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騙し合い あるいは 恋
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初めまして。一応令嬢をやっておりましたカリーナと申します。
民衆が苛立ったせいで、王制はとっくに廃止されました。家族はみんな殺されました。どうして私だけが生き残っているかって?自分で言うのもなんですけど、男を強力に吸い付ける才能があるみたいなんです。
私が一晩、民衆の前で裸を披露したとしましょう。
翌朝目を醒ますと大量の金貨が散らばっているのです。
ずっと親の操り人形として生きてきました。人前は愚か、家族の前でさえ、裸になったことなんてありません。そんなことをしたら、本当に殺されていたでしょう。両親は非常に厳格でした。そうしないと、他の貴族と結婚することが出来なくなるからです。家の繁栄は全て嫁ぎ先にかかっていますから。
これほど馬鹿げた世界があるでしょうか?
裸になってごらんなさい。自分がどれほど孤独であるのか、よく分かります。
男に体を預けたら……。
汚らわしいですか?自分の力で生きているって感じられるんです。
ああっ、なんて素晴らしいことなのかしら!
「カリーナ殿……」
私の名前を呼ぶ声がする!知り合い?
声の主は私のすぐ後ろにいました。同い年くらいでしょうか?容姿は稀に見るほど端麗なのですが、どうも顔色がよくありません。なにか病にでも侵されているのでしょうか?
「トラ―リ県のストレプトです……」
ストレプト……ストレプト……ストレプト……ストレプト王朝?
歴史の教科書で読んだことがあります。確か、100年前まで国を統治していた偉大な王朝だったはずです。なるほど……彼はその末裔で、私と同じ運命にあるというわけですか……。
「あの……その……」
頭が弱いんでしょうか?今一つ、言わんとすることが分かりません。私はしびれを切らしました。
「寝たいんですか……?」
単刀直入な質問です。私は確信していました。ストレプト氏は間もなく天に召されるのです。その前の思い出作りとでもいったところでしょうか?
死ぬ前に女を知りたい……。
しかしながら流石は王族です。得体の知れない娼婦ではだめなのでしょう。
そこで、私の噂をかぎつけたんです。
隣村に、身体を売る元令嬢がいるって。
確か、ストレプト99代皇帝の孫を世話していたのが私のお父様でした。その縁があってかどうかは分かりませんが、こうして私と巡り合った……。
ふふふっ……。面白い肴ですね……。
ことが済んだら、トラ―リ県に乗り込みましょう。ストレプト家に真実を告げます。そうすれば……落ちぶれた貴族とは言え、元王族です。
もっともっとたくさんの利権が入ってくるでしょう。
大きな邸宅を構えて……私を罵って来た市民たちを奴隷にして……ハーレムを作って……!
「私と結婚していただきたい……」
結婚ですって?
私は思わず吹き出してしまいました。そうですか、結婚ときましたか?
それなら、話が早い!
「喜んでお受けいたします……」
ああっ、私も貴族の血を引く罪深き女のようです。結局は利権にすがって、市民を迫害しないと気が済まないみたい。泣き叫ぶ彼らを助けるふりをするのが……これまた面白い!
ストレプトの仮面を引きちぎって、カリーナ国の造成を!
トラ―リ県までの旅は、子供の頃の散歩か、あるいは、それ以上にはしゃいでいました。これからスタートする第二の人生がどれほど素晴らしいものか、考えるだけで笑みが絶えません。
「ストレプト様……」
私は恭しくお辞儀をしました。
「この度は誠にありがとうございます……」
「いえいえ、こちらこそ……。その……ありがとう……」
ストレプト様は私を城に招き入れました。私と同じで一人暮らしみたいです。それにしても……落ちぶれたとは言え、絢爛な造りです。
「これから……よろしくね……」
「はいっ!よろしくお願いします!」
二人の笑い声がゆっくりと静かに響き渡りました。
民衆が苛立ったせいで、王制はとっくに廃止されました。家族はみんな殺されました。どうして私だけが生き残っているかって?自分で言うのもなんですけど、男を強力に吸い付ける才能があるみたいなんです。
私が一晩、民衆の前で裸を披露したとしましょう。
翌朝目を醒ますと大量の金貨が散らばっているのです。
ずっと親の操り人形として生きてきました。人前は愚か、家族の前でさえ、裸になったことなんてありません。そんなことをしたら、本当に殺されていたでしょう。両親は非常に厳格でした。そうしないと、他の貴族と結婚することが出来なくなるからです。家の繁栄は全て嫁ぎ先にかかっていますから。
これほど馬鹿げた世界があるでしょうか?
裸になってごらんなさい。自分がどれほど孤独であるのか、よく分かります。
男に体を預けたら……。
汚らわしいですか?自分の力で生きているって感じられるんです。
ああっ、なんて素晴らしいことなのかしら!
「カリーナ殿……」
私の名前を呼ぶ声がする!知り合い?
声の主は私のすぐ後ろにいました。同い年くらいでしょうか?容姿は稀に見るほど端麗なのですが、どうも顔色がよくありません。なにか病にでも侵されているのでしょうか?
「トラ―リ県のストレプトです……」
ストレプト……ストレプト……ストレプト……ストレプト王朝?
歴史の教科書で読んだことがあります。確か、100年前まで国を統治していた偉大な王朝だったはずです。なるほど……彼はその末裔で、私と同じ運命にあるというわけですか……。
「あの……その……」
頭が弱いんでしょうか?今一つ、言わんとすることが分かりません。私はしびれを切らしました。
「寝たいんですか……?」
単刀直入な質問です。私は確信していました。ストレプト氏は間もなく天に召されるのです。その前の思い出作りとでもいったところでしょうか?
死ぬ前に女を知りたい……。
しかしながら流石は王族です。得体の知れない娼婦ではだめなのでしょう。
そこで、私の噂をかぎつけたんです。
隣村に、身体を売る元令嬢がいるって。
確か、ストレプト99代皇帝の孫を世話していたのが私のお父様でした。その縁があってかどうかは分かりませんが、こうして私と巡り合った……。
ふふふっ……。面白い肴ですね……。
ことが済んだら、トラ―リ県に乗り込みましょう。ストレプト家に真実を告げます。そうすれば……落ちぶれた貴族とは言え、元王族です。
もっともっとたくさんの利権が入ってくるでしょう。
大きな邸宅を構えて……私を罵って来た市民たちを奴隷にして……ハーレムを作って……!
「私と結婚していただきたい……」
結婚ですって?
私は思わず吹き出してしまいました。そうですか、結婚ときましたか?
それなら、話が早い!
「喜んでお受けいたします……」
ああっ、私も貴族の血を引く罪深き女のようです。結局は利権にすがって、市民を迫害しないと気が済まないみたい。泣き叫ぶ彼らを助けるふりをするのが……これまた面白い!
ストレプトの仮面を引きちぎって、カリーナ国の造成を!
トラ―リ県までの旅は、子供の頃の散歩か、あるいは、それ以上にはしゃいでいました。これからスタートする第二の人生がどれほど素晴らしいものか、考えるだけで笑みが絶えません。
「ストレプト様……」
私は恭しくお辞儀をしました。
「この度は誠にありがとうございます……」
「いえいえ、こちらこそ……。その……ありがとう……」
ストレプト様は私を城に招き入れました。私と同じで一人暮らしみたいです。それにしても……落ちぶれたとは言え、絢爛な造りです。
「これから……よろしくね……」
「はいっ!よろしくお願いします!」
二人の笑い声がゆっくりと静かに響き渡りました。
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