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プロローグ
では、浮気男を焼きに参りましょう
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朗々とアイリスは司祭らしく聖詩を述べ上げていく。
その様は確かに神聖なる荘厳な雰囲気を醸し出していて、ケイトはあることに思い至った。
学院の寄宿舎で同室だった二人。
アイリスは深夜にいきなり思い出したように、やっていた理由はこれかと理解する。
どうか、悪戯好きの国母候補アイリスの結婚生活が、真実の愛によって彩られますように。
そうケイトや室内の人々が素直に願った時だった。
「――そう。分かりましたわ、女神サティナ様。許して頂けるならば、生涯の忠誠をあなたに誓います」
「アイリス? ‥‥‥何を言ってるの??」
ふとアイリスが誰ともなく放った言った言葉が、魂を持つ。
少女の真紅の髪が、まるで燃え盛る炎のように揺らいだかその時だ。
ケイトは窓の外にある王城の空から幻想の炎の波が、四方に疾ったのが見えた。
まるで二千年前にあったとされる伝承にそっくりの光景だった。
女神が最初の聖女の前に降臨した時に起きたと言われる、その光景によく似ている‥‥‥
ケイトと他の面々はまさか、と己の目を疑っていた。
そして、アイリスが満足そうな顔でケイトに向かってうなづいたのを見て、侍女はこれが幻ではないことを知ったのだった。
「来たわよ、ケイト」
「来たって!? あなた、まさか‥‥‥」
「そうよ。神託は下ったわ。こんな古臭い、恥知らずなしきたりを自分は教えた覚えがない、そうサティナ様は言われたわよ。今頃、大神官様や聖女様の前に降臨されているんじゃないかしら。さすがにここには来て下さらないけど」
「アイリス‥‥‥メチャクチャだわ。やることが‥‥‥どうするつもりなの? 儀式は延期する?」
もうこうなったら親友についていくしかない。
上手くいけば、実家の子爵家が政治の道で有利になるかもしれない。
そんな打算を込めて、ケイトはアイリスに質問する。
延期するなら、まだ時間はある。
日が変わるまで、あと三十分近く。
神殿から王宮までの遣いが来るには十分な時間だった。
「延期? まさか――ぶち壊すのよ」
「‥‥‥は? 壊すって、何をどう‥‥‥?」
「王太子殿下、いまどこにおられると思う?」
「どこって、そりゃ女伯爵様の屋敷じゃ‥‥‥」
「違うの。明日から私とずっと夜を過ごすためのベッドでお楽しみ中だって。サティナ様が、そう教えて下さったわ」
「そんな恥知らずにも程があるんじゃ‥‥‥」
そうね、恥知らずにも程がある。
アイリスはさっさと夜着の上からガウンを羽織ると、数名の騎士についてくるように指示をした。
ケイトはその意図が理解出来ずに、おろおろするばかりだ。
用意が整ったわね、そう言うと、アイリスはケイトに向き直って言った。
「殿下、正妻の座を女伯爵様だけでなく、他の子女たちにも競わせる御心積もりらしいわ。だから、お許しを願い出たの」
「お許し? やめて! 聞きたくない‥‥‥あなたの願いなんて、こんな時にする内容はろくなものじゃないもの‥‥‥」
「失礼ね、ケイトったら。少しばかり焼いても構わないって、そんな許可を頂いただけよ。ほら、行くわよ? ついて来ないの?」
焼く?
その意味が薄々とケイトには理解出来ていた。
多分、生涯浮気ができない身体にするつもりだということも。
ついて行く、それとも止めておく?
もちろん、ついて来るわよね?
そんな意味を含んだ笑顔で迫るアイリスに、ケイトはただ従うしかなかった。
その様は確かに神聖なる荘厳な雰囲気を醸し出していて、ケイトはあることに思い至った。
学院の寄宿舎で同室だった二人。
アイリスは深夜にいきなり思い出したように、やっていた理由はこれかと理解する。
どうか、悪戯好きの国母候補アイリスの結婚生活が、真実の愛によって彩られますように。
そうケイトや室内の人々が素直に願った時だった。
「――そう。分かりましたわ、女神サティナ様。許して頂けるならば、生涯の忠誠をあなたに誓います」
「アイリス? ‥‥‥何を言ってるの??」
ふとアイリスが誰ともなく放った言った言葉が、魂を持つ。
少女の真紅の髪が、まるで燃え盛る炎のように揺らいだかその時だ。
ケイトは窓の外にある王城の空から幻想の炎の波が、四方に疾ったのが見えた。
まるで二千年前にあったとされる伝承にそっくりの光景だった。
女神が最初の聖女の前に降臨した時に起きたと言われる、その光景によく似ている‥‥‥
ケイトと他の面々はまさか、と己の目を疑っていた。
そして、アイリスが満足そうな顔でケイトに向かってうなづいたのを見て、侍女はこれが幻ではないことを知ったのだった。
「来たわよ、ケイト」
「来たって!? あなた、まさか‥‥‥」
「そうよ。神託は下ったわ。こんな古臭い、恥知らずなしきたりを自分は教えた覚えがない、そうサティナ様は言われたわよ。今頃、大神官様や聖女様の前に降臨されているんじゃないかしら。さすがにここには来て下さらないけど」
「アイリス‥‥‥メチャクチャだわ。やることが‥‥‥どうするつもりなの? 儀式は延期する?」
もうこうなったら親友についていくしかない。
上手くいけば、実家の子爵家が政治の道で有利になるかもしれない。
そんな打算を込めて、ケイトはアイリスに質問する。
延期するなら、まだ時間はある。
日が変わるまで、あと三十分近く。
神殿から王宮までの遣いが来るには十分な時間だった。
「延期? まさか――ぶち壊すのよ」
「‥‥‥は? 壊すって、何をどう‥‥‥?」
「王太子殿下、いまどこにおられると思う?」
「どこって、そりゃ女伯爵様の屋敷じゃ‥‥‥」
「違うの。明日から私とずっと夜を過ごすためのベッドでお楽しみ中だって。サティナ様が、そう教えて下さったわ」
「そんな恥知らずにも程があるんじゃ‥‥‥」
そうね、恥知らずにも程がある。
アイリスはさっさと夜着の上からガウンを羽織ると、数名の騎士についてくるように指示をした。
ケイトはその意図が理解出来ずに、おろおろするばかりだ。
用意が整ったわね、そう言うと、アイリスはケイトに向き直って言った。
「殿下、正妻の座を女伯爵様だけでなく、他の子女たちにも競わせる御心積もりらしいわ。だから、お許しを願い出たの」
「お許し? やめて! 聞きたくない‥‥‥あなたの願いなんて、こんな時にする内容はろくなものじゃないもの‥‥‥」
「失礼ね、ケイトったら。少しばかり焼いても構わないって、そんな許可を頂いただけよ。ほら、行くわよ? ついて来ないの?」
焼く?
その意味が薄々とケイトには理解出来ていた。
多分、生涯浮気ができない身体にするつもりだということも。
ついて行く、それとも止めておく?
もちろん、ついて来るわよね?
そんな意味を含んだ笑顔で迫るアイリスに、ケイトはただ従うしかなかった。
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