アポクリファの黄昏

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第一章

戦い その2

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「何故だ?何故なんだ?グレッグ……!」
 兵士は息絶えた青年兵士を抱きかかえた。
「どうして?お前が死ななきゃならない?何か悪いことをしたのか?子供の頃、母さんの大切にしていた花瓶を割ってそのまま黙っていたことか?いさかいを起こして警官に補導されたことか?そんなの……あぁ、神様!あなたはこの瞬間、何をなさっていたのですか!」
 兵士は遥か遠くの天を見遣った。大粒の涙がお天道様の射光を拒絶した。
「どうして?たった一人の家族なんだ……。神様……私らが何をしたというのでしょう?お答えください!」
「その答えは……あちらの方に訊くといい……」

 フィッシャーが指さした先には一面の雑木林が広がっていた。
「Mr. Japanese ! Come on!」
 私はフィッシャーの手招きに答えた。ちょうどいい。まだ弾は残っている。二人殺すには十分だ。 
「あいつが……あいつがグレッグを……?」

 私はゆっくりと二人の元へ駆け寄った。兵士は最初私のことを睨み付けた。間合いが狭まるにつれ、その怒りは恐怖へと変わっていった。私の顔は……そんなことはどうでもいい。碁石浜を汚した罪人たちを葬らなければならない。


 銃口を兵士に向けるのが容易かった。兵士は恐れ戦いて失禁した。
「Stop!」
「……止めろって……言っているのですか?」
 フィッシャーは頷いた。
「そうですか……」
 私は兵士の額に銃口を宛がった。
「No! Please......」
「お前たちの罪は神様に変わって私が裁く……」
 躊躇することなく引き金を引いた。兵士は最期に天を仰ぎ見た。全てが終わったことを神様に告げたようだった。瞳は……悲しみ、怒り、恐れを忘れていた。

「勇敢な軍人の面構えだ……。昨日あれほど輝いていた瞳が、今はもう悪魔のように濁っている……」
 フィッシャーは言った。私は銃口をフィッシャーに向けた。
「おかげさまで」
「おっと……そんなに焦ることはないでしょう。どのみち死ぬんです。どうです。最後に話し合いでも……」
「問答無用です……」
 私は引き金を引いた。弾は……フィッシャーの腕をかすめた。
「…………っ!」
 何度やっても駄目だった。私の手元には……何も残っていなかった。
「少し休みましょうや」
 フィッシャーは面倒見のいいおじさんのように笑った。
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