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その10 part1

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「それで……この幻の空間って何なんですか???」

私がこう質問すると、男は呆れ顔で、

「本当に知らないのかい???」

と聞き返しました。

「ええ、本当に知らないのです。ですから、教えてください」

「やれやれ……でも、お前さんは本当にラッキーだよな。テレポートバグで、ここにやって来るんだからな。ここは本来、最上級レベルの魔法使いしか到達できないとされる、始まりの空間、そして、終わりの空間に通じるゲートなんだ」

「ゲート……ということは、ここは入り口なのですね???」

「ああ、そうだ。ここでもう一度、テレポートを試みる。さあ、私の手をしっかり握っているんだよ」

そう言って、男は私に手を差しのべました。

「あの……汚れてますけど???」

「ああ、気にすんな。それより、早くしないと置いていくぞ???」

置いていく……また一人になるのが嫌だった私は、言われた通り、男の少し汚い手を握りました。

「さあ、行くぞ!!!」

男が目をつぶった瞬間、私たちはまた新しい空間に到着しました。

「ここが、始まりの空間だ……」

男がそう言いました。でも、何もありませんでした。

「あの……ここで何が始まるんですか???」

「おいおい、お前さんには見えないのかい???仕方ないな。ほら、このグラスをかけてみろ」

そう言って、男は懐からグラスを取り出しました。私は男の言う通り、グラスをかけました。すると、不思議な空間に様変わりしました。無限に広がる空間の中央に大きな機械のような有機物が存在し、そこから人を模した赤ちゃんたちが流れてきました。そして、ハッチが開いて、赤ちゃんたちが空間の外へ運ばれていきました。

「始まりって……ひょっとして、命の始まりですか???」

「その通りだ。ここで、人間としての命が始まる。そして……母親の元に届けられる。母親は子を産む……そう言うわけだ……」

「なるほど……それで、おじいさんがここに来た理由は、何かあるのですか???」

「ああ、母親の元に届けられる前に、母親や、あるいはその家族が子供を意図的に殺すってことがあるじゃないか。そういった赤ん坊は、もう一回ここに戻って来るんだ。ほら、そこの一角にゴミ置き場みたいなのがあるだろう。そこに捨てられた赤ん坊たちが溜まっていくんだ……」

男の言っていることは非常に残酷でしたが、言っているとおり、暫くすると、外界から再び戻ってきた赤ちゃんたちが、溜まっていきました。


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