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その9
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「お姉さま、私がどうしてこんなことをしたか分かりますよね。お姉さまは昔からそういう感じでしたから、私は本当に優しく育てられたんです。お姉さまはいつも怒られていましたよね。私が何か悪いことをしても、全部お姉さまのせいになってしまうんです!」
「へええ、そうなんだ……」
ハルトマン王子は感心しているようだった。別にこんなことで感心されても困るとは思ったんだけれども。
「でもそれはとっくに昔の話なんです。お姉さまは結局私のことを責めたりしませんでしたよね。ですから私は、お姉様のことを優しいお姉さまとして慕っておりましたのよ。それが、いきなりどうしたと言うんですか?」
どうしたって……そんなの知らない。わたしは何も知らないんだ。
「お姉さまはその時の話を蒸し返してきて、私のことを責めようとしていらっしゃるのよ。そして、私のことをいじめようとしているのよ。本当にひどいと思わない。そんなことを、もうずいぶん昔の話じゃないですか?」
「イングリット、ローズが言ったことは本当の話なのかい?」
「いじめ……何の話なのか、私にはさっぱり解りませんわ」
私はこのように答えた。すると、ローズは、
「ここまできてもなお、しらばっくれるおつもりですか?」
と言った。
だから、私は最初から何も知らないと言っているのに……。本当は知っているけれど。ぶっちゃけくだらない話なんだ。でもそれが、婚約破棄の原因になってしまうと言うんだから、恐ろしい話だと思う。
「へええ、そうなんだ……」
ハルトマン王子は感心しているようだった。別にこんなことで感心されても困るとは思ったんだけれども。
「でもそれはとっくに昔の話なんです。お姉さまは結局私のことを責めたりしませんでしたよね。ですから私は、お姉様のことを優しいお姉さまとして慕っておりましたのよ。それが、いきなりどうしたと言うんですか?」
どうしたって……そんなの知らない。わたしは何も知らないんだ。
「お姉さまはその時の話を蒸し返してきて、私のことを責めようとしていらっしゃるのよ。そして、私のことをいじめようとしているのよ。本当にひどいと思わない。そんなことを、もうずいぶん昔の話じゃないですか?」
「イングリット、ローズが言ったことは本当の話なのかい?」
「いじめ……何の話なのか、私にはさっぱり解りませんわ」
私はこのように答えた。すると、ローズは、
「ここまできてもなお、しらばっくれるおつもりですか?」
と言った。
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