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介在人の語り
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星と星の合間をつなぐ星間鉄道が一カ月に一回、地球にやってきます。予定通りだと、今日やってきます。
申し遅れました。私はただいま地球駅の臨時駅長をしておりますコークスです。どうぞ宜しく。
ちょうど、列車がやってくるホームの掃除を終えたところです。列車は後一時間でやってきます。
今回は誰もいないのかな?
私はほっと溜息をつき、神様にお祈りを捧げました。子供たちをお守り下さりありがとうございます。
「すみませーん……」
おやおや、そういうわけにはいかなかったのですね……。
神様……。
この地に招かれた子供を旅の最後まで見守ってください……。
お母さんと、お母さんに抱っこされた男の子がやってきました。
「まぁっ……なんて綺麗な空なんでしょう!」
それもそのはず。ここは、地球のどこよりも宇宙に近いんです。周りの光が全て遮られいるので、星々の輝きをそのまま見ることができるんです。
お母さんは一瞬子供のことを忘れたようでした。それでいいんです。
我が子を長い長い旅に送り出してやらなくてはならないのですから……。
男の子は、お母さんの温かい揺り籠の中でスヤスヤと寝息を立てていました。
「……このまま列車に乗せてください……」
お母さんの表情が大部険しくなりました。
「お子さんとはお話されましたか?」
「ええっ……。坊やが微笑みかけてから眠りに就くまで……。幸せな日々でした……」
お母さんが崩れそうになったので、支えてあげました。
「ありがとうございます……。坊やは……坊やは……あぁっ……こんな日がやってくるって分かっていたら……もう少し……」
「お母さん……。気持ちは分かります。でもね、ほら、さっきみたいに上を向いてください」
お母さんはさっきみたいに星々の輝きを見つめました。
「きれい…………」
「そうでしょう?坊やはあんなに綺麗な世界を旅して、自分の住処を決めるんですよ?ねぇっ、これは宇宙の習いです。神様の元から生まれた坊やが、今度は自分で歩き出そうとしているんです。お母さん、ほら、泣いてばかりいないで……。坊やを抱っこしてあげてください……」
懐中時計に目をやると、どうやら間もなく列車がやってくるようです。もう少し、もう少しだけ。お母さんに抱かれた坊やの顔を見ていたい……。
プァッーン!プァッーン!
けたたましい警笛を響かせながら列車がやってきました。既に周回の旅を始めた子供たちの声が漏れてきます。
「地球……地球……!停車時間は3分です。ご乗車の方はお急ぎください!」
車掌さんがプラットホームに降り立ちました。
「ご苦労様です。新しい乗客は坊や一人だけです」
「了解しました」
車掌さんはお母さんの方へ歩み寄りました。
「こんばんは。星間鉄道へようこそ!こちらが……新しい坊やですね?」
お母さんはこくりと頷きました。
それにしても、ここまで子供のために泣く親を始めて見ました。これだけ愛された坊やが遠い星の神様になれば……。私はそんなことをふと考えました。
「お母さん……まことに申し上げにくいのですが……時間です……」
「はいっ……!坊や……ありがとう……楽しんできてね……!」
車掌さんはお母さんから坊やを引き取り、列車に乗せました。
「あらっ、可愛い!」
「こんにちは!」
坊やはすぐに女の子たちの輪に交じって、人気者になっていました。
ジリジリジリジリジリジリジリジリジリジリジリジリ!
卒業のチャイムが鳴り響きました。坊やを乗せた列車はゆっくりと動き始めました。
「さようなら……さようなら…………」
お母さんは列車が見えなくなるまで手を振っていました。
ほとばしる涙が大空に帰っていきました。
申し遅れました。私はただいま地球駅の臨時駅長をしておりますコークスです。どうぞ宜しく。
ちょうど、列車がやってくるホームの掃除を終えたところです。列車は後一時間でやってきます。
今回は誰もいないのかな?
私はほっと溜息をつき、神様にお祈りを捧げました。子供たちをお守り下さりありがとうございます。
「すみませーん……」
おやおや、そういうわけにはいかなかったのですね……。
神様……。
この地に招かれた子供を旅の最後まで見守ってください……。
お母さんと、お母さんに抱っこされた男の子がやってきました。
「まぁっ……なんて綺麗な空なんでしょう!」
それもそのはず。ここは、地球のどこよりも宇宙に近いんです。周りの光が全て遮られいるので、星々の輝きをそのまま見ることができるんです。
お母さんは一瞬子供のことを忘れたようでした。それでいいんです。
我が子を長い長い旅に送り出してやらなくてはならないのですから……。
男の子は、お母さんの温かい揺り籠の中でスヤスヤと寝息を立てていました。
「……このまま列車に乗せてください……」
お母さんの表情が大部険しくなりました。
「お子さんとはお話されましたか?」
「ええっ……。坊やが微笑みかけてから眠りに就くまで……。幸せな日々でした……」
お母さんが崩れそうになったので、支えてあげました。
「ありがとうございます……。坊やは……坊やは……あぁっ……こんな日がやってくるって分かっていたら……もう少し……」
「お母さん……。気持ちは分かります。でもね、ほら、さっきみたいに上を向いてください」
お母さんはさっきみたいに星々の輝きを見つめました。
「きれい…………」
「そうでしょう?坊やはあんなに綺麗な世界を旅して、自分の住処を決めるんですよ?ねぇっ、これは宇宙の習いです。神様の元から生まれた坊やが、今度は自分で歩き出そうとしているんです。お母さん、ほら、泣いてばかりいないで……。坊やを抱っこしてあげてください……」
懐中時計に目をやると、どうやら間もなく列車がやってくるようです。もう少し、もう少しだけ。お母さんに抱かれた坊やの顔を見ていたい……。
プァッーン!プァッーン!
けたたましい警笛を響かせながら列車がやってきました。既に周回の旅を始めた子供たちの声が漏れてきます。
「地球……地球……!停車時間は3分です。ご乗車の方はお急ぎください!」
車掌さんがプラットホームに降り立ちました。
「ご苦労様です。新しい乗客は坊や一人だけです」
「了解しました」
車掌さんはお母さんの方へ歩み寄りました。
「こんばんは。星間鉄道へようこそ!こちらが……新しい坊やですね?」
お母さんはこくりと頷きました。
それにしても、ここまで子供のために泣く親を始めて見ました。これだけ愛された坊やが遠い星の神様になれば……。私はそんなことをふと考えました。
「お母さん……まことに申し上げにくいのですが……時間です……」
「はいっ……!坊や……ありがとう……楽しんできてね……!」
車掌さんはお母さんから坊やを引き取り、列車に乗せました。
「あらっ、可愛い!」
「こんにちは!」
坊やはすぐに女の子たちの輪に交じって、人気者になっていました。
ジリジリジリジリジリジリジリジリジリジリジリジリ!
卒業のチャイムが鳴り響きました。坊やを乗せた列車はゆっくりと動き始めました。
「さようなら……さようなら…………」
お母さんは列車が見えなくなるまで手を振っていました。
ほとばしる涙が大空に帰っていきました。
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