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第一章
王子の本音
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しかし、アズライルの態度は変わらない。
自分には非がないような発言は続いた。
「そう思うならそう思えばいい。君は俺が質問すればどうなったかをまるで理解しないし、想像だにしていないと思えるよ。そこが、子供だというべきかな。アイリス……」
「聞いていただければ! 何も包み隠さず、あなたにすべてを話しました! でもあなたはそれをしなかった。どちらが裏切りですか。その女伯爵は信じるに足る存在なのに、婚約者を信じないなんて。あなたは王子である資格すらないんだわ」
「なら――なんだと言いたい?」
「ケダモノよっ! まだ獣の方がいいわ。秘密も作らず、あれば素直にバツの悪い顔をするもの。あなたはそれすらも隠しているじゃない。人間以下のケダモノだわ……。周りを信じて大事な存在を信じずに、見放した裏切り者よ。家族になれると思っていたのに!!」
湧き上がる猜疑心をさらに失意の痛みが覆い隠していく。
アイリスの理性よりも本能。本能よりも深みを増したもの。
怒りというものは何よりも純粋な理性らしい、アイリスはそう思った。
そして、自分に与えられた女神からの力。
炎を操る魔力が途方もない力となって、怒りを晴らせるように――力を使えと後押しする気がしていた。
「……焼きたいか? なら、そうすればいい。だが、もう少し話を聞いてからでも、遅くはないぞ。アイリス? 先に言っておくが、家族は助けよう。どうせ、君がここに来た時点で俺の負けだ」
「いまさらそんな言葉、信じられると思ってますの?」
「信じていい。俺が君を愛していたというくらい、あり得ないことかもしれないがな?」
「それはどういう意味……?? ここで愛を語るなんて命乞いにも等しいじゃないですか!」
「まあな。聞かせるべき話があれば、伝えるのもーー俺の優しさかもな。贖罪ではないが。君の家族は神殿騎士が救っているころだろうよ」
言うにことかいて、この男はどこまでもぬけぬけと口を滑らせる。
まるで、肌を七色に変えるという異国のヘビのような生物みたいだと、アイリスは思った。
それでもーーと、ふと心に留まるものがある。
それはあの時。
女神サティナが言ったある言葉から来ていた。
(神殿騎士は誰に仕える者? この女神サティナでしょう!?)
「神殿騎士……? あなたと彼女の寝ている部屋を訪れた時にも、私専属の騎士たちがいましたが、その後、どこかに神官長とともに移動していきました。てっきり捕縛されたものかと……」
「いやいや、違うよ。簡単に言うとこうだ。聖女と大神官は疑いを持った。もちろん、君に女神の神託が来ている現実にだ。それはつまり、王族や自分たち神殿関係者を排除しようとする動きでないか。女神様は王国の頭そのものを、挿げ替えようとしているのかもしれない。そう思ったようだな」
「そんな馬鹿げた妄想を誰が信じると……??」
「信じるのさ。王国は神殿と二人三脚。国王、貴族院、神殿の三者でうまくやってきたのだ。貴族院はあくまで民衆の意思を反映するものだがな」
また政治の話だ。
男性はこればかりに逃げて情けない。
ここは話を合わせてすべてを言わせるのが賢明かもしれない。
アイリスはそう思い、会話を合わせることにした。
自分には非がないような発言は続いた。
「そう思うならそう思えばいい。君は俺が質問すればどうなったかをまるで理解しないし、想像だにしていないと思えるよ。そこが、子供だというべきかな。アイリス……」
「聞いていただければ! 何も包み隠さず、あなたにすべてを話しました! でもあなたはそれをしなかった。どちらが裏切りですか。その女伯爵は信じるに足る存在なのに、婚約者を信じないなんて。あなたは王子である資格すらないんだわ」
「なら――なんだと言いたい?」
「ケダモノよっ! まだ獣の方がいいわ。秘密も作らず、あれば素直にバツの悪い顔をするもの。あなたはそれすらも隠しているじゃない。人間以下のケダモノだわ……。周りを信じて大事な存在を信じずに、見放した裏切り者よ。家族になれると思っていたのに!!」
湧き上がる猜疑心をさらに失意の痛みが覆い隠していく。
アイリスの理性よりも本能。本能よりも深みを増したもの。
怒りというものは何よりも純粋な理性らしい、アイリスはそう思った。
そして、自分に与えられた女神からの力。
炎を操る魔力が途方もない力となって、怒りを晴らせるように――力を使えと後押しする気がしていた。
「……焼きたいか? なら、そうすればいい。だが、もう少し話を聞いてからでも、遅くはないぞ。アイリス? 先に言っておくが、家族は助けよう。どうせ、君がここに来た時点で俺の負けだ」
「いまさらそんな言葉、信じられると思ってますの?」
「信じていい。俺が君を愛していたというくらい、あり得ないことかもしれないがな?」
「それはどういう意味……?? ここで愛を語るなんて命乞いにも等しいじゃないですか!」
「まあな。聞かせるべき話があれば、伝えるのもーー俺の優しさかもな。贖罪ではないが。君の家族は神殿騎士が救っているころだろうよ」
言うにことかいて、この男はどこまでもぬけぬけと口を滑らせる。
まるで、肌を七色に変えるという異国のヘビのような生物みたいだと、アイリスは思った。
それでもーーと、ふと心に留まるものがある。
それはあの時。
女神サティナが言ったある言葉から来ていた。
(神殿騎士は誰に仕える者? この女神サティナでしょう!?)
「神殿騎士……? あなたと彼女の寝ている部屋を訪れた時にも、私専属の騎士たちがいましたが、その後、どこかに神官長とともに移動していきました。てっきり捕縛されたものかと……」
「いやいや、違うよ。簡単に言うとこうだ。聖女と大神官は疑いを持った。もちろん、君に女神の神託が来ている現実にだ。それはつまり、王族や自分たち神殿関係者を排除しようとする動きでないか。女神様は王国の頭そのものを、挿げ替えようとしているのかもしれない。そう思ったようだな」
「そんな馬鹿げた妄想を誰が信じると……??」
「信じるのさ。王国は神殿と二人三脚。国王、貴族院、神殿の三者でうまくやってきたのだ。貴族院はあくまで民衆の意思を反映するものだがな」
また政治の話だ。
男性はこればかりに逃げて情けない。
ここは話を合わせてすべてを言わせるのが賢明かもしれない。
アイリスはそう思い、会話を合わせることにした。
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