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その6

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「はしたない……あなた様は自国の民をはしたない存在だとお考えなのですか?」

子供たちは、ミクリッツ様の元に駆け寄ってきた。

「私を護衛してくれる勇敢な男たちも、しょっちゅう言っています。このように汚い人間と戯れてはいけない、と」

貴族は庶民と交わらない……そう教わってきたから、ミクリッツ様のやり方は不思議だった。

「私にはどうも納得がいかないのです。貴族とか庶民とか、そういう違いなんてどうでもよくありませんか?」

ミクリッツ様は、子供たちのこしらえた泥団子を丁寧に受け取った。

「どうもありがとう」

「ミクリッツ様!お召し物が汚れてしまいますわよ!」

泥が服につきそうだったので、私は思わず大声で注意した。

「かまいませんわ。服なんて、後から洗えば済むものでしょう。それよりも、私は子供たちとの触れ合いを大切にしたいのです。子は宝と言いますね。私たち貴族が、国中の子供たちの親になればいいのです。きちんと育てて、将来国のために働いてくれれば、それでいいじゃありませんか。一方的に押し付けては、彼らがかわいそうですから。私たちは共存関係なのです」

そう言われてみると、確かに貴族とはこうあるべきなのかもしれないと思った。一方的な支配ではなく、共存すると言う考え方は、画期的だと思った。私たち貴族は、互いに揚げ足を取るのをやめて、1つの目的のために手を携えて努力するべきなのだと思った。そして、それを既に実現しているミクリッツ様が、この国の民に広く慕われていることは、容易に想像することができた。
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