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本編
41.5 呪いの事を相談しました
しおりを挟む「それではうちの子も待っているだろうし帰るとするかの」
エルムについての話し合いを始めたカリーン先生と父上を見てそう呟き、ウェルテクスは部屋から出て行く。
私はそれを追いかけ、ある事について聞いてみる。
「あっ、待ってくださいウェルテクスさん!一つ聞きたいことあるんです!」
「なんじゃ、どうしたんじゃ?」
私がウェルテクスさんに向かって声を上げると、立ち止まり振り返って待ってくれる。
「精霊の中でも長く生きていて高位だって言っていたウェルテクスさんなら知っているかもと思って・・・。私実は呪われているんです。解呪スキルも覚えたんですけどそれでも解けなくて・・・」
「呪い?見た感じ呪われとるようには見えんのじゃが・・・むむむ・・・うーん・・・」
ウェルテクスさんは唸りながら顔をしかめながら注意深く、私の上から下までじっくりと見る。
「あのう・・・鑑定では、『ステータスにマイナス効果、成長阻害、回復力低下を付与する状態。《現ステータスでは解呪不可》』と出るんです。でもステータスを上げても解けないし・・・」
「全身・・・」
「えっ?」
「よく見らんと気づかんわけじゃ。その呪いとやら、全身に行き渡り体と強く結びついておるわ。これは解呪のすきるより別の方法を探した方が良いかもしれんのう」
全身・・・?体と強く結びついている・・・?
それに解呪じゃない方法って、じゃあ解呪は使えないの!?
「無理に解呪を使えばまず体の内部の損傷は免れんじゃろうな。なんと表現すれば良いじゃろうか、細い糸のようなものが身体中にあって血管や内臓に薄くじゃがぐるぐる至る所に巻かれている、そんな感じじゃろうかのう。その呪いについて解呪できるくらいすきるが成長しても、それを使った途端呪いが一箇所へと収束し、それに巻き込まれて体はぐちゃぐちゃのぐちゃじゃな!わはは、みんちじゃ!」
「わははみんちじゃ!じゃないですよ!私解呪できないかなーって解呪のスキル試してたんですよ!?でも《現ステータスでは解呪不可》ってあるし、ステータスを上げれば大丈夫なんじゃないんですか!?」
なんか今まで呪いに負けないように頑張ってきたのにそれが無駄だったような、そんな気分なんだけど。
なんだか泣きそう。
「それは、無理矢理解呪してみんちになったとしても耐えうる体になれば解呪できるということじゃろう。しかし、体を鍛えておいたのは正解だと言えるぞ。体を鍛えていたが故に呪いに対抗でき、今こうして歩いたり走ったり動き回れているようじゃが、何もしていなかったならどんどん侵食されていき、大人になる前に死んどるぞ」
ミンチになっても生きるなんてそれはもう人間をやめているような・・・
そうか、もしかしたらゲームの王女は鍛えてなかったが故呪いに負け、16歳で不審死もといミンチ・・・不審死ってミンチ状態の事だったの!?
いやまあそんな状態で死んでたら父上も母上も悲しみすぎて兄貴が一時的に実権握っちゃう事も出来るでしょうねえ!
じゃあ今後もミンチにならないように鍛え続けなきゃいけないって事なの・・・。
いや待てよさっきウェルテクスさんは解呪のスキルとは別の方法を探せと言っていたよな。
「解呪のスキルを使わなくて呪いを解く方法とかあったりするんですか!もしかしてウェルテクスさんが使えたりだとか!?」
「わしは使えんがあるにはあるぞ」
私は期待に胸を踊らせ、目を輝かせながらウェルテクスさんを見る。
「呪いを掛けた者に解いてくれと頼んで解いてもらうか・・・まあしかしこんな強力なやつなら、掛けることはできても解くのは難しいじゃろうし、やっぱり殺すしかないかのう」
「殺す・・・」
相手が殺しに来てるならば殺す覚悟で挑まなければならないとは思っていた。
しかし実際にそうしなければいけないと言われても、私には・・・
「幼子にはまだこの様な話は早かったかのう。なあに、まだ時間はある。このままなら20まではとりあえず大丈夫じゃろうて。現在では殺すしか手段がないという事だ。こちらでも少し調べてみるからそんな泣きそうな顔をするでない!わしがいじめたみたいにみられるじゃろ!」
ウェルテクスさんは私の頭をぽんぽんと叩き励ます。
「私も・・・私も何か別の方法がないか探してみようと思います。ありがとうございましたウェルテクスさん」
「あーっ、居ました!お礼の品受け取らずに出ていかれたので陛下からこれを預かって・・・何トルーデ様を泣かせてるんですか!!!」
カリーン先生が猛スピードで走・・・いや瞬間移動かコレ。
向こうで手を振っていたはずのカリーン先生がいつのまにか目の前にいた。
「誤解じゃ~!助けてくれトルーデ~!」
「そうですカリーン先生!呪いの事を相談してたんです」
「なんだそうだったのですか、失礼いたしました。ウェルテクス様、こちら先程ご所望されたお品でございます」
「お、おう、ありがとうな。それでは今度こそ帰らせてもらうとするかの。トルーデ、またのう」
「またお会いしましょう、ウェルテクスさん!さようなら!」
そういって私達二人はウェルテクスさんを見送った。
見送りが終わるとカリーン先生から、先程何故泣きそうになっていたのか説明を求められ、先程ウェルテクスさんと話した内容について共有する。
「なるほど・・・そうですねえ、もしトルーデ様が殺しをしたくないなら、ご命令さえしてくれれば私が代わりにやりますし。まあそれもトルーデ様は嫌なんでしょうから、別の方法をゆっくり・・・いやゆっくりではダメですね。タイムリミットまでにはみつけていきましょう!」
「協力してくれる・・・?」
「もちろんですとも!例えこの身が滅びようとも貴女様のために」
カリーンはそう言ってかしづくと私の手を取りそっとキスを落とす。
オッワァ!これ王子様とか貴公子とかがするやつ!急にこんなことされるとは思わなかったんだけど!
は、恥ずかしくて顔赤くなっちゃいそう!
「いやー、一度やってみたかったんですよねえ。あれっ、顔赤いですよ?もしかして照れちゃいました~?ウブですねえ」
「うっ、うるさいです!急にされたからびっくりしただけです!」
びっくりしたのは本当だから嘘じゃないはず。
カリーン先生は面白そうに私をしばらく見た後立ち上がり、今度は普通に話し始める。
「そういえばトルーデ様、お父様である陛下には呪いの事は話されないのですか?」
「今回の事であれだけ過保護なこと言われたんだもん、呪いの事話したらそれこそ城に閉じ込められて解呪出来そうな人呼んだり回復魔法施されたりして外に出たりすることなんてできなくなっちゃいますよ」
「あぁー、それはなんかわかるような気がしますね。言いたくないのならばそれで良いですし、名前は伏せてそれとなーく聞いてみるのもアリでしょうしね。とりあえず今回の件で疲れたでしょう。近くにトルーデ様のお披露目会もありますし、今日はゆっくり休みましょう」
「そうデスよご主人、解析した所疲労している様子。早急に休息をするべきでありマス」
「ひゃっ!」
背後から突如現れたエルムに驚き跳ね上がる。心臓止まるかと思った。
「はーい、運んでいっちゃいましょ~」
「了解」
私は米俵のようにエルムに抱えられ部屋へと連行されるのであった。
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