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昼の珍事 1

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「美味しい……これは珍味だ……」

クラーギン様は食堂でハンバーグを食べていました。ハンバーグは庶民の食事ですよね。クラーギン様も、恐らく食べたことはなかったのでしょう。ゆえに珍味……なのでしょうか?

「すごい……クラーギン様がハンバーグをお召し上がりになっている……」

「私の好きなハンバーグを食べておられる!」

「これは珍事件だ!」

外野がますますざわつきました。事を知ったカーチャは私たちのテーブルまで戻ってきて、

「クラーギン様はハンバーグがお好きなようよ!」

と言いました。因みに、私もその時、ハンバーグを食べていました。

「なるほど……あなたとクラーギン様は気が合うようね……。ハンバーグが好きな貴族なんて聞いたことがないもの。私だって、ステーキの方が好きだし……」

貴族趣味というのは、大抵の場合ステーキでした。肉をぐちゃぐちゃに練り込んだハンバーグは下品だと言われていました。しかしながら、幼いころ、お母様が良く作ってくださった縁もあって、私はハンバーグが大好きになりました。クラーギン様がハンバーグを気に入ったというのは、少し嬉しい話でした。


「クラーギン様!お待ちください!」

さて、しばらくして、食堂に似つかわしくない人間がもう一人やってきました。最高位公爵令嬢のドルベツコイさんです。彼女は最初、自分で言ったことを思い出したのか、入り口でじたばたしていました。しかしながら、クラーギン様が、

「君もここへ来れば?」

と促したので、仕方なく入ってきました。左手には大きな包みの弁当がぶら下がっていました。

「クラーギン様!一体全体、何をお召になっているのですか?」

「やっぱり、君も知らないのか?これはハンバーグと言ってな、農民や貴族の間で親しまれている食事なんだそうだ。いや、想像以上に美味くてびっくりだよ!」

「ハンバーグですって?」

ドルベツコイさんが叫びました。

「クラーギン様!あなたのようなお方が、そんな庶民の食事をお召し上がりになっては、王子の冠が泣きますわよ!さあさあ……」

ドルベツコイさんはハンバーグののった皿をどけて、代わりに自ら持ってきた弁当一式を広げました。なるほど、噂には聞いていたが、まるで四季を表しているようでした。

「クラーギン様?最初におっしゃっていただければ、もう少し早く準備できましたのに。さあ、我が公爵家特製の弁当をご賞味下さいませ!」

さすがのクラーギン様でも、目の色を変えて、ドルベツコイさんの弁当を食べる……そう誰もが思っていました。

「ドルベツコイ、君も食ってみないか?ハンバーグ」

クラーギン様はそう言いました。
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