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その59 トロイへの旅路
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イズールからトロイまでの道のりは、リチャードの言う通り平坦な道のりだった。ただ同じ景色がずっと続く感じだった。それも一面薄緑色の大地!私の大好きな故郷の田園と似ていて、目が和んだ。リチャードもこの風景が好きなようだった。
「まるで、新婚旅行のようですね」
そんな洒落たことを、リチャードが言った。なるほど、この先に待ち構えている運命は少々過酷であるが、この景色を見ている内は、全て忘れさせてくれる。
「私はあなたと歩けて嬉しいわよ」
「クリス!私もあなたと一緒に旅ができて幸せですよ!」
朝日が眩しかった。このまま、私たちの旅路を照らし続けてくださいますように。私は時折神様を思い浮かべてお祈りをした。運命を変えるにはやっぱり神頼みだと思ったからだ。
「クリス!危ないです!」
と、その瞬間、リチャードが私の腕を無理やり引っ張った。
「ああっ……なに、どうしたのよ?」
「地面をよく見ないと。ほら、ここは窪地になっていますよ。目を閉じたら危ないじゃないですか……」
なるほど、そう言われて見れば、この道はあまり舗装されていない。砂利が多いだけならばまだいいが、時々穴が開いていたり、窪地になっていたりして、トラップみたいになっている。
「ありがとう、助かったわ……」
「よく前を見ないとダメですよ。あなたは勇敢だが、こうして時々おっちょこちょいなんですから……」
「でも、困ったらあなたが助けてくれるのでしょう?」
「…………善処します……」
「よろしい!さあっ、旅を続けるわよ!」
「はい、分かりました」
私たちの足取りは非常に軽かった。未開の地を探検する冒険家は、きっとこんな感じなんだろう、と思った。好奇心と恐怖、そして頼れる相棒。私はまさに運命を旅する冒険家になったのだ。
「まるで、新婚旅行のようですね」
そんな洒落たことを、リチャードが言った。なるほど、この先に待ち構えている運命は少々過酷であるが、この景色を見ている内は、全て忘れさせてくれる。
「私はあなたと歩けて嬉しいわよ」
「クリス!私もあなたと一緒に旅ができて幸せですよ!」
朝日が眩しかった。このまま、私たちの旅路を照らし続けてくださいますように。私は時折神様を思い浮かべてお祈りをした。運命を変えるにはやっぱり神頼みだと思ったからだ。
「クリス!危ないです!」
と、その瞬間、リチャードが私の腕を無理やり引っ張った。
「ああっ……なに、どうしたのよ?」
「地面をよく見ないと。ほら、ここは窪地になっていますよ。目を閉じたら危ないじゃないですか……」
なるほど、そう言われて見れば、この道はあまり舗装されていない。砂利が多いだけならばまだいいが、時々穴が開いていたり、窪地になっていたりして、トラップみたいになっている。
「ありがとう、助かったわ……」
「よく前を見ないとダメですよ。あなたは勇敢だが、こうして時々おっちょこちょいなんですから……」
「でも、困ったらあなたが助けてくれるのでしょう?」
「…………善処します……」
「よろしい!さあっ、旅を続けるわよ!」
「はい、分かりました」
私たちの足取りは非常に軽かった。未開の地を探検する冒険家は、きっとこんな感じなんだろう、と思った。好奇心と恐怖、そして頼れる相棒。私はまさに運命を旅する冒険家になったのだ。
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