婚約者は妹の御下がりでした？～妹に婚約破棄された田舎貴族の奇跡～

その30

「ようこそ、いらっしゃっいました！！！」

出迎えたのは、どうも顔なじみのある役人でした。ひょっとしたら、私が王子様と婚約する時に立ち会った役人かもしれないと思いました。

「あれっ……ひょっとして、マリア様じゃないですか？？？」

「あらっ、やっぱり私のこと、知ってました？？？」

「ええ、もちろんですとも！！！ああ、お懐かしい！！！」

本当にそう思っていたのでしょうか。私が婚約破棄された時、私に同情する人間なんていませんでした。まあ、確かに懐かしい人間には変わりないでしょうけども。

「それより……私たちを呼び出した理由を教えてもらえますかしら？？？」

「ええ、その件につきましては……皇帝陛下よりお言葉を賜りたく…………」

役人の言う通り、皇帝陛下が現れました。

「ようこそ、いらっしゃったな。お二人さん……」

役人の言う通り、私のよく知っている皇帝陛下が、目の前に現れました。

「ああ、これはこれは……ご無沙汰しておりまして……」

「ああ、堅苦しい挨拶はいいから、早速本題に入ろう。実は……ロンメル殿に頼みたいことがあるんだ……」

「私……でございますか？？？」

ロンメル伯爵は恐縮しすぎて、皇帝陛下の顔すら、まともに見ることができませんでした。

「是非とも、君の力を貸してもらいたいのだよ……」

こう言われてしまって、余計にロンメル伯爵は困惑する一方でした。