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その9

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「お姉様は一体どちらへ行かれたんですか?」

ローズがイングリットの居場所をしきりに知りたがっていた。

「そんなの、私にもわからないわよ」

母親はなんとなく知らせないほうがいいと思った。

「ふーん……そうなんですか……」

ローズはがっかりしたようだった。

「お姉様にも祝って欲しかったのになあっ……」

母親はこの時、ローズがあまりにも卑劣な女であると感じた。しかしながら、皇帝を始め、夫でさえ、

「素晴らしい」

と言い続ける状況の中、一人異を唱えることはできないと思った。

「次にお会いする時は、ぜひお姉様も一緒に来ていただきたいですわ!」

ローズは高らかに笑った。これは悪魔の囁きに等しいと、母親は思った。
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