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昼の憂鬱

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午前の退屈な授業が川のように流れ去っていき、昼休みになりました。私は男爵令嬢なので、煌びやかな昼食を持ち合わせておりません。クラーギン様やドルベツコイさんなどの上流貴族は、お弁当という煌びやかな昼食を持ち合わせていることを知っています。

私は料理が全くできません。ですから、煌びやかな昼食を準備するには、お母様の力を借りないといけません。しかしながら、お母様はその他の家事や農作業で非常に忙しいわけですから、なかなか頼むことができません。

「お弁当作ってあげられなくて、ごめんね」

昔、お母様が私に言いました。私はその時、思わず泣いてしまいました。

「ジュリア?食堂行く?」

カーチャが誘ってきました。いつも、カーチャと一緒に食堂でランチタイムを過ごしています。ドルベツコイさんいわく、食堂に一度でも足を踏み入れたものは、下流貴族のレッテルを貼られるのだそうです。なるほど、確かに私は最下層貴族の令嬢なのです。ですから、クラーギン様と婚約するだなんて……夢のまた夢なのでしょうね……。

「ジュリア!」

カーチャがいきなり私の肩をたたくものですから、驚いてしまいました。

「また、自分は最下層の貴族だ、とか思ってたんでしょう?」

どうやら、カーチャには全てお見通しのようでした。

「ドルベツコイさんに昔言われたのよ。食堂に足を踏み入れた人はね……」

「あーあっ、分かった、分かったからね。さあっ、ランチタイム始めるよ!」

カーチャは私が悲しそうな顔になると、途端に話を遮って、その場を明るくしようと試みました。そんなカーチャを見ていると、なんだか馬鹿らしくなって、一時、恋煩いから解放されました。

「カーチャ……ありがとう」

「どういたしまして。もう、何年幼馴染やってると思ってんの?」

「はい、ごめんなさい……」

そんなやり取りをしているうちに、食堂内が少しずつざわついていることに気がつきました。

「何かしら?」

カーチャもざわつきに混じろうとしていました。好奇心旺盛なので、みんなが注目することはいち早く知ろうと思っていたようです。俗にいう野次馬根性でしょうか?

「見て!クラーギン様よ!」

「クラーギン様が食堂にいらっしゃったわ!」

「あのクラーギン様が……食堂に?」

遠くから聞こえてきたフレーズ、つまり、食堂とクラーギン様。この二つを結びつけることは不可能でした。だって、最上位貴族の中で更に最上位に君臨するクラーギン様が、食堂でランチタイムを過ごすはずないのですから。
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