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第一章
命の選別 その1
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軍人に対する恐怖というよりは、好奇心の方が強かった。私は西洋人の元に駆け寄った。幸い生きている。辺りには粉々に砕け散った戦闘機の残骸が燃えている。
「Your name please ?」
西洋人は日本人よりも親しみやすいのか?いきなり人の名前を訊くことはないだろう。答えていいのか……?
「怪しいものではありません……といっても私はあなたの敵なわけですね?」
敵……戦争。彼は軍人である。ここは日本人として……戦うべきか?彼にはハンデがある。太ももから足先にかけて大きな怪我。確実に殺すことが出来る。そうすれば……。
「私を殺しますか?」
彼はそう言った。父と同じように殺気立っているのだろうか、それとも……?
「私の身分は中佐です。ほら……空軍の証明書……これをどこかしこかに持って行けば、それなりの恩賞が出るでしょう。なによりも、あなたに日本人としての誇りが深く刻まれる。悪い話じゃない……。ほら、遠慮はいりませんや。どうぞ、好きになさい」
軍人というものは、とどのつまり、どこの国でも同じように教育されているのだろうか?日本人ばかりが死を喜んで受け入れると思っていたがどうも違うらしい。日本人としての誇り?アメリカ軍人を殺すことが誇りになるのか?神様はそんなことしか考えないのか!全く……どいつもこいつも可笑しくないか?
「さあ……日本の若者よ」
「私は……日本人である前に一人の人間です」
別に説教をするつもりはなかった。感情を爆発させた結果、説教みたいになった、ということである。
「私はそもそも戦争を肯定しません。自分の命を懸けてまで得られるものって何ですか?国が栄えるっていうのは、そういうことじゃない。私たちが生き続けることなのです。国なんて物は、数多の人間を一時的に入れておく箱物です。それが……あなたと私の祖国は何を間違ったのか、その箱物を壊すことに奔走している。あぁ、馬鹿らしいと思います。だから……そんなのが日本人としてのプライドなのだとしたら、私のほうこそ喜んで死を受け入れましょう。この浜はね……私の思い出で満ち溢れています。生きる希望を失った人間の最期……。いい舞台です!」
西洋人は時折相槌を打ちながら聴いていた。
「まるで牧師のような方だ」
彼はそう言った。なるほど……宗教に疎いから詳しくは分からないが、キリスト様の教えだ。
「Your name please ?」
西洋人は日本人よりも親しみやすいのか?いきなり人の名前を訊くことはないだろう。答えていいのか……?
「怪しいものではありません……といっても私はあなたの敵なわけですね?」
敵……戦争。彼は軍人である。ここは日本人として……戦うべきか?彼にはハンデがある。太ももから足先にかけて大きな怪我。確実に殺すことが出来る。そうすれば……。
「私を殺しますか?」
彼はそう言った。父と同じように殺気立っているのだろうか、それとも……?
「私の身分は中佐です。ほら……空軍の証明書……これをどこかしこかに持って行けば、それなりの恩賞が出るでしょう。なによりも、あなたに日本人としての誇りが深く刻まれる。悪い話じゃない……。ほら、遠慮はいりませんや。どうぞ、好きになさい」
軍人というものは、とどのつまり、どこの国でも同じように教育されているのだろうか?日本人ばかりが死を喜んで受け入れると思っていたがどうも違うらしい。日本人としての誇り?アメリカ軍人を殺すことが誇りになるのか?神様はそんなことしか考えないのか!全く……どいつもこいつも可笑しくないか?
「さあ……日本の若者よ」
「私は……日本人である前に一人の人間です」
別に説教をするつもりはなかった。感情を爆発させた結果、説教みたいになった、ということである。
「私はそもそも戦争を肯定しません。自分の命を懸けてまで得られるものって何ですか?国が栄えるっていうのは、そういうことじゃない。私たちが生き続けることなのです。国なんて物は、数多の人間を一時的に入れておく箱物です。それが……あなたと私の祖国は何を間違ったのか、その箱物を壊すことに奔走している。あぁ、馬鹿らしいと思います。だから……そんなのが日本人としてのプライドなのだとしたら、私のほうこそ喜んで死を受け入れましょう。この浜はね……私の思い出で満ち溢れています。生きる希望を失った人間の最期……。いい舞台です!」
西洋人は時折相槌を打ちながら聴いていた。
「まるで牧師のような方だ」
彼はそう言った。なるほど……宗教に疎いから詳しくは分からないが、キリスト様の教えだ。
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