9 / 13
第一章
赤き空 その2
しおりを挟む
「俺がお前らを地獄まで叩き落してやる。どうした?怖いのか?お前らは神様に祈ることしかできねえっていうのか?笑わせてくれるな!」
それにしてもどうして?父はこれほど勇ましいの?
彼を突き動かしているものは何?
「おぅっ、隆司!そんなところにいたのか!」
父は私がすぐ近くにいることに気が付いた。
「いいか、戦争って言うのは、相手の大将を殺せばそれでいいんだ。大将は……間違いねぇ、あの一番でけえトンボに乗っているんだ。隆司!あのトンボを打ち落とすぞ!」
「父さん……気を確かに持ってください。どうやって打ち落とすことができましょうか?」
「できるに決まってるさ!あいつらはみんな不届きものだ。お天道様は常に正しい者の味方だ。俺が死んで……隆司、お前がそれをやってくれたなら……俺はもう満足だぁ!」
「そんなこと……」
「時間がないんだ!隆司、有りっ丈の鉄砲と竹やりを持ってこい。空まで届けてやるぞ!ごちゃごちゃ言わずにすぐ準備しろ!」
「父さん……!」
「このまま村が無くなってもいいっていうのか?隆司!お前の育った大切な故郷じゃねえか!それを……こんなふうにぶっ壊されて……悔しくはねえのか!」
怪物が次々と増殖し、牙をむく。
通い慣れた学校……。跡形もなく消滅した。
よく買い物をした商店街が……間もなく消滅しようとしている。秘密基地を作った雑木林は……勢いよく燃えている……。
碁石浜は?あそこは無事だろうか?
フィッシャーは……?
「お前は……俺と正反対でガキの時分から優しかった……。俺と正反対で泣き虫だった……。俺と正反対でバカだった……。物心ついた頃には、俺の言うことを聞かなくなった。でもなぁ……!」
あの父が……空を見上げて泣いている。
自分の死を悟ったから?怖気づいたから?
「俺も隆司も………この村で育ったんだぁ!」
私は今まで戦いを好まなかった。戦いに意義を見出さなかった。父の言う通り、バカで泣き虫で……優しかった。人が、動物が、植物が……その姿をとどめたまま命を終えていく様を見続けてきた。私は無性に泣き叫んだ。
「一度しかない命だ。好きなように使っていいが、決して無駄にはするなよ。お天道様はいつもお前を照らしている。笑って手を振り返してやれ。それが自然にできればいいんだ」
父と一緒に碁石浜を歩いた日々……。それはあの夏の思い出だった。
それにしてもどうして?父はこれほど勇ましいの?
彼を突き動かしているものは何?
「おぅっ、隆司!そんなところにいたのか!」
父は私がすぐ近くにいることに気が付いた。
「いいか、戦争って言うのは、相手の大将を殺せばそれでいいんだ。大将は……間違いねぇ、あの一番でけえトンボに乗っているんだ。隆司!あのトンボを打ち落とすぞ!」
「父さん……気を確かに持ってください。どうやって打ち落とすことができましょうか?」
「できるに決まってるさ!あいつらはみんな不届きものだ。お天道様は常に正しい者の味方だ。俺が死んで……隆司、お前がそれをやってくれたなら……俺はもう満足だぁ!」
「そんなこと……」
「時間がないんだ!隆司、有りっ丈の鉄砲と竹やりを持ってこい。空まで届けてやるぞ!ごちゃごちゃ言わずにすぐ準備しろ!」
「父さん……!」
「このまま村が無くなってもいいっていうのか?隆司!お前の育った大切な故郷じゃねえか!それを……こんなふうにぶっ壊されて……悔しくはねえのか!」
怪物が次々と増殖し、牙をむく。
通い慣れた学校……。跡形もなく消滅した。
よく買い物をした商店街が……間もなく消滅しようとしている。秘密基地を作った雑木林は……勢いよく燃えている……。
碁石浜は?あそこは無事だろうか?
フィッシャーは……?
「お前は……俺と正反対でガキの時分から優しかった……。俺と正反対で泣き虫だった……。俺と正反対でバカだった……。物心ついた頃には、俺の言うことを聞かなくなった。でもなぁ……!」
あの父が……空を見上げて泣いている。
自分の死を悟ったから?怖気づいたから?
「俺も隆司も………この村で育ったんだぁ!」
私は今まで戦いを好まなかった。戦いに意義を見出さなかった。父の言う通り、バカで泣き虫で……優しかった。人が、動物が、植物が……その姿をとどめたまま命を終えていく様を見続けてきた。私は無性に泣き叫んだ。
「一度しかない命だ。好きなように使っていいが、決して無駄にはするなよ。お天道様はいつもお前を照らしている。笑って手を振り返してやれ。それが自然にできればいいんだ」
父と一緒に碁石浜を歩いた日々……。それはあの夏の思い出だった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
3
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる