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プロローグ

王女の嘆き

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 陽の当たらない場所を選び、日陰になっていた、東屋に三人はいた。
 殺気立った衛士たちの声に、彼女たちは肩を震わせる。
 何かあったのだ。

 衛士たちが、それぞれ武器を片手にして、走りながらこちらにやって来なければならないような、何かが。
 少しの間を置いて、東家の前に衛士たちが整列する。

 それは、仕えるべき王族に対して向けられたもので。
 しかし、彼らの怒りに燃えるその瞳は、まだ力を失っていない。
 これは僕に向けられたものだ。
 ルークは幼いながらに、そう悟った。

 彼らは王女たちを捕まえにきたのではなく、ルークを目指してきていた。
 一番先頭に立つ、隊長とおぼしき男が、口を開いた。

「ゼイワード伯爵令息ルークだな?」
「そうですが‥‥‥」
「捕まえろ」

 冷徹な一言。
 それが発せられるとともに、傍若無人な暴力が、ルークを襲う。
 二人の衛士が、凄まじい力で三人を引き裂いた。

 一人引き離されたルークは、腹を蹴られ、顔を殴られて、顔を朱に染める。
 そのまま、庭園の大理石の床におしつけられて、後ろ手に腕を縛られた。
 ギリギリと締め上げる縄の痛みが、恐怖に怯える少年の心を、さらに追いつめる。
 全身がこれまで味わったこともないような痛みに支配された。

「うあっ!」
 悲鳴が漏れる。

 いきなりのことに怯えて二人で固まったまま震えていたアミアが、それを耳にして、声を上げた。

「ルーク! やめなさい、彼に手を出すことは許しません!」
「罪人なのです」

 王女の命令は聞き入れられなかった。

 罪人?
 一体だれが?
 ルークの心にそんな声があがる。
 悲鳴をあげたいけれど、それは騎士としてふさわしくない。
 反論をしたいけれど、それは不名誉なおこないだ。
 それに、庇ってくれたアミアと、目に涙をためているセシルの前で。
 これ以上情けない格好は見られたくない。見せたくない。

 男の意地がある。

「誰が罪人ですか! ルークはいままで、私たちと話をしていたじゃない!」

 気丈な王女は、そう言い、隊長に詰め寄っていた。
 妹のセシルも姉に元気をもらったのか「ルークをいじめないで!」と叫んでくれた。

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