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その15

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私はそれから、侍従たちから王子様の性格について教えてもらった。また、ひどく恐がりであることを教えてもらった。

そして、王子様には多くの側室が既に待機していることを知らされた。

「それで、王子様は夜な夜な側室の方々に会うために、部屋を行き来することになるわけでございますが……どうも、王宮の夜は暗く、王子様の足取りが危ないわけでございます。そして……可能であるならば、王妃であられるマリア様が、王子様を側室の部屋にご案内なさるのがよろしいかと存じます……」

私は最初、耳を疑った。つまり、平たくいえば、主人の不倫相手の元に行って、その顔を拝んでこい、ということだ。

そんなことが、王宮ではまかり通っているのだろうか?それが慣例ということなのか?

当たり前のことで、こんなことでいちいち腹を立てるのは問題なのだろうか?


「マリア様?いかがなさいましたか?」

「いえ、私は大丈夫です。なんでもありませんよ、なんでも。私は大丈夫ですから……」

平気であることを装った。侍従たちは、

「それを聞いて安心いたしました!」

と言った。何が安心なのだろうか?さっぱりわからなかった。


いずれにしても、この程度の話でいちいち文句を言ってしまうと、要するに王妃の器なし、と言われてしまいかねないと思ったので、

「わかりました」

と答えた。

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