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その3

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「それは……許されざる恋の物語なのでございます……。つまり、私は自分の欲望を抑えることができなかったのです。幼いころから、マリアに恋をしておりました。そして、その恋が叶わないことを知ったとき……私は!」


「なるほど……大体の話は分かった。つまり、君はマリアと私が婚約していることを知りながら、不倫をしたと、こういうわけなんだね?」

話が一方的に進み過ぎて、私はもはや反論する権利がありませんでした。ですが、これだけは言いたかった。


「これは全部嘘です!!!私はそもそもこの男のことを知りません!!!」

でも、ハブ様はどういうわけだか、都合よくこの男の話ばかりを信じ切って、私の話は聞こうともしませんでした。


「まあ、いずれにしても、マリア、君は重大な罪を犯したことに変わりないのだから。婚約破棄の理由としては、これで十分ではないだろうか?」

ああ、これで全て終わってしまった……私はそう思いました。令嬢としての地位はさることながら、私のプライド、あるいは、家名を汚すことにもなりました。全てがマイナスに動きました。こればかりは、王子様の話に疑いを持つものなんているはずもなく、私が全ての悪の根源として、ストーリーが完成しました。


さて、私が強制的に失脚させられて、誰が一番喜ぶのでしょうか。それは当然、ハブ様の新しい婚約相手ということになるのでしょう。私との婚約破棄が成立してからすぐに、ハブ様は新しい婚約者を見つけたようでした。

なんでも、有力な公爵の一人娘だそうで、親の地位を考えたら、私よりもはるかに有力でした。

王家の婚約話はこれが正しいのです。私のようなどこの田舎貴族の令嬢が、王子様と婚約するだなんて、夢の中の話なのですから。

それにしても……タイミングが悪かったのです。ハブ様が私よりも先に、この令嬢と出会っていたならば、私はこのような運命に巻き込まれることなんてなかったはずなのです。


ハブ様が軽はずみに、どういう理由だか知りませんが、私を婚約者にするなどという茶番を働かなければ、このような悲劇は起きなかったのでございます。


さてさて、まさかその令嬢が、私の近くに現れるとは、想像もしていませんでした。

「マリア様。ごきげんよう!」

見かけたことのない女性……その華やかさは、私が思い描くロイヤルウェディングにぴったりでした。ハブ様の新しい婚約者であることを、すぐに悟りました。



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