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夜汽車
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無数の儚い星々を列車は忙しく運んでいた。間もなく終点……旅の終わりを告げるアナウンスが車内に響きわたった。はあっ、とため息を一つついてみる。明日からまた働かなければならない。私の仕事は無数の星を生産すること。誰の目も届かない闇夜の中に美しい鶴の声を響かせてみる。
「よう、今日も盛っているね!」
目をぱっと見開いて、旅人が通り過ぎていく。どうせならお金を恵んでもらうとありがたいんだけど……。
「あなたとの婚約を破棄します!」
最近よくある小説ネタ……ではなく、私の隣に座っている茶髪ギラギラな非処女(と解釈)がその隣に座っている男に向かって放った言葉である。
「そんな、どうして?」
よく見るといい男である。勿論、金づるとしてね。私だって、あなたの隣人ほどではないけれど、今ここで脱げば、そりゃ、童貞をついさっき卒業したばかりの君には刺激が強いかな?
「どうしてもこうしても、あなたと一緒にいたってつまらないから!」
なんとなく分かる。彼は、きっとそういうタイプだ。大体、最初からお似合いじゃないんだよ。処女をあげまくっている女の子と宝物を守る騎士見習いの恋なんて、叶うはずがない。
「何が不満なんだ?」
今度は男の子が怒り出した。でもね、勝敗は最初から分かっている。
「うるさいんだったら!」
女の子が男の子の頬を平手打ちしてノックアウト。女の子は男の子の財布を抜き取って、金を巻き上げていった。
こういうシチュエーションは燃える。無一文になった男の子から、更に搾り取るという……あっ、私悪女だ。
とりあえず、アプローチしてみよう。
「すみません!」
「はいっ?」
女の子がいなくなったことで生まれた空間をなんとか埋めてみた。
「ああっ、少し酔っちゃったみたいなんですぅっ……よかったら泊めてもらえませんか?」
因みに、この車内には二人しかいない。オブザーバーや審判の一切いない密室である。だから……。
「止めてくださいったら!」
「あれっ?でも君のココは素直だよぉ…………」
こんなことして楽しむなんて、やっぱり問題かしら?どのみち最初から終わった人生なのだから、とことん楽しんだって悪くないでしょう?これが私のやり方なの。
「ほらっ、ハンカチ……」
「へえっ?」
列車はとっくに終着を過ぎていた。私は慌てて列車から飛び降りようとした。
「危ないですよ!」
男の子が必死に私を止めた。分かっている。このまま飛び下りたら、本当に終わってしまう。でも引き返さないと、明日が終わってしまう。
「ほら、これで顔を拭いてください……」
白く曇った鏡に浮かび上がった私の顔は遠い空を見ていた。瞳には満点の星空が悲しく映っていた。
「ありがとう……」
私はハンカチを受け取り、顔を拭いた。
「この列車、どこまで行くんでしょうね?」
男の子は問うた。
「知らない」
私は答えてみた。
「そうですね。分かるはずないか……」
男の子は私の方にちらっと視線を向けた。
「でも、とりあえず明日に向かっているみたいですね……」
男の子の頬から血が滲んでいた。女の子の平手打ちは随分と強烈だったようだ。
「これ、使えば?」
私は男の子が渡してくれたハンカチを返そうとした。
「これを?あなたが使ったので拭けというんですか?」
男の子はぷすっと笑った。
「ああっ、ごめん……」
私は相当無神経だった。
「いや、いいんですよ。ああっ、久しぶりに心の底から笑った気がした」
男の子は私の手からハンカチをとった。
「あなたの……涙の味がする……」
男の子は一つずつ、私の雫を指にのせて楽しんでいるようだった。
「少しヒリヒリするけれど、おかげで治りました。ありがとうございます」
そう言って、男の子は列車の外に出ようとした。
「ちょっと!」
私は男の子の手を無理やり引っ張った。
「これでもういいんです。婚約は1回までと決まっているのですから……」
「誰がそんなこと決めたのさ!」
「私は騎士見習いですから……」
「死ぬことはないでしょう!」
「死んだも同然なんです……」
男の子は私の元を本気で離れようとした。
ならば
決まっている
次の列車がやってくるまで、何十年、何百年かかるのか、私には分からない。一度レールを外れてしまえば、一生闇夜の中を彷徨うのかもしれない。それでも私は生き続ける。
「本当に、君はバカな人だ」
だって、バカになる覚悟が出来ちゃったから。
「よう、今日も盛っているね!」
目をぱっと見開いて、旅人が通り過ぎていく。どうせならお金を恵んでもらうとありがたいんだけど……。
「あなたとの婚約を破棄します!」
最近よくある小説ネタ……ではなく、私の隣に座っている茶髪ギラギラな非処女(と解釈)がその隣に座っている男に向かって放った言葉である。
「そんな、どうして?」
よく見るといい男である。勿論、金づるとしてね。私だって、あなたの隣人ほどではないけれど、今ここで脱げば、そりゃ、童貞をついさっき卒業したばかりの君には刺激が強いかな?
「どうしてもこうしても、あなたと一緒にいたってつまらないから!」
なんとなく分かる。彼は、きっとそういうタイプだ。大体、最初からお似合いじゃないんだよ。処女をあげまくっている女の子と宝物を守る騎士見習いの恋なんて、叶うはずがない。
「何が不満なんだ?」
今度は男の子が怒り出した。でもね、勝敗は最初から分かっている。
「うるさいんだったら!」
女の子が男の子の頬を平手打ちしてノックアウト。女の子は男の子の財布を抜き取って、金を巻き上げていった。
こういうシチュエーションは燃える。無一文になった男の子から、更に搾り取るという……あっ、私悪女だ。
とりあえず、アプローチしてみよう。
「すみません!」
「はいっ?」
女の子がいなくなったことで生まれた空間をなんとか埋めてみた。
「ああっ、少し酔っちゃったみたいなんですぅっ……よかったら泊めてもらえませんか?」
因みに、この車内には二人しかいない。オブザーバーや審判の一切いない密室である。だから……。
「止めてくださいったら!」
「あれっ?でも君のココは素直だよぉ…………」
こんなことして楽しむなんて、やっぱり問題かしら?どのみち最初から終わった人生なのだから、とことん楽しんだって悪くないでしょう?これが私のやり方なの。
「ほらっ、ハンカチ……」
「へえっ?」
列車はとっくに終着を過ぎていた。私は慌てて列車から飛び降りようとした。
「危ないですよ!」
男の子が必死に私を止めた。分かっている。このまま飛び下りたら、本当に終わってしまう。でも引き返さないと、明日が終わってしまう。
「ほら、これで顔を拭いてください……」
白く曇った鏡に浮かび上がった私の顔は遠い空を見ていた。瞳には満点の星空が悲しく映っていた。
「ありがとう……」
私はハンカチを受け取り、顔を拭いた。
「この列車、どこまで行くんでしょうね?」
男の子は問うた。
「知らない」
私は答えてみた。
「そうですね。分かるはずないか……」
男の子は私の方にちらっと視線を向けた。
「でも、とりあえず明日に向かっているみたいですね……」
男の子の頬から血が滲んでいた。女の子の平手打ちは随分と強烈だったようだ。
「これ、使えば?」
私は男の子が渡してくれたハンカチを返そうとした。
「これを?あなたが使ったので拭けというんですか?」
男の子はぷすっと笑った。
「ああっ、ごめん……」
私は相当無神経だった。
「いや、いいんですよ。ああっ、久しぶりに心の底から笑った気がした」
男の子は私の手からハンカチをとった。
「あなたの……涙の味がする……」
男の子は一つずつ、私の雫を指にのせて楽しんでいるようだった。
「少しヒリヒリするけれど、おかげで治りました。ありがとうございます」
そう言って、男の子は列車の外に出ようとした。
「ちょっと!」
私は男の子の手を無理やり引っ張った。
「これでもういいんです。婚約は1回までと決まっているのですから……」
「誰がそんなこと決めたのさ!」
「私は騎士見習いですから……」
「死ぬことはないでしょう!」
「死んだも同然なんです……」
男の子は私の元を本気で離れようとした。
ならば
決まっている
次の列車がやってくるまで、何十年、何百年かかるのか、私には分からない。一度レールを外れてしまえば、一生闇夜の中を彷徨うのかもしれない。それでも私は生き続ける。
「本当に、君はバカな人だ」
だって、バカになる覚悟が出来ちゃったから。
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