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第二章
八つ当たり
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「ちょっと、サティナ。行きなさいよ」
「あ、はい。お姉様……」
「え?」
「あら?」
アイリスが立ち止まってしまった女神を押すと、いつもなら不満が返って来るはずのそれはなく真逆の素直な女神がそこにいた。
どうしたんだろとケイトと二人で顔を見合わせるが二人にはその理由が思い当らない。
「何あれ。井戸の件が恐怖を与えすぎて変になったかな?」
「止めなさいよ、そんな失礼な物言い。サティナ様は神だもの。私たちに理解できないことがあってもおかしくないわ、アイリス」
「全てを見通せる目があるなら、殿下を見捨てなんかしなかったでしょ……」
「まだ言ってる。いい加減、あなたもしつこいわよ? そろそろ諦めるというか、だまされたのはあなたなんだから。コロコロと裏表を変えるような発言止めなさいな」
「だって……不公平でしょ?」
「まだ言ってる。お側にいて下さるだけでも恵まれているとは思わないの? そういうのを恩知らずと言うのよ」
「ケイトー。それは言い過ぎでしょ……」
「違うわよ」
「……」
一番気心が知れているはずの友人からの否定にアイリスは言葉に詰まってしまう。
待っている相手がいるのに、サティナがそちらに行ったまま二人の貴族令嬢の間には何か冷たいものが流れているようだった。
「いい、アイリス。女神がいるとかいないとか。そんなのはどうでもいいの。結局、殿下の信頼を勝ち取れなかったあなたの負けなの。あなたの責任もあるのよ。それなのに女神様だけを責めるのは筋違いだわ。神が裁くとかそんなこともどうでもいいの」
「だって、ならどうすればよかったと? わたしはあれでも我慢して……」
「我慢して大事なことを言わずにきたから裏切られた。それだけでしょ。もちろん、殿下にも問題はあるけど、あなたたち二人の問題からあなたは逃げてばかりだったもの。サティナ様が最後に説得しろって言われたのはそういうことでしょう? 神が都合よく仲裁に出しゃばれば、王国の政治なんて必要ないもの。人は人で努力しなさい、そういうことでしょう? 神殿の問題だけはサティナ様が丸く収めたじゃない」
「自分だって死にそうな目に遭ったのに、殿下の肩を持つの? ケイトだって黙って着いてきたじゃない、あの殿下と女伯爵のところに」
「行ったわよ? だって、あなたは主で友人だもの。前も言ったけど、部下の安全を守れない主人なんて主人として無能以下だと思うわよ。だから、今度はしっかりして頂戴。ほら、行くわよ」
「どうしろって言うのよ、あなたは。最近、八つ当たりがひどい。恋人と会えないからって」
「あら、バレた? 行くわよ」
この女狐。
言いたいことを吐き出したケイトはどこかはつらつとした顔でサティナの方向に歩いていく。
後を追ったアイリスが見たものは、まるで女神らしくない、頬を赤らめたサティナの姿だった。
「あ、はい。お姉様……」
「え?」
「あら?」
アイリスが立ち止まってしまった女神を押すと、いつもなら不満が返って来るはずのそれはなく真逆の素直な女神がそこにいた。
どうしたんだろとケイトと二人で顔を見合わせるが二人にはその理由が思い当らない。
「何あれ。井戸の件が恐怖を与えすぎて変になったかな?」
「止めなさいよ、そんな失礼な物言い。サティナ様は神だもの。私たちに理解できないことがあってもおかしくないわ、アイリス」
「全てを見通せる目があるなら、殿下を見捨てなんかしなかったでしょ……」
「まだ言ってる。いい加減、あなたもしつこいわよ? そろそろ諦めるというか、だまされたのはあなたなんだから。コロコロと裏表を変えるような発言止めなさいな」
「だって……不公平でしょ?」
「まだ言ってる。お側にいて下さるだけでも恵まれているとは思わないの? そういうのを恩知らずと言うのよ」
「ケイトー。それは言い過ぎでしょ……」
「違うわよ」
「……」
一番気心が知れているはずの友人からの否定にアイリスは言葉に詰まってしまう。
待っている相手がいるのに、サティナがそちらに行ったまま二人の貴族令嬢の間には何か冷たいものが流れているようだった。
「いい、アイリス。女神がいるとかいないとか。そんなのはどうでもいいの。結局、殿下の信頼を勝ち取れなかったあなたの負けなの。あなたの責任もあるのよ。それなのに女神様だけを責めるのは筋違いだわ。神が裁くとかそんなこともどうでもいいの」
「だって、ならどうすればよかったと? わたしはあれでも我慢して……」
「我慢して大事なことを言わずにきたから裏切られた。それだけでしょ。もちろん、殿下にも問題はあるけど、あなたたち二人の問題からあなたは逃げてばかりだったもの。サティナ様が最後に説得しろって言われたのはそういうことでしょう? 神が都合よく仲裁に出しゃばれば、王国の政治なんて必要ないもの。人は人で努力しなさい、そういうことでしょう? 神殿の問題だけはサティナ様が丸く収めたじゃない」
「自分だって死にそうな目に遭ったのに、殿下の肩を持つの? ケイトだって黙って着いてきたじゃない、あの殿下と女伯爵のところに」
「行ったわよ? だって、あなたは主で友人だもの。前も言ったけど、部下の安全を守れない主人なんて主人として無能以下だと思うわよ。だから、今度はしっかりして頂戴。ほら、行くわよ」
「どうしろって言うのよ、あなたは。最近、八つ当たりがひどい。恋人と会えないからって」
「あら、バレた? 行くわよ」
この女狐。
言いたいことを吐き出したケイトはどこかはつらつとした顔でサティナの方向に歩いていく。
後を追ったアイリスが見たものは、まるで女神らしくない、頬を赤らめたサティナの姿だった。
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