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その8

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「君は確か……王子と婚約したのではなかったのかね?」

「ええっ、その通りです」

「では、どうして今日修道院へ行くんだ?礼拝の日でもないのに?」

「それは……色々理由がありまして……」

コークス先生は昔から勘が鋭かった。

「ひょっとして……そうか、つまらないことを訊いたようだな……」

「恐らく、先生のご想像の通りでございます」

「そうか……そうなのか?」

「はい」

コークス先生は今日出会ったことを詫びた。

「私に何かできることがあれば、いつでも来なさい。最も……私のような老い耄れに出来ることなんてないと思うがね……」

「お気持ちだけでもありがたいです。私のことを気遣っていただけるのは、侍女とコークス先生だけですから」

「そうか。それではまた会おう」

コークス先生は去っていった。
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