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本編
49 視察へ行きましょう①
しおりを挟むなんだか凄くふわふわで、まるで雲の中にいるようなそんな感覚が・・・
「ふわぁ・・・あれ、ここはどこだべ?」
確か試験を受けに行き、思いもよらない展開でお貴族様と仲良くなってしまい、それだけでも畏れ多いというのに実はその子はこの国のお姫様で。
その事実を知って驚き過ぎた&日頃の疲れが祟りその場に倒れてしまったのは覚えている。
しかし周囲を見回すと自分が倒れた場所などではなく、どう見ても室内の、それも綺麗でなんだか趣のある部屋のように見えた。
先程まで寝ていた場所もそうだ。
今まで経験したことのないやわらかなベッドの上にふわふわの布団に包まれ自分は寝ていたのだ。
「これは夢だべ・・・?それともオラあのまま死んじまってもしかして天国・・・?姫様に失礼な事してしまったから護衛の人に無礼だって殺されちまったべか!?」
「げほっ、ごほっ、ごほごほっ!」
「そ、それだと私が問答無用で、無礼者めーッ!てSATSUGAIした奴になるじゃないですか!私見た目は人畜無害な超絶美少女だと思うんですけど!?」
「自己の評価が滅茶苦茶高い。いや美少女ですけども。」
声がした方を見ると、試験会場で姫様を守るよういた赤い少女に、姫様本人が扉の前に立っているようだった。
姫様に関しては何故か涙目で苦しそうに咳き込んでいた。
そういえばこの国の姫様は病弱という噂があった気がする。そのせいだろうか。
あれ、でも自分は死んだのでは?もしかして死ぬ前に夢を見せてあげようという神様の粋な計らいだろうか。
「死ぬ前にこんなオラに話しかけてくれた姫様の夢が見れるなんて、オラは幸せだっただ・・・」
「ブフォッ!!!いや、ごめん、ちょっと待って。私の事幻覚か何かだと思ってるの?ほらちゃんと触れるから!」
そう言って手をぎゅっと握られる。ちっちゃくてとってもやわらかい。
「病み上がりにごめんなさい。無理させるようで悪いのだけどお願いがあって・・・」
「病み上がり・・・?お願い・・・?」
「貴女私の事を明かしたら卒倒したのよ。もーとってもびっくりしたんだから!それで近寄ったら発熱していて、シエルは家が無いって言われてたからそのままにするわけにもいかず、家に連れてきちゃったの」
あぁ、だからこんなにやわらかいベッドで寝ていたのか。家?姫様の家・・・お城!?
「うわーっ!こんな身元も何もかも不明なオラをお城に連れてくるなんて、しかもて、手当もしてくださるなんて姫様は正気だべかー!」
あぁっ、こういう時はなんと言えば・・・こんな風に言ってしまったらそれこそ失礼に当たり打ち首モノ・・・
「正気を疑われた、どうしよカリーン先生」
「ええっ、トルーデ様は自分の行動を正気の沙汰だと思っていたんですかあ!?」
「なんかそれをカリーン先生に言われるととんでもなくムカつくなあ」
しかし二人は特に怒った様子もなく話しているようだった。
「あっ、それでね、私達シエルの住んでいた街へ視察へ行くことになったの。シエルも一緒に行けないかなあと思ってそれでここへ来たの。私達より詳しいでしょうし道案内を頼みたいのだけれど・・・」
「お、オラなんかで良ければなんなりとお申し付けくだせえ!それに姫様には筆記試験での事もありますですし、あ、有り余る恩がありますだ!人身御供でもなんでもやりますだ!!!」
「ん?今なんでもって」
「ちょっとカリーン先生・・・うーん、なんでもするというなら、早速今から行くから用意してくれる?それと私の名前は姫様じゃなくてトルーデって呼んでって言ったじゃない。お忍びなんだからバレてしまうし、トルーデって呼ぶの!絶対よ!じゃあ後はヒルデ、お願いね。」
姫様がそう言うと、部屋へメイドが入ってくる。メイドに何を頼むつもりなのだろうか。不思議に思い、見つめているとそのメイドは口を開く。
「トルーデ殿下、本当にこの子を好きにして良いのですね」
「ええ、存分にやりなさい」
「かしこまりました。私の全身全霊をもってお相手させていただきます」
そう言ってそのメイドは目を輝かせながらこちらを見てジリジリと距離を詰めてくる。
なんだか逃がさないとでも言っているようなそんな様子である。正直とても怖い。
「じゃ、じゃあ私達は他の場所で待ってるね。頑張って・・・」
そう言うと姫様たちはそそくさと部屋を出て行ってしまった。
「コレは・・・磨けば光ると私の勘がそう言っています・・・!まさかこんな手の施しようがある子を連れてきてくださるなんて。久しぶりに腕がなりますねえ!」
♢♢♢♢♢
「シエル・・・南無・・・」
私はシエルの事を思い無事を願う。ああなったヒルデはもう止められない。
最近、『トルーデ様は元が良すぎますしもうなんというか、あまりいじり甲斐が最近無いんですよね。』という喜んで良いのか悪いのかそんな事を言われたりしていたから、久しぶりの手応えのある獲物が嬉しいのだろう。
息を荒げる様子には正直恐怖を感じた。
でもシエルには驚いたなあ。
部屋に入るなり、急にここはもしかして天国だとか護衛の人に殺されたとか一人で言っているのを見せられたもんだからついむせてしまった。
私は江戸時代かなんかの大名か。
その後も何故か私の事を幻覚かなんかだと思っていたようだし。
そのせいで王女なのに優雅さのかけらもなく吹き出してしまった。
「お、お待たせしましたですだ・・・」
「まさに原石といった感じでした。私的に可愛くできたと思うのですが、如何でしょうか?」
「し、シエルなの!?び、美少女!」
「トルーデ様はなんなんですか!美少女を惹きつけるフェロモンでも出してるんですか!?美少女ホイホイですか!?私含めて」
「カリーン先生は原作からのホイホイでしょ」
なんか今日やけに美少女アピールしてくるな。無視無視。
しかし可愛いなとは思ったけど、ここまでとは。
ボサボサで伸びきっていた長い間手入れされていなかったであろう髪は、ひどく傷んでいた毛先は整えられているようだった。
長い髪は編み込まれ後ろで一纏めにされているようだ。
前髪もバッサリいかれているようで見えにくかった綺麗な空色の瞳が惜しげなく輝いていた。
服装は真っ白なワンピースを着せられたようで、髪型と相俟って清楚な印象を持たせる。
「予想以上だったよ・・・ヒルデすごいさすがプロ。それじゃ、準備もできた事だし行きましょうか、カリーン先生、シエル!」
「「はい」」
準備を整えた私達は、シエルの住んでいた街ヘと向かう事にした。
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