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手記 前編
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これは、去年の来年を生きる私に宛てた手紙である。
時代は22世紀の真っただ中。目まぐるしい変革の末にたどり着いた社会。私はきっと何かを期待しているに違いない。未来の話というものは、大方楽観的に想像するものである。そうでなければ、古い私は今すぐ消滅してしまうに違いない。
しかしながら、やはり理想とは誤りの連鎖である。命を終えた星のような社会、とでも呼べばいいのだろうか。私はこれ以上的確な言葉が見つからない。
町人に今はまっていることは何かと尋ねると、驚くことなかれ、シンプルな答えである。それは集金である。人が金を欲するのはいつの時代であっても同じことである。問題はその手法である。私が生まれた頃の流行と言えば、せいぜい詐欺だっただろうか。もっとも、対象となるのが一部の特権に限られていたため、大きな問題として取り上げられることはなかった。
今はどうだろうか?
こんな問いを立てること自体、バカバカしいと思わないか?他人の趣味を覗いたところで、自分に何の得があるだろうか?ご名答。その答えは私の職業を明らかにすれば分かることだ。
世間は犯罪のオンパレードである。考え方によれば、あらゆる事象が独立して許容される世界である。殺人でさえ、ビジネスとして成立する。
私の職業は殺し屋である。
私の名前は、と問われてもその答えを知らない。仮にAとでも名付けておこう。
私がこの手紙を書くきっかけとなった最後の案件について、古い私にお知らせしよう。
西暦2118年7月7日。私は、某大学の理事長と名乗る男から、殺人を依頼された。ターゲット情報を確認すると、どうも、国立の科学研究所において、人間死の研究に携わっていたらしい。
科学的考察はとっくに終わった。後は、“エターナルライフ”、即ち、絶対的な生命をどのようにして完成させるか。新聞で一度読んだことがある。大した科学の進歩だ。彼は、このとてつもない研究において、ある仮説の証明に成功したそうだ。無論、私はその詳細を知らない。ただ、素人目線で言えることは、過去数多の科学者が成し得なかった偉業を完成させた天才、ということくらいだ。当然、命を狙われるに値する人物である。
コンタクトは、一通の簡素なメールだった。ターゲットは、民間の研究所に所属する研究員。理由は不明。まあ、内容の性質からして、有りがちな話だ。報酬は一億。破格だ。大方百万が相場といったところだから。
私は当然引き受けた。今となってみると、この決断がどれだけ浅はかであったのかが分かる。その時分の私は、路傍の石のような人間でしかなかったのだから、過ちに気が付くはずはなかった。
時代は22世紀の真っただ中。目まぐるしい変革の末にたどり着いた社会。私はきっと何かを期待しているに違いない。未来の話というものは、大方楽観的に想像するものである。そうでなければ、古い私は今すぐ消滅してしまうに違いない。
しかしながら、やはり理想とは誤りの連鎖である。命を終えた星のような社会、とでも呼べばいいのだろうか。私はこれ以上的確な言葉が見つからない。
町人に今はまっていることは何かと尋ねると、驚くことなかれ、シンプルな答えである。それは集金である。人が金を欲するのはいつの時代であっても同じことである。問題はその手法である。私が生まれた頃の流行と言えば、せいぜい詐欺だっただろうか。もっとも、対象となるのが一部の特権に限られていたため、大きな問題として取り上げられることはなかった。
今はどうだろうか?
こんな問いを立てること自体、バカバカしいと思わないか?他人の趣味を覗いたところで、自分に何の得があるだろうか?ご名答。その答えは私の職業を明らかにすれば分かることだ。
世間は犯罪のオンパレードである。考え方によれば、あらゆる事象が独立して許容される世界である。殺人でさえ、ビジネスとして成立する。
私の職業は殺し屋である。
私の名前は、と問われてもその答えを知らない。仮にAとでも名付けておこう。
私がこの手紙を書くきっかけとなった最後の案件について、古い私にお知らせしよう。
西暦2118年7月7日。私は、某大学の理事長と名乗る男から、殺人を依頼された。ターゲット情報を確認すると、どうも、国立の科学研究所において、人間死の研究に携わっていたらしい。
科学的考察はとっくに終わった。後は、“エターナルライフ”、即ち、絶対的な生命をどのようにして完成させるか。新聞で一度読んだことがある。大した科学の進歩だ。彼は、このとてつもない研究において、ある仮説の証明に成功したそうだ。無論、私はその詳細を知らない。ただ、素人目線で言えることは、過去数多の科学者が成し得なかった偉業を完成させた天才、ということくらいだ。当然、命を狙われるに値する人物である。
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私は当然引き受けた。今となってみると、この決断がどれだけ浅はかであったのかが分かる。その時分の私は、路傍の石のような人間でしかなかったのだから、過ちに気が付くはずはなかった。
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