのよ。分かる?」
「それで私に降臨の儀式をさせた、と。ただの司祭に」
「嫌味はいいから。来る必要があったのよー……あの聖女。バカなヘザーが帝国から大神官の代わりを呼ぼうとしていたから」
「ヘザー? 聖女ヘザー様? 帝国って……ああ、ヘザー様の恋人はあちらの神殿に勤める神官長でしたね、確か。そうなると帝国からの力が流入して――王国の神殿は乗っ取られる、と?」
そのためだけに私を利用したんですか?
アイリスはあきれ果ててものが言えなくなりそうだった。
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